『ランニング・マン』はエドガー・ライトの弾けぶりが嬉しいアクション・アドヴェンチャー!

『ランニング・マン』
2026年1月30日(金)より、TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ日比谷、109シネマズ プレミアム新宿、新宿バルト9、新宿ピカデリーほか全国公開
配給:東和ピクチャーズ
©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
公式サイト:https://the-runningman-movie.jp/

 スティーヴン・キングほど作品が映像化されている存在は他に例がない。稀代のベストセラー作家であり、卓抜した文章力とストーリーによって、抗しがたく映像化に誘う。唯一無二の作家。映画化へのオファーは現在でも絶えることがない。

 本作はキングがリチャード・バックマン名義で1982年に発表したものが原作となる。かつて1987年に、『バトルランナー』という邦題で映画化されたことがある。アーノルド・シュワルツェネッガー主演のアクションながら、当時はそれほど評判にはならなかった記憶がある。

 その原作を現代の感覚で錬金し、スケールの大きなアクション大作に仕上げたのが、エドガー・ライト。『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)や『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(2007)で注目を集め、『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010)、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(2013)で個性を広く知らしめた。そして2017年の『ベイビー・ドライバー』で興行的な成功を収めるとともに、アカデミー賞にもノミネートを果たす。さらに野心的なスリラー『ラストナイト・イン・ソーホー』を発表する傍ら、音楽ドキュメンタリー『スパークス・ブラザーズ』を2021年に発表するなど、意欲的な活動を展開。今、最も目の離せない映画監督といわれている。

 そんなライトは現代にフィットした脚本に仕上げるために、『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』のマイケル・バコールを起用。ストーリーに分断化した現代世界を反映する要素を盛り込んでみせた。

 しかも出演者がいい。『トップガン マーヴェリック』のハングマン役で一躍人気者となったグレン・パウエル。今が旬、数多くの大作の依頼が押し寄せる彼に、思いっきり弾けたヒーローを演じさせるという趣向だ。エドガー・ライトのブラックなユーモアを浴びながら、アクションとスタントに全力で挑んでみせる。惚れ惚れするような格好良さを映像に焼き付けてくれる。

 共演陣も実力派揃いだ。『ファーゴ』(1996)や『マグノリア』(1999)でおなじみのウィリアム・H・メイシーを筆頭に、『キャプテン・マーベル』(2019)のリー・ペイス、『コーダ あいのうた』(2021)のエミリア・ジョーンズ、『シンシン/SING SING』(2023)のコールマン‣ドミンゴ、そして『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(2018)や『ノーカントリー』(2007)などで強烈なインパクトを残したジョシュ・ブローリンまで個性に富んだ顔ぶれが選りすぐられた。彼らのユニークなキャラクターを楽しむのも。本作の魅力の一つとなっている

 現在から遠くない未来。世界は、一握りの富裕層と、それ以外の圧倒的多数の貧困層に分けられていた。

 人々は悲惨な生活を強いられ、僅かな娯楽は、ネットワーク企業が主催する、デスゲーム“リアリティショー。巨額の賞金を目当てに参加者が命を賭ける。その過激さに全世界が熱狂している。

 職を失いどん底の生活を送る男、ベン・リチャーズは娘の医療費のためにデスゲーム「ランニング・マン」に応募する。ルールは簡単、逃走範囲は無制限、”30日間逃げ切るだけ。

 賞金1000憶円を手に入れるために、「捕獲=即死亡」をかけ、ベンは逃げ切ることができるだろうか――。

 過激なルールをものともせずに、逃げ回る痛快さが最大の魅力。エドガー・ライトの疾走する語り口、ブラックな世界観のなかで、ヒーローが颯爽と暴れまわる。殆ど現在と変わらぬ世界で、神出鬼没の逃亡を繰り広げる主人公に拍手を送りたくなる。ライトの個性がいかんなく発揮されて、抜群の音楽センスを含めて文句なしの仕事ぶり。ユーモアのセンス、軽快でスタイリッシュな映像感覚まで、どっぷりと酔わせてくれる。『ベイビー・ドライバー』で会得した、現代的なエンターテインメント感性は本作でも健在である。

 ベン・リチャーズ役のグレン・パウエルは、これまでの作品では思ったほどには輝かなかったが、本作で爽やかで痛快なヒーローを快演してみせる。屈託がなくて厚かましさを持ち合わせるキャラクターがみごとにハマっている。

 痛快で楽しめる仕上がり。エドガー・ライトの映像と音楽のセンスに拍手を送りたい、お勧めの1本だ。