『おさるのベン』はストレートなつくりが潔い、実はリアルなホラー快作!

『おさるのベン』
2月20日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、新宿バルト9、渋谷HUMAXシネマ、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国ロードショー
配給:東和ピクチャーズ
©2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
常識サイト:https://osaru-ben-movie.jp/

 自らは安全な状況で思い切り怖がってみたい。ホラー映画がもてはやされる理由はここに尽きる。アイデア勝負、ノースターでも注目されるとあって、近年、その数は激増してきている。勢い、考え過ぎてちっとも怖くない作品や派手なだけの作品、絵柄のインパクトだけで勝負した作品ばかりが目立つようになった。

 本作はそうした拡大一方のホラー映画状況とは一線を画し、ストレートに恐怖に迫っている。脚本。監督を担ったのはヨハネス・ロバーツ。ケンブリッジ出身のイギリス人で、これまでも『ブラッド・フォレスト ~吸血のエンジェル~』や『ストレージ24』、『海底47m』シリーズなど、人食い鮫、ゾンビ、殺人鬼などを素材にホラー映画ひとすじの作品歴を誇ってきた。

 彼にとってホラー映画のなかで最も鮮烈に焼き付いている映画は子供時代に見た『クジョー』だったという。スティーヴン・キングの小説をルイス・ティーグが監督した1983年作品で狂犬病に罹った大型犬の恐怖を描いていた。

 人間社会の身近な存在が突如牙をむく恐怖。この設定に強く惹かれていたロバーツは『アザー・サイド 死者の扉』や『海底47メートル』などの脚本家アーネスト・リエラとアイデアを練り込み、愛すべきペットが豹変するリアルな恐怖を作品化した。このアイデアにゴーサインを出したのは『死霊館』シリーズや『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』など、ホラー映画の製作には定評のあるウォルター・ハマダ。『ワンダーウーマン』や『ジョーカー』などのDC作品も手掛けるプロデューサーだが、本作の可能性に大きな期待を寄せた。

 常夏の国ハワイ、豪華な大邸宅がたった一匹のペットのために、地獄の一夜を迎える。絵空事ではなく、起こりうる恐怖がグイグイと迫ってくる仕掛けだ。

 出演者はホラーにふさわしくフレッシュな女優陣で固められている。テレビシリーズ「BELIEVE/ビリーブ」のジョニー・セコイヤ、テレビシリーズ「「ザ・ビューティー 美の代償」のジェシカ・アレキサンダー、テレビシリーズ「ファウンデーション」のヴィクトリア・ワイアント、テレビシリーズ「Sherlock & Daughte」のジア・ハンター、そしてベンジャミン・チャン、チャーリー・マン、ティエンヌ・サイモンといった若手が脇を固め、『コーダ あいのうた』でアカデミー助演男優賞に輝いたトロイ・コッツァーが場を締める。

 ハワイの高級別荘地に大学生のルーシーは友人たちと帰省した。ひさびさに休日を満喫すべく帰ってみると、ペットのチンパンジー、ベンの元気がない。

 マングースと喧嘩になって以来、ベンは少しおかしくなったようだ。でも友と楽しみを満喫したいルーシーは何の疑問も持たずにプールに興じていた。

 突然、ベンが人間たちに襲い掛かった――。

 ストーリーはどこまでもシンプル。人間に次ぐ頭脳を持つペットが突然、狂い、人間に襲い掛かる。日本ではベンがマングースとの喧嘩で、狂犬病をうつされたことが明示されている。致死率100パーセントの病の恐ろしさを踏まえたうえで、じわじわとサスペンスを高めていく。

 ヨハネス・ロバーツの語り口はストレート、何も知らない娘たちが襲われ、必死で逃れ、ある者は毒牙にかかるプロセスをスピーディかつスリリングに映像化している。とにかく恐怖を描きたい、その潔い姿勢を評価したくなる。娘たちを守るべき父親が聴覚障碍者である設定が予断を許さないクライマックスに結びつく。これほどまっすぐなストーリーは近頃珍しい。

 ちょっと意表を突かれた邦題を含め、ちょいとニヤリとさせられる仕上がり。みても損はしない。