アクション映画のヒーローは強くなければ楽しくない。画面に登場するだけで、強さを感じさせてくれる、強さを絵に描いたかのような容姿の持ち主が理想的だ。
韓国発、ハリウッドにもその名を轟かしたマ・ドンソクはまさに有無を言わさぬ容姿の持ち主である。韓国生まれながら、18歳でアメリカに移住した経歴を持つ。『ロッキー』に憧れて、ボクシングを習ったらしいが、肉体はボディビルで鍛えた賜物。逞しい胸板と太い腕、力感に満ちた拳。顔がそこらの威勢のいいオッサン面なので余計にリアリティがある。街角で会うと緊張させられる凄味がある。タフさを全身から漲らせている印象だ。
これだけ存在感のあるスターがアクション・ヒーローを演じるのだから迫力は折り紙付きだ。サスペンス『隣人 The Neighbors』で、韓国国内で知名度を上げると、『新感染 ファイナル・エクスプレス』で国際的にも人気を集めた。『犯罪都市』、『無双の鉄拳』、『悪人伝』などのアクション作品にスターダムにのし上がった。2021年にはマーベル・コミックのスーパーヒーロー映画『エターナルズ』にも出演している。
強面なのにどこか愛嬌を漂わせ、韓国では「マブリー」(マ・ドンソクとラブリーの複合語)の愛称で親しまれているとか。
本作はマ・ドンソクがシナリオの原案、企画、制作も引き受けている人気シリーズ『犯罪都市』の第4弾。ソウル衿川警察署の名物刑事マ・ソクトの活躍を描いて、観客から熱狂的支持を集めている。これまでにも拳で日本のヤクザを殲滅するなど、圧巻の活躍をみせてきた名物刑事がここでは国際オンラインカジノ組織の先兵となって残虐非道な活動を繰り広げる元傭兵に立ち向かう。
シリーズも4弾ともなると、警察署の仲間や犯罪者の顔ぶれもレギュラー化してくる。マ・ソクトが利用する小悪党たちとのユーモラスな掛け合いもユーモアを際立ててくれる。
怪物刑事マ・ソクトとソウル広域捜査隊は、デリバリーアプリを悪用した麻薬密売事件を捜査していた。捜査を進めるうちに、謎の死を遂げた手配中のアプリ開発者の背後に、フィリピンに拠点を置く国際IT犯罪組織の存在を突き止める。
組織は、拉致、監禁、暴行、殺人をいとわず、韓国の違法オンラインカジノ市場を掌握した特殊部隊出身の“元傭兵”を使って暗躍していた。
組織オーナーの“ITの天才”はさらに大きな犯罪計画を練っていた。
マ・ソクトは、史上最大規模のIT犯罪計画を殲滅するため、広域捜査隊、サイバー捜査隊と新たなチームを結成し捜査を始める――。
残酷非道な敵をただただぶちのめす。強面なのにコミカルでとにかく痛快。理屈抜きの面白さがここにはある。いささかも陰のところはなく、悪い奴は拳で叩き伏せる。この明快さが本シリーズの真骨頂だ。マ・ドンソクは自分の魅力を熟知している。監督のホ・ミョンヘンはアクション監督としての経験があり、Netflixの『バッドランド・ハンターズ』でマ・ドンソクとチームを組んでいる。基本的には敵を追いつめ倒すというストレートな展開を、メリハリつけて疾走してみせる。
マ・ドンソクの魅力いっぱい。ボクシング的アクションでとことん楽しめる。これぞエンターテインメントだ。