『ヴェノム:ザ・ラストダンス』はアクションとスペクタクル満載の嬉しい“バディムービー”!

『ヴェノム:ザ・ラストダンス』
10月25日(金)、26日(土)27日(日)にTOHOシネマズ日比谷、丸の内ピカデリー、新宿バルト9ほかFilmed for IMAX® Dolby Cinema®にて先行上映。11月1日(金)より全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:https://www.venom-movie.jp/

 マーベルコミックにおいてスパイダーマン最大の宿敵となるダークヒーロー、ヴェノム。この存在に着目して 2018年に発表されたのがシリーズ第一弾『ヴェノム』だった。グロテスクな風貌のインパクトと人間と一体化するアイデアのユニークさが評価されて作品は世界的ヒット。2021年には『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』が製作されて、これもまた高い評価を受けた。

 それも当然、主演を務めるのが『インセプション』や『ダークナイトライジング』、『マッドマックス 怒りのデスロード』、『ダンケルク』などで群を抜いた存在感と演技力を誇るトム・ハーディなのだから、話題にならない方がおかしい。

 そして本作はシリーズ第3弾にして最終章となる。人間のジャーナリスト、エディ・ブロックが地球外生命体シンビオートに寄生されヴェノムが誕生。シリーズはエディとヴェノムの関係をメインに紡がれた。最初は寄生されるばかりだったが、宿主エディの性格、心情が分かるにつれて、次第に共生の側面が顕著になってくる。助け合い、互いに成長する。バディとしての絆が育まれていくのだ。

 前作でお尋ね者になったエディは、メキシコでサンフランシスコ警察から指名手配されていることを知り、人ごみにまみれることができる大都会、ヴェノムが会いたいと熱望する自由の女神のあるニューヨークを目指す。

 一方、ヴェノムの故郷、クリンター星では宇宙でもっとも邪悪な神、ヌルが幽閉されており、自らを開放することができるコーデックスを入手するために配下のゼノファージを宇宙の隅々にまで送り出していた。

 ニューヨークに飛行機で旅行中(!?)、ゼノファージに襲われたエディはヴェノムから自分たちがコーデックスを持っていることを知らされる。コーデックスはどちらかが死ななければ消えることはない。

 やがてエディとヴェノムは“エリア51”に行き着く。ここは凄まじい戦いを繰り広げるのに相応しい場所だった――。

 本シリーズの醍醐味は圧倒的なアクションのもとで繰り広げられるブラックユーモア、エディとヴェノムの掛け合いの面白さだ。ふたりの会話は残酷さを中和し、痛快さをもたらしてくれる。

 監督のケリー・マーセルは第1弾、第2弾の脚本を担当し、本作が初の監督作となるが、ユーモアのセンスがなんとも好もしい。聞けば、修業時代にはヴィデオショップで働きつつ脚本を書き続けていたのだとか。その店近くのパブでトム・ハーディがワークショップを主宰していたというのだから、運命的ではある。ハーディもマーセルも子役出身という共通項があり、友情を深めていったのだという。ふたりの友情の発露がこのシリーズ。エディとヴェノムの会話の面白さはそのままふたりの個性の反映なのだろう。ハーディはプロデュースの他、原案にも名を連ねている。

 共演者も『堕天使のパスポート』のキウェテル・イジョフォー、『マレフィセント』のジュノー・テンプル、『ノッティングヒルの恋人』のリス・エヴァンス、『スナッチ』のスティーヴン・グレアムなど、英国連邦系の俳優たちで揃えているのも嬉しい。ハーディとマーセルの意気の表れだ。

 スケールの大きなアクションとユーモア。痛快にして、ちょいと琴線に触れる。まずは一見をお勧めしたい。