『ランド・オブ・バッド』は現代の戦闘を垣間見せてくれる、迫力満点の戦争アクション!

『ランド・オブ・バッド』
8月15日(金)より TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー、y、
配給:AMGエンタテインメント
© 2025 JTAC Productions LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:https://land-of-bad.jp

 兵器、武器は日進月歩で進化し、ウクライナをみても戦闘が大きく様変わりしていることが分かる。ドローンや無人戦闘機が駆使され、戦いは戦地の兵士だけではない、遠く離れたコントロールルームでも行われている。

 そうした近代戦の様相を映像化しているのが本作である。厳密にいうなら、国と国との戦争ではなく、アメリカ軍とイスラム過激派との戦いが描かれるのだが、使用される兵器、戦略がまさに最新の戦いそのものだ。

 監督はウィリアム・ユーバンク。2011年に発表したSFミステリー『地球、最後の男』が評価され、続くSFサスペンス『シグナル』でもスタイリッシュな映像で注目された。その彼が『シグナル』でも組んだデヴィッド・フリジェリオと再度、脚本をつくりあげたのが本作である。今回、ユーバンクは戦争アクションを手がけるにあたって、オーストラリア・クイーンズランドの原野、密林を駆使して、過激派の潜伏地であるフィリピン南西部ホロ島を再現してみせた。そこで繰り広げられる戦闘の数々は圧倒的に迫ってくる。

 現代の軍事作戦行動をリアルに活写しつつ、不測の事態に直面した兵士たちのサバイバルを生々しく再現したストーリー。アメリカ本土で公開されるやスマッシュヒットを記録したのも頷ける仕上がりだ。

 イスラム過激派の温床、スールー海。そこに浮かぶ緑豊かな島で、米軍特殊部隊デルタフォースによる極秘任務が開始される。

 目的は、誘拐された CIA エージェントの救出と回収。

 作戦にはJTAC(統合末端攻撃統制官)のキニーが航空支援の連絡役として参加していた。新兵のキニーには初の現地行動である。

 だが、彼らが目的地に着いた直後、思いもよらない事態に遭遇。壮絶な大銃撃戦が展開し、巻き込まれた部隊は壊滅寸前に陥ってしまう。

 孤立した新人兵キニーの唯一の希望は、アメリカから作戦を支援する無人戦闘機オペレーターだった――。

 ドローンや無人戦闘機の攻撃は知っていたが、アメリカ陸軍の精鋭特殊部隊デルタフォースの軍事行動にも従軍するなんて初めて知った。航空支援という名目で、デルタフォースの作戦を補強する。そのオペレーションは遠く離れたアメリカ本土で行われている事実に今更ながら驚かされる。

 平和なアメリカにいながら、現地の敵にミサイルを発射し、銃弾を雨のようにばらまく。それをすべてモニター上で行うのだから驚くばかり。画面から情報を得るというシュールな状況で戦闘が行われている。人間同士の生な戦いではなく、テクノロジーが介在することで非人道的な決断も下せるのではないかと考えさせられる。

 SFにこだわりがあるユーバンクは過激派の島を異世界のように映像化。無人機を操作するアメリカ本土と対比させる。環境が違い過ぎることが思わぬ事態を引き起こし、クライマックスに雪崩れ込む仕掛けだ。フィリピンの島のじりじりするような緊迫感、のんびりしたアメリカの日常。この違いが現代の戦争の状況を浮き彫りにしている。

 ユーバンクの畳みかける様な語り口のもと、出演者が個性を発揮している。主人公のキニ―に『ハンガー・ゲーム』シリーズのリアム・ヘムズワースを配し、実兄のルーク・ヘムズワースもデルタフォースの一員として顔を出す。さらにマイロ・ヴィンティミリア、リッキー・ウィットルも屈強なデルタフォース兵士に扮して作品を補強してみせる。

 だが、何よりも強力なのはオペレーターに扮したラッセル・クロウの存在感だ。あえて太った巨漢をさらし、とことん頼りになるベテランを体現している。人間的な弱さを垣間見せながら、あくまで冷静に作戦をオペレートする兵士を快演している。画面にいるだけで重みがある、名優である。

 戦争アクションの醍醐味を満喫させてくれる仕上がり。エンターテインメントだが、戦争の実態を知るには最適の作品だ。