『リロ&スティッチ』はディズニーらしい、実写になったキュートな家族の絆ストーリー。

6月6日(金)より、TOHOシネマズ日比谷、丸の内ピカデリー、109シネマズプレミアム新宿、新宿バルト9ほか全国公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/lilo-stitch

 名作アニメーションを実写化する試みはもはや定番と化しつつある。アニメーションで成立していた世界を実写化することで、新たな可能性を導き出すつもりなのか。近年、CGなどの技術が目覚ましいなか、実写化はさらに可能となり、現実にはあり得ない世界もつくりあげることができるようになった。

 こうなると「実写化」ということば自体が疑問に思えてくるのだが、それでも企画は後を絶たない。

 本作は2002年に劇場公開された同名アニメーションの実写化である。この異生物キャラクターは人気が出てテレビシリーズにもなり、テーマパークの東京ディズニーランドにも登場している。なによりいたずら大好きなこのキャラクターの容貌がキュートなことも人気の要因。舞台が家族の絆を大事にするハワイというのも目新しく、ストレートにハワイ人を称える内容も好感を覚える。

 実写化にあたってアニメーション版の監督・原案・脚本・声の出演を引き受けていたクリス・サンダースの協力のもと(本作でもスティッチの声を演じている)、クリス・ケカニオカラニ・ブライトとマイク・ファン・ヴァースが脚本をブラッシュアップ。2021年に『マルセル 靴をはいた小さな貝』で実写とストップモーション・アニメーションを組み合わせて称賛されたディーン・フライシャー・キャンプが監督に抜擢された。

 最新のデジタル技術とパペットの匠の技術を駆使して、実写映像と融合させる。その滑らかさ、自然さはあたかもスティッチが生命を持っているかのよう。これだけ抜群のキャラクターが登場するのだから、人間の出演者はそれほど知名度は問題にならない。ヒロインのリロには2016年ハワイ生まれのマイア・ケアロハが抜擢され、姉のナニにはハワイ生まれで音楽活動も行なっているシドニー・アグドン。

 ふたりを囲んでザック・ガリフィアナキス、コートニー・B・ヴァンス、ビリー・マグヌッセン。ティア・カレル、ジェイソン・スコット・リーなど、個性派が脇を固めている。

 ジャンバ博士が遺伝子操作によって生みだした626号はモンスターとして銀河連邦で裁判にかけられるが、監視を抜け出し逃亡。追っ手を振り切り遠く離れた地球に落下する。

 ジャンバ博士と諜報員のプリ―クリーはスティッチの後を追い、地球に向かう。

 ハワイにたどり着いた626号は犬と間違えられて収容所に収容され、そこでリロに出会う。

 リロは両親を事故で失い、姉のナニとふたりで暮らしていた。社会福祉局はリロを施設に入れるように勧めていた。寂しいリロは626号を見るなり犬だと信じ、スティッチと名付ける。

 凶暴なスティッチとリロは気が合い、いっしょに悪戯をするうち、いつしか深い絆が芽生えていく。しかしジャンバとプリ―クリーもスティッチに迫っていた――。

 凶暴というより、愛嬌のある悪戯者というイメージのモンスターが寂しい少女と出会い、絆を育んでいく展開は、ハワイ語の「オハナ」(家族)を象徴して、まことに好感を持てる。面白おかしく悪戯を重ねるうちに情愛を育むストーリーにはいささかも無理がない。このキャラクターが長年にわたって愛される所以だろう。

 それにしてもキャラクターの造形のみごとさには感心させられる。表情、仕草、まるで実際に生きているようだ。この自然さがハッピーなストーリーにマッチしている。

 全米で大ヒットしたのも頷ける。この絆を謳いあげた精神こそディズニーの作品ならでは。あえて一見をお勧めする理由である。