『射鵰英雄伝』(しゃちょうえいゆうでん)は才人ツイ・ハークの技量際立つアクション歴史絵巻!

『射鵰英雄伝』
2月6日(金)より、TOHO シネマズ日比谷、シネマート新宿、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか、全国ロードショー!
配給:ツイン
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公式サイト:https://shachoeiyuden.com/


 膨大な映画人口を誇る中国は、映画市場として群を抜いた存在だが、勧善懲悪、愛国美化作品が幅を利かしているのがいささか鼻につく。とはいえ、巨額の製作費を費やした大作は魅力的なのは事実。秀でた監督が生み出すエンターテインメントは凄まじく魅力的である。本作はその好例と言える。

 本作は、香港を代表する武侠小説の作家、金庸が1957年から1959年にかけて、香港の『香港商報』に連載した小説の映画化。なにより脚本と監督、製作を担当しているのがツイ・ハークであることが目を引く。

 ツイ・ハークは1980年代以降、香港映画の隆盛の一翼を担った映画人であり、「香港のスピルバーグ」なる呼ばれ方もした。『男たちの挽歌』シリーズをプロデュースしたことをはじめ、『北京オペラブルース』、『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズなどを送り出し、プロデュース能力の高さ、演出力を広く知らしめた。また、CG 、アニメーションを開拓し、香港アクションにおけるワイヤー・ワークの進歩にも貢献した。全盛期の香港エンターテインメントを進化させた存在であることは間違いない。

 金庸作品に関しては『スウォーズマン/剣士列伝』を手がけて大ヒットさせたものの、あまりに原作から遊離したため、原作者の不興を買い、以後、縁がなかった。金庸の死もあって、ツイ・ハークが再度、挑戦する機会を得たのはなんとも喜ばしい限りだ。

 名作武侠小説の誉れ高い原作は、12世紀前半の中国本土を舞台にした壮大な歴史絵巻。金の侵攻により北宋は滅び、南宋が建国されたものの従属を強いられていた時代を背景とする。蒙古ではチンギス・ハーンが勢力を拡大し、金との争いが激化していた頃。蒙古で育てられた宋人・郭靖と、黄薬師の娘・黄蓉との一途な愛が波乱万丈のストーリーのなかに綴られる。アクションシーンのダイナミズムが次々と用意され、クライマックスの合戦シーンの壮大なるスペクタクルに結びついていく。ツイ・ハークの才気が画面に横溢し、いささかも退屈することがない。

 ツイ・ハークの演出だけではない。出演者の豪華さも見逃せない。大ヒットしたドラマ「陳情令」で人気が爆発したシャオ・ジャンが郭靖を演じ、「春うらら金科玉条」のジュアン・ダーフェイが黄蓉を演じる。

 このフレッシュなふたりを支えるべく芸達者が妍を競う。『シャドウズ・エッジ』で強烈なインパクトを残したレオン・カーフェイがここでも圧倒的な存在感を残す。さらにモデル出身のチャン・ウェンシン、『ウルガ』で知られるモンゴルの名優バヤルトゥ、同じく内蒙古出身のアールーナー、香港出身のベテラン、エイダ・チョイなどが映画の魅力をいっそう高めている。

 12世紀後半、蒙古で育った宋人の青年・郭靖は美しく聡明な黄蓉と出会い、桃花島での修行を経て成長していく。

 郭靖と黄蓉はいつしか愛しあうようになるが、陰謀と戦乱渦巻く時代が純粋なふたりを引き裂く。

 郭靖は国と民族、そして黄蓉のため、信念の拳で宿命に立ち向かうが、多くの試練、困難に立ち向かっていく――。

 導入部からストーリーはめまぐるしく展開していく。あくまでも愛を貫こうとする漢(おとこ)の矜持をストレートに打ち出しながら、アクション、スタントを縦横に盛り込む。しかも純愛をくっきり浮き彫りにしてみせるあたり、ツイ・ハークの巧みさは半端ではない。147分の上映時間は決して短くはないが、滑り出しとともに映像に惹きこまれ、時間の経つのも忘れてしまう。

 しかもチンギス・ハーンを大武将として描きだしているのも新鮮。香港人としての意地も蒙古の描き方に反映されているか。ツイ・ハークの演出力はさらに枯淡の境地に入った印象だ。

 もちろん、アクションの迫力、合戦寸前の一触即発、クライマックスの対決までどこまでも飽きさせない。香港映画で培ったセンスと演出をここで再認識させられた次第。

 かつての香港映画の面白さを満喫させてくれる作品。一見に値する大作だ。