アメリカ映画界が次の世代になった感がしたのは、アイヴァン・ライトマンの息子、ジェイソンの登場だった。『サンキュー・スモーキング』や『マイレージ、マイライフ』といった、父とは異なるビターなコメディで才能を示し、父が身体を悪くしてから『ゴーストバスターズ/アフターライフ』を手がけて、父の世界を称えてみせた。
ライトマンと同じく気になっているのはローレンス・カスダンの息子ジェイク・カスダンである。父は『スター・ウォーズ』シリーズの脚本家として知られ、監督作は『白いドレスの女』や『再会の時』、『シルバラード』、『ワイアット・アープ』など多岐に及んでいる。息子のジェイクも脚本家として出発し、監督に道を広げ、プロデュースも手掛ける。映画のみならずテレビ、舞台の世界にまで才能を発揮している。
ヒットメーカーの仲間入りをしたのは2017年の『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』からで、続く『ジュマンジ/ネクスト・レベル』でも軽快な演出を披露。名前を広く知らしめた。なによりも主演のドウェイン・ジョンソンの信頼を勝ち取ったのは大きかった。コメディとアクションのセンスが評価されたか。本作のような王道を行くクリスマス映画にも名乗りを上げることになった。
クリスマス映画の基本は観客をとことん楽しませて、最後に幸せな気分に浸らせること。ジェイク・カスダンの真価が問われることになる。脚本に『ワイルド・スピード スーパーコンボ』のクリス・モーガンと『ブラックアダム』のプロデューサー、ハイラム・ガルシアを配し、カスダンを盛り上げる。
なによりの魅力はキャスティングにある。『ワイルド・スピード』シリーズや『ブラックアダム』などでアクションスターの道を疾走するドウェイン・ジョンソンを軸に、『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』のヒーロー、クリス・エヴァンスを相手役に起用する。
さらに『チャーリーズ・エンジェル』シリーズでおなじみのルーシー・リューに加えて、『セッション』の鬼教師J・K・シモンズがサンタクロースを演じるのだから、異色である。
クリスマスイヴの前夜、サンタクロースが誘拐されてしまった。サンタの護衛隊長カラムはクリスマスまでにサンタを取り戻すべく世界中をまわり、事件に関係していた“ネットの追跡者にして賞金稼ぎ”のジャックと手を組むが、誘拐犯はサンタの力を利用して、恐ろしい計画を実行に移していた――。
タフな護衛隊長をジョンソンが演じ、妻と子と離れて世の中を拗ねているジャックはエヴァンスが挑む。冒険を通して、ジャックは子供への気持ちを蘇らせ、家庭のありがたみを再認識させるという、いかにもクリスマス映画らしいメッセージはきっちりと織り込まれている。カスダンの演出は痛快味を前面に押し出し、一気呵成のストーリーテリング。ジョンソンの並外れたパワーを誇張しつつ、ドラマ部分はエヴァンスに任せている。
堅いこと言いっこなし、幸せな気分で劇場を後に出来る。クリスマス映画はこうしたハッピーな作品に尽きる。