『パルテノペ ナポリの宝石』はパオロ・ソレンティーノの美意識に彩られた女性の一代記。

『パルテノペ ナポリの宝石』
8月22日(金)より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー、シネ・リーブル池袋、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー
配給:ギャガ GAGA★
©2024 The Apartment Srl – Numero 10 Srl – Pathé Films – Piperfilm Srl@Glanni Fiorito
公式サイト:https://gaga.ne.jp/parthenope/

 イタリア映画界で圧倒的な美意識と個性をアピールし、国際的な注目を集めるパオロ・ソレンティーノの新作がいよいよ劇場公開される。

 第86回アカデミー外国語映画賞に輝いた2013年の『グレート・ビューティ 追憶のローマ』と、ヨーロッパ映画賞の作品・監督・男優賞を手中に収めた2015年の『グランドフィナーレ』、そして2019年には『LORO 欲望のイタリア』を公開されるたびに紹介してきたが、2021年にNetflixで故郷ナポリの自伝的作品『The Hand of God』を発表して以来、新作のニュースは聞こえてこなかった。

 待つこと久し、ようやく本作の登場となった。あらゆる“美”の瞬間を追い求めてきたとコメントするソレンティーノにとって、初めて女性を主人公に据えるという新境地を開拓した作品でもある。本人いわく「何よりも神聖なものを扱った映画」であり、「現代のヒーローは男性ではなく女性だと信じる」という思いから、本作を手がけたとコメントしている。故郷のナポリに対する深い愛、初めて女性を主人公に据えた作品として特筆に値する。

 なにより本作の製作にサンローラン プロダクションが加わっていることで、さらにソレンティーノの美意識が刺激されることになった。自ら脚本を書き、ナポリで生を受け、美しさ故に数奇な運命を辿る女性の軌跡をつくりあげた。

 ヒロインに抜擢されたのはセレステ・ダッラ・ポルタ。テレビシリーズに顔を出すことがあっても、初めてのスクリーン・デビューとなる。ソレンティーノはオーディションを重ね、ヒロインにふさわしいと得心して起用に踏み切った。輝くような若さの輝きと美しさを全身から放つ存在。この演技で、ヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で主演女優賞にノミネートされ、新人賞を受賞することになった。イタリア映画界の期待の星である。

 共演は、ヒロインの老後に『イタリア式離婚狂想曲』などで知られる名女優ステファニア・サンドレッリ、イギリス生まれの個性派俳優ゲイリー・オールドマン。さらにシルヴィオ・オーランド、ルイサ・ラニエリ。ぺッぺ・ランゼッタ、ルイサ・ラニエリなど、ソレンティーノ好みの個性派が脇を固めている。

 1950年、イタリアのナポリで生まれた赤ちゃんは、ギリシャ神話の人魚の名でナポリの街を意味する“パルテノペ”と名付けられた。

 パルテノペは、兄のライモンドと幼なじみのサンドリーノと楽しい子ども時代を過ごし、聡明な美しい女性に成長していった。

 自由と美を愛するパルテノペは人々の注目を集めていく。そんな彼女を前にライモンドの孤独は深まり、自ら死を選んでしまう。

 兄の死を契機にパルテノペの生活は大きく変わっていく。あくまでも自由を望む彼女は学問の道に進むことを選ぶ……。

 陽光きらめくナポリの風景に、どこまでも美しいパルテノペ。あまりにも美意識の高い映像に酔わされる。初めて女性を主人公にしたとはいえ、描きこまれているのは彼女に対する男性たち。彼女の若さと美に圧倒され、男たちはさまざまな対応を見せる。ある者はひれ伏し、ある者は懸命に節度を守ろうと努力する。登場する男たちはどこかユーモラスで真面目で、生きることに悲壮感を漂わせている。パルテノペはリトマス試験紙のような存在で男たちを吟味し、その資質を明らかにするのだ。

 本作はあまりにも美しすぎることから賛否があるという。それでもソレンティーノの世界は彼にしか生み出せない魅力がある。どこまでもゴージャスで見る者をただただ惹きこむ映像力。音楽と映像のコラボレーションも申し分ない。上映時間があっという間に過ぎる心地がする。

 こうした感情を抱いたのもセレステ・ダッラ・ポルタの輝きが大きく作用している。若さの輝きを全身から放っていて、目が離せないのだ。決して好みの貌というわけではないのに、強烈な吸引力が彼女にはある。ひさしぶりにスターの輝きを実感させる。

 ソレンティーノの美的世界がとことん満足できる仕上がり。ここまで美しければ不満のあろうはずがない。一見をお勧めしたい。