
2月7日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、109シネマズプレミアム新宿ほか、新宿バルト9 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:東宝東和
©Universal Studios. All Rights Reserved.
公式サイト:https://wicked-movie.jp/
1939年に発表されたMGMの名作ミュージカル『オズの魔法使い』は、ジュディ・ガーランドの忘れえぬ名唱「虹の彼方に」とともに、今も映画ファンの心に焼き付いている。
もともとライマン・フランク・ボームの児童文学の映像化で、原作も「オズ」シリーズが作られ人気となっているが、本作の原作となった「ウィキッド」はグレゴリー・マグワイアがボームの「オズの魔法使い」に着想を得て1995年に発表した外伝的作品。ボームの世界を継ぎ、ふたりの魔女に焦点を当てた。この作品はじわじわと人気となり、ブロードウェイでミュージカル化されるに至った。「ウィキッド」は大人気を博し、ロングラン。日本でも舞台版は上演されたことがある。
この舞台版をもとに映画化の計画は早くからあったが、コロナ禍などの影響もあり、なかなか実現しなかった経緯があった。華麗なるセットをふく大作として構築されたことはミュージカル・ファンにとっては喜びに堪えない。
なにより原作世界を尊重して、二部作構成に仕上げたのは英断だった。魔法の国オズの幻を二度も楽しめることもあるが、原作を重んじての判断だろう
映画用に脚本を書いたのは『あなたに逢えるその日まで…』のウィニー・ホルツマンと『クルエラ』のデイナ・フォックス。舞台版を尊重しながら映像に映える要素を巧みに盛り込んでみせた。監督に抜擢されたのは『クレイジー・リッチ!』でアジア系富裕層の豪華な生活を活写し、続く『イン・ザ・ハイツ』ではニューヨーク・マンハッタンのヒスパニック系若者躍動する青春を描いたブロードウェイヒット作の映画化。その躍動感あふれる映像を絶賛されたジョン・M・チュウ。舞台版の熱烈なファンだったというチュウにとっては願ったり叶ったりの申し出だったという。
キャスティングも豪華絢爛だ。ブロードウェイ・ミュージカル『カラーパープル』でブレイクし、多くの奴隷の解放に尽力したアフリカ系アメリカ人活動家ハリエット・タブマンを演じてアカデミー賞ノミネートされたシンシア・エリヴォがヒロイン、緑のエルファバ役。対照的に純白の愛らしいグリンダには世界的歌手として知られるアリアナ・グランデが起用されたのだから華やかな限りだ。
さらに『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のミシェル・ヨー、オズの魔法使い役に『ジュラシック・パーク』のジェフ・ゴールドブラムが顔を出している。
魔法と幻想の国オズに住むエルファバは、緑色の肌を持ち、幼い頃から周囲に疎まれて、孤独な日々を送ってきた。
シズ大学に進んだ彼女は、誰からも愛される人気者のグリンダと出会う。
何もかも正反対なふたりは寮でルームメイトとなり。最初は互いに反発するが、次第に固い絆で結ばれていく。
ある日、偉大なオズの魔法使いに特別な力を見出されたエルファバは、彼に面会するため、グリンダとともにエメラルドシティへと旅立つ――。
幻想の国をいかにドリーミーな映像につくりあげるかに力がそそがれている。『オズの魔法使い』をほうふつとする色彩感覚のなかで、ジョン・M・チュウは正攻法の演出で歌曲を盛り上げる。楽曲は舞台版同様、スティーヴン・シュワルツが担当しているが、つくりこんだ世界の中で披露されると、さらに雰囲気が盛り上がる仕掛けだ。楽曲は何度も聞くうちに沁みてくる。エリヴァ、グランデとも歌唱力は問題なしに素晴らしい。安心して作品に身をゆだねるうちに、素敵な感動が待ち受けている仕掛けだ。
アカデミー賞では8部門にノミネートされ、受賞は美術と衣装デザイン賞にとどまったが,ハリウッド映画が得意とした夢見る映像世界はここにある。正攻法のミュージカルをお望みなら、お勧めしたい。