『ビートルジュース ビートルジュース』は、ティム・バートンのポップな個性に拍手したくなる快作!

『ビートルジュース ビートルジュース』
9月27日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、丸の内ピカデリー、109シネマズ プレミアム新宿、新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/beetlejuice/

 アメリカ映画界で、長年に渡ってヒットを重ね、弾けた才気とユーモアを誇る監督といえば、まずティム・バートンの名を挙げたくなる。

 最初に注目したのは1985年の『ピーウィーの大冒険』だった。当時アメリカのテレビの人気者だったピーウィー・ハーマンを主人公にしたハチャメチャなコメディで確かバートンの長編第1作だったはずだ。おとなこどものピーウィーの繰り出すギャグの数々にすっかり惹きこまれたのを記憶している。バートンの音楽ギャグはここで編み出されたのか、「テキーラ」のギャグが記憶に新しい。

 この弾けた感性がいかんなく発揮されたのが続く1988年の『ビートルジュース』だ。死んでしまった若夫婦が、住んでいた家に引っ越してきた騒がしい一家を追い出すために“人間怖がらせ屋”のビートルジュースを呼び寄せる。この設定のもとで、マイケル・キートン演じるビートルジュースが圧巻の暴走を繰り広げる。バートンのブラックなテイストを前面に押し出し、とことんギャグで押し通してヒットを勝ち取った。

 なによりヒロインに抜擢されたウィノナ・ライダーの美少女ぶりは大きな話題となり、たちまち人気が沸騰した。実際、LAで公開直前に取材したのだが、あまりの可愛さに驚いた記憶がある。ここでもハリー・ベラフォンテの歌う往年のヒット曲「バナナ・ボート」を巧みに使ったギャグが秀逸の面白さ。キャサリン・オハラ、グレン・シャディックス、ジェフリー・ジョーンズといったバートン好みの芸達者たちの暴走ぶりもおかしく、これはもうバートン史上出色の名シーンといいたくなる。

 本作は題名の通りビートルジュース活躍第2弾である。36年ぶりに大ヒットコメディの続編を生み出したのは原点回帰の思いからか。登場人物も第1作を踏襲している。

 バートンは昔に戻ったような弾けぶりで疾走している。嬉しいのは同窓会のごとく旧メンバーが集ったことで、残念ながらシャディックスは亡くなり、ジョーンズはスキャンダルで失脚したが、その事実もギャグにしているところがバートンらしい。

 ライダーは老けたとはいえど輝きがあるし、オハラは変わらぬコメディエンヌを発揮している。とりわけ本作にはヒロインの娘役でジェナ・オルテガが出演していることが話題だ。バートンがNetflixに発表したドラマ「ウェンズデー」のヒロインに抜擢した新星。ライダーの娘時代ほどの美少女ではないが、キュートで物怖じしない現代っ子のイメージである。

 設定は前作のキャラクターを引き継いでいる。年月を経て、ライダー演じるリディアは霊的能力を活かしてテレビ番組の司会を生業にしているが、娘アストリットとの関係がうまくいっていない。

 だが、アストリッドが死後の世界に囚われてしまった。最後の手段として、リディアはビートルジュースを呼び出し、助けを乞う。

 おりしも、身体をバラバラにされ封印されていたビートルジュースの元妻が復活。ビートルジュースに復讐すべく徘徊していた。かくしてハロウィーンの夜、死後の世界は凄まじい混乱と暴走が繰り広げられていく。

 本作では元妻役に凄絶な色気の持ち主、モニカ・ベルッチを配し、近頃作品数の多いウィレム・デフォーも客演している。バートンの演出も円熟の上に悪ノリを加え、一気呵成に走りぬく。音楽ギャグも今回もきっちり織り込み(どんなものかは見てのお楽しみ)、キッチュで悪趣味な世界を画面に焼きつけている。

 アメリカで大ヒットしたのも当然。バートンにしかできないエンターテインメント世界がここにはある。マイケル・キートンの老骨に鞭打っての奮闘ぶり、中年になったウィノナ・ライダーの変わらぬ美しさに拍手を贈りたくなる。これは必見といっておきたい。