『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』はかつての香港アクションをほうふつとさせる快作1

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』
1月17日(金)より 新宿バルト9、池袋シネマ・ロサほか 全国ロードショー
配給:クロックワークス
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公式ホームページ:https://klockworx.com/movies/twilightwarriors/

 今や昔話になってしまったが、中国本土復帰直後までの香港で製作された映画は個性に富んだ作品が多かった。キン・フーの昔から、ウォン・カーウァイやジョニー・トー、ピーター・チャンにリンゴ・ラム。フルーツ・チャン、アン・ホイなどなど、まさに百花繚乱。それぞれが求める方向に向かって才能を発揮していた。
 最初は一国二制度を謳っていた中国本土政府は次第に締め付けを強め、エンターテインメントの世界にまで波及する。なまじ巨大な映画人口を有するだけに、規制は厳しいものになっていった。本土政府に迎合する映画人も現れ、アナーキーな勢いを身上とした香港映画としてのカラーは失われていった。
 それから20年余の期間を経て、本作の登場となる。ひさしぶりに往年の香港映画のパワーを実感させるアクション映画である。
 背景となるのは、香港が独自の文化を謳っていた1980年代。英国領下で自由を謳い、繁栄していた時代だ。富と貧困が雑多に入り混じるこの都会には、ひときわ印象的な地域があった。そこは法が及ばない治外法権、貧民窟といわれて、一般から敬遠される場所だった。九龍城砦。旅行者は決して足を踏み入れてはいけない場所として記されていた。
 本作では、今は跡形もない九龍城砦を完璧にセットで復元。そこで繰り広げられる男のドラマを圧倒的な迫力で描き出す。
 仕掛けたのは脚本家からプロデューサーとなったジョン・チョン。自ら九龍城砦で生活した経験を持つ彼にとってはここは単なる治外法権の貧民窟ではなかった。貧しい人々が支えあって暮らす拠り所としてとらえていた。
 その思いをてんめんと込めたのが本作となる。監督は『ドッグ・バイト・ドッグ』などダークな、アクションで知られるソイ・チェン。これまでリアルな暴力世界を描いてきた彼が、ここでは激しいアクションのなかに、生きる希望や生命力を浮かび上がらせる。城砦で生活する人々の哀歓や矜持を映像に焼き付けているのだ。
 出演者も豪華絢爛だ。『柔道龍虎房』などで知られるルイス・クー、若手アクション派として近年目覚ましいレイモンド・ラム、ジャッキー・チェンの兄貴分として『燃えよデブゴン』など主演作も多数、もはやレジェンドと呼ぶにふさわしいサモ・ハン、『ブレイキング・ニュース』リッチー・レン、『バース・オブ・ドラゴン』のフィリップ・ン、さらに『コールド・ウォー 香港警察 二つの正義』のアーロン・クォックまで、まさにオールスターキャストの趣。これだけの顔ぶれが揃ったのも、往年の香港映画、香港社会への郷愁の現れ といえるだろう。

 1980 年代、香港へ密入国したチャン・ロッグワンは、裏社会のルールを拒んだことから組織に目を付けられる。
 ロッグワンが逃げ込んだのが九龍城砦だった。彼はここで心の師ロン・ギュンフォンと出会い、仲間たちと友情を育んでいく。 
 やがて九龍城砦を巻き込んだ争いが激化。ロン・ギュンフォンたちは命を賭けた戦いに挑むことになる――。

 うれしいのはアクション監督を、香港映画界で学び『るろうに剣心』などで才能を発揮した谷垣健治が担当していることだ。往年の香港アクションをさらにスピーディにブラッシュアップしたスタントと殺陣で勝負。セットを活かした壮大なアクションを披露している。冒頭から最後まで、息つく間もなくアクションの連続。香港映画の躍動感を堪能させてくれる。しかも香港映画界のレジェンドたちが気持ちよさそうに演じているのもうれしい限り。かつてスクリーンを飾ったスターたちも年輪を重ねて渋さを増した。たそがれた容姿はみていて胸が熱くなる。

 往年の香港映画の心意気を味わせてくれる。こういう映画がさらに増えることを祈ってやまない。必見です。