
4月4日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
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公式サイト:here-movie.jp
ロバート・ゼメキスの名は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』三部作によって幅広く認知された。無名の人間のタイムトラベルならば歴史を改変しても許容されるとばかりに痛快に過去・現在・未来を縦横無尽。誰もが快哉を叫ぶ物語世界を構築して見せた。
ゼメキスは誰も思いつかないようなストーリー、設定に惹かれるようだ。『フォレスト・ガンプ/一期一会』では、知能指数は劣るが、足の速さと誠実さはピカイチという主人公が辿る現代史を映像化。『ポーラー・エクスプレス』でアニメーションに挑戦し、『ベオウルフ/呪われし勇者』では最新モーション・キャプチャーを活用したCGアニメーションを生み出すなど、いずれもユニークなストーリーと新技術が話題となった。
となれば、2022年の『ピノキオ』(配信のみ)に続いて本作に挑んだことも理解できる。
本作はリチャード・マグワイアの傑作グラフィック・ノベルの映画化。壮大な時間旅行をひとつの舞台で描こうという試みである。ひとつの場所を地球レベルで定点観測する趣向。ゼメキスがいかにも好みそうな題材ではないか。
映画化にあたってゼメキスは『フォレスト・ガンプ/一期一会』のエリック・ロスを脚本に迎え、自らも加わって脚本を書き上げた。
アメリカ大陸のある場所が設定される。恐竜がけたたましく跋扈し、氷河期を迎える。大地が落ち着くとオークの木が育ち、幾多の動物が誕生し、やがて人類が誕生する。
そして先住民族の男女が出会う。その地は植民地獲得の白人たちが戦う舞台になり、一段落すると家が建てられ、いくつもの家族が入居しては出ていくことになる。
世代を超えたいくつもの家族は、その地でさまざまな喜怒哀楽のドラマを構築していった――。
あくまで主人公はその土地。人間たちは土地に群がる彩に過ぎない。ゼメキスはこの姿勢を貫きながら、時代を交錯しながら映像化している。描かれる内容は決して難しくない。それぞれの世代の葛藤のドラマが紡がれるだけだ。
独立戦争以降、南北戦争、先住民族と白人との闘い以降はこの地は平和だった。基本的には20世紀の家族のドラマが軸となる。
1945年、第2次大戦で負傷した男アルとローズの夫婦が無理して住宅を購入し、長男リチャード、長女エリザベス、次男ジミーが誕生する。リチャードは高校生になると画家を目指したが、弁護士志望のマーガレットと恋仲になり、妊娠発覚。二人は結婚し、リチャードは画材を捨てて保険会社に就職。娘のヴァネッサが誕生する。それからこの家族にさまざまなエピソードが刻まれていった。
起きた戦争を刻みながら、あくまでも家族のドラマが描かれる。ゼメキスはあっさりした語り口でスケッチする。彼の興味は演じさせる俳優たちにあるからだ。アルを演じるのが『ビューティフル・マインド』の53歳、ポール・ベタニー。リチャードは1956年生まれの69歳のゼメキスの盟友、トム・ハンクスが演じ、マーガレットには59歳のロビン・ライトが挑んでいる。
それぞれがティーンエイジャーから老人までをデジタルメイクで演じるのだ。そのために何千枚に及ぶアーカイブ映像を駆使して世代ごとのメイクを生み出し、VFXで合成している。いかにもゼメキスらしいテクノロジー重視。ハンクス、ロビン・ライトぐらいになるとこれを楽しむ余裕があるわけか。
人間の歴史は変化に富んでいるようでも、情と葛藤の繰り返し。ゼメキスはそれを映像技術で知らしめてくれる。不思議な魅力の作品である。