『MERCY/マーシー AI裁判』はAIの未来を予想するかのようなアクション・スリラー!

『MERCY/マーシー AI裁判』
2026年1月23日(金)より、TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ日比谷、新宿バルト9、新宿ピカデリーほか日米同時公開!
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:https://ai-saiban.jp h

 AIの普及は恐ろしいスピードで浸透してきている。ネットをみると、文章はもちろん、映像にもAIの手が加わり、もはや本物、偽物を論じることさえ、無意味に思える。AIは間違いがないというセオリーが幅を利かせ始めている。

 本作は実際の社会の動きに呼応して、アイデアが磨かれた。エストニアでは民事裁判の意思決定を行なうAI判事が作られているというニュースが基になっている。アイルランド・ダブリン出身で『バトル・オブ・マジック 魔術師マーリンとアーサー王』7の脚本・監督で知られるマルコ・ヴァン・ベルは、このニュースを進化させ、間違いのないAIによる死刑裁判という発想を考えた。

 事実を積み重ね、間違いなどないはずのAIを相手にした丁々発止の裁判が展開する。本作のアイデアはそこから始まり、超ド級のクライマックスに至る。まさに有無を言わさぬ展開で、見る者を翻弄してみせる。

 監督はカザフスタン出身のティムール・ベクマンベトフ。『ナイト・                                        ウォッチ』で世界的な評価を受け、『ウォンテッド』でハリウッド・デビューを果たす。『リンカーン/秘密の書』や『ベン・ハー』などを監督する一方、『search/サーチ』の製作を引き受けるなど、新たな手法に関しても意欲的に挑む姿勢をみせるてきた。AIをテーマにした本作はベクマンベトフにとっては魅力的な題材であったことは疑いがない。

 さらにキャスティングが心憎い。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズや『ジュラシック・ワールド』シリーズでタフなヒーローを演じてブレイクしたクリス・プラットがAI裁判の被告となる警官レイヴンに扮し、自らの罪状を審議されることになる。

 彼に対するAT裁判官に扮するのは『グレイテスト・ショーマン』や『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』、『DUNE/デューン 砂の惑星』などで注目されるレベッカ・ファーガソン。聡明なクールビューティを前面に押し出しながら、理詰めで審議する裁判官を演じ切ってみせる。

 凶悪犯罪の増加とともに治安維持のために、間違いのないAIが司法を担うことになった近未来。

 取り締まる側の警官、レイヴンが目を覚ますと拘束され、裁判にかけられようとしていた。

 容疑は妻殺し。泥酔していた彼には断片的な記憶しかなく、すべての証拠は彼が犯人だと指し示していた。

 裁判の時間は90分。その間に無実を証明しなければ処刑が待ち受けている。かつては罪人を裁判に送り込む立場だった彼だが、状況は極めて不利だった。

 レイヴンは事態を呑み込むと、懸命なる自己弁護を始めた。だが時刻は刻々と刻み続ける――。

 前半はAI裁判官とレイヴンとのスリリングな応酬。自らの記憶があいまいな被告に、AIはあくまでも事実を重ねて、罪状に迫ろうとする。レイヴンが敏腕さを発揮して、記憶を埋めるべく、証拠の開示を迫る。最初は容疑が濃厚な彼が、次第に形勢を立て直すあたりはグイグイと惹きこまれる。

 もちろん、監督がアクション大好きなベクマンベトフなのだから、濃密な法廷劇で終わるはずがない。法廷ドラマから一転、あっと驚く展開から凄まじいスペクタクルが待ちうけている。こんなストーリーになるなんておよそ想像もつかない。「リアルタイムリミット型アクション・スリラー」と銘打った理由も、見終わった後に納得できる。新しい要素を存分に取り入れながら、やっぱり最後はアクションで決める。異色のカザフスタン出身監督の個性が横溢している。

 本作では、椅子に座っているシーンばかりのクリス・プラットだが、過去の記憶シーンなどで警官らしさを垣間見せる。AI裁判官役のレベッカ・ファーガソンはどこまでも聡明な表情で勝負。この人はもっと注目されていい。

 スピーディに展開し、緊迫感に溢れた法廷サスペンス。アクションも超ド級で十分に満足できる仕上がりである。