『死霊館 最後の儀式』はジワジワ迫る、正攻法の怖さで勝負したシリーズ最新作。

『死霊館 最後の儀式』
10月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、丸の内ピカデリー、109シネマズプレミアム新宿、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
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公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/shiryoukan-gishiki/

 ホラーの真価は見る者をいかに怖がらせるかにかかっている。

『悪魔のいけにえ』のように勢いで押しまくるタイプから、『ローズマリーの赤ちゃん』的にじんわりと演出力で戦慄させるものまで、さまざま生み出されてきたが、最もインパクトがあったのが、「実話をもとにしている」作品である。

 こんな怖いことが実際にあったのかという興味が作品を強力に牽引する。悍ましさ、禍々しさが実話というだけで倍加されるのだ。近年、この系統で最も成功した作品といえば、『死霊館』シリーズということになるだろう。

『ソウ』シリーズ、『インシディアス』シリーズなど数多くのホラーを手掛けたジェームズ・ワンが、実在の超常現象研究家エドとロレインのウォーレン夫妻の体験を、2012年に『死霊館』で映像化。その恐怖演出の巧みさで、多くのファンから熱狂的な支持を受けた。

 この成功に気をよくしてシリーズ化が決定。『アナベル 死霊館の人形』(2014)、『死霊館 エンフィールド事件』(2016)、『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)、『死霊館のシスター』(2018)、『アナベル 死霊博物館』(2019)、『死霊館 悪魔のせいなら、無罪』(2021)、『死霊館のシスター 呪いの秘密』(2023)まで、スピンオフも含めて数多くのオカルト世界が画面を賑わした(2019年の『ラ・ヨローナ〜泣く女〜』をシリーズに加えるむきもある)。シリーズは全世界興行収入3000億円を超えるヒットとなった。

 本作は題名のごとくシリーズの最終章との呼び込み。これまで戦慄の世界を提供してきた夫妻の因縁の事件が描かれる。監督は『ラ・ヨローナ~泣く女~』から『死霊館 悪魔のせいなら、無罪』、『死霊館のシスター 呪いの秘密』)まで連続して手掛けてきたマイケル・チェペス。シリーズのツボを知り尽くした彼が存分に腕を揮い、有終の美を飾る。

 出演は長年、ウォーレン夫妻を演じてきたベラ・ファミーガとパトリック・ウィルソン。ふたりの演技がさらにサスペンスを盛り上げる。

 かつてウォーレン夫妻が若かったころ、最大の敵に出会った。

 鏡に込められた邪悪な存在と戦っていた時、臨月間近のロレインが突然に産気づき、やむなく中断して病院に向かうことになった。

 呪いの鏡は行方不明となるが、1986年にペンシルバニアのある家庭に買われたことで姿を現した。そこから家族を恐怖のどん底に突き落とす怪奇現象を次々と巻き起こす。

 その現象は、ウォーレン夫妻の知るところとなり、夫妻は現象解明に向かうが、邪悪な存在は待ち受けていた。

 戦いを中断する原因となった夫妻の子供、美しく成長したジュディに狙いを絞り込んだ。夫妻の想像を絶する過酷な戦いが開始された――。

 じわじわと恐怖感を高めながら、クライマックスは一気呵成、壮絶無比な戦いが繰り広げられる。正攻法、ホラーの王道を行くストーリーテリングだ。画面に漲る禍々しさ、俳優たちの抑えた演技も申し分ない。エンディングロールに本物のウォーレン夫妻の映像が流れるとまさに実話感が強くなる。主人公が生きていることで、悲劇的要素が緩和されるのもシリーズが存続した強さであるのかな。

 ベラ・ファミーガもパトリック・ウィルソンも夫妻になり切っている感じで、さりげなくリアリティを漂わせて、まことに見応えがある。

 しかもクライマックスの戦いは息をのむ激しさ。画面にくぎ付けとなる。本作も公開されるや全米で8300万ドル、全世界で1億8700万ドルの興行収入を挙げる大ヒット・スタートとなった。本当にこれが最後なんて勿体ないという声が聞こえてきそうだ。

 安定した仕上がりのホラー快作、このジャンルがお好きな人にお勧めである。