
2月7日(金)より、TOHOシネマズ日比谷、109シネマズプレミアム新宿、新宿バルト9、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給・東宝東和、ギャガ GAGA★
©2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.
公式サイト:https://roz-movie.jp/
CGの発達とともにアニメーションの製作が以前より容易になったことは間違いない。
ウォルト・ディズニーやピクサーといった老舗に加えて、ミニオンでおなじみイルミネーションも精力的に作品を送り出し、個性に富んだ多様な映像がスクリーンを彩っている。
もちろん、日本のアニメーション作品は言うまでもなく隆盛を極めている。アニメーション作品に関しては百花繚乱と表現してもいいのではないか。今年のアカデミー賞長編アニメーション部門候補作を見ても多様さは明らかだ。
本作はアニメーションの老舗のひとつ、ドリームワークスが製作し、世界43か国でナンバー1ヒットを飾ったことで話題となった。ドリームワークスがアニメーション製作30周年を数える記念作品である。今年のアカデミー長編アニメーション部門の候補にも数えられていて受賞も期待されている。ひさびさに「心温まる」という形容がぴったりくる仕上がりだ。
原作はニューヨークタイムズベストセラーリスト1位を飾った、ピーター・ブラウン作の児童小説「野生のロボット」。『リロ&スティッチ』や『ヒックとドラゴン』などのヒット作で知られるクリス・サンダースは、この本にいたく惹きこまれ、自ら脚本を書くとともに、監督に名乗りを上げた。
野生の島に放り込まれたロボットという設定を表現するために、背景となる大自然をCGではなく温もりのある絵画的な表現を採用。シンプルなストーリーに情感をもたらすことに成功している。サンダースはクロード・モネの絵画、宮崎駿のアニメーションからインスピレーションを得たとコメントしている。
声の出演者も実力派が揃っている。主人公のロズには『それでも夜は明ける』のルピタ・ニョンゴ、さらに『グラディエーターⅡ』のぺドロ・パスカルやベテラン、キャサリン・オハラ、ビル・ナイにマーク・ハミルまで登場している。日本語吹き替え版はより豪華に、綾瀬はるか、江本佑、鈴木福、いとうまい子がキャスティングされた。
激しい嵐の夜、無人島にロボットの入った箱が流れ着く。
ひょんなことから起動ボタンが押され、ロボットは目覚めるROZZUM7134=ロズは都市生活のなかで人間をアシストするために作られたロボットだ。
人間からの命令を求め当てもなく彷徨うロズに小動物は恐れて近寄らないが、ロズは学習機能を駆使して、次第に意思の疎通ができるようになる。
決定的だったのが雁の卵をかえし、ひなを育てる任務を与えられたこと。ロズは小動物たちの知恵を借りながら、学習し、育てていく。ロズは知識とともにある感情が育まれる。
ひなの旅立ちを経験し、動物たちと心を通わせたロズだったが、行方不明になったロボットを回収するため、製造会社が最新鋭ロボットで襲来した。ロズと動物たちは決断を迫られる――。
宮崎駿のアニメーションをほうふつとする形状のロズが感情、心を持つに至るプロセスを、映画は細やかに描き出す。派手なシーンはクライマックスまで登場しないのに、ストーリーに惹きこまれ、最後には胸が熱くなる。なるほど各国でヒットしたのも分かる仕上がりである。
島の動物たちは厳しい環境を生き抜くためにタフで狡猾ですらある。そうした環境でロズは学習し、少しずつ心を育んでいく。そうしたつきあいのなかで多様性を認めることも浮かび上がってくる。サンダースの語り口はまことに巧みである。
本作は子供よりも大人の方が心に迫る。子供を育てるということ、協調しあって生きることの大切さがてんめんと謳いあげられている。この作品はお勧めだ。