『モンキーマン』は猥雑なインドの都市を背景に暴力が炸裂する、壮烈な復讐アクション!

『モンキーマン』
8月23日(金)より、TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイントほか全国ロードショー
配給:パルコ ユニバーサル映画
©2024 Universal Studios. All Rights Reserved
公式サイト:https://monkeyman.jp/ irected by Dev Patel

 インドの夜の大都会を舞台に超絶なアクションで彩られたパワフルな作品の登場である。『ゲット・アウト』などで人気の高いジョーダン・ピールが激賞。自ら買い取って劇場用映画に変更。その製作に名を連ねたことでも話題になった。タイトルは今ひとつながら、香港、インドネシア、韓国の古今の作品の熱い要素が織り込まれた、ヴィヴィッドでリアル、スリリングな仕上がりを誇っている。

 仕掛けたのは『スラムドッグ$ミリオネア』の主演で一躍注目を浴び、『エアベンダー』、『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』、『チャッピー』2016年の『LION/ライオン ~25年目のただいま~』など、着実な歩みをみせてきたデヴ・パテル。

 ロンドン生まれながらヒンドゥー社会に育ったパテルは8年の歳月をかけて、ストーリーを構想。知恵、強さ、勇気、献身、自制心の象徴であるヒンズー教の神、ハヌマーンの伝説にインスピレーションを得てつくりあげていった。もともとアクション映画に一家言あって、弱者のための賛歌を作りたかったとコメントしている。自らの原案をもとに、ポール・アングナウェラ、ジョン・コリーとともに脚本化。監督と主演を兼ねて世に送り出した。

 幼い頃に母を殺され、人生の全てを奪われたキッドは、毎夜開催される闇のファイトクラブで猿のマスクを被り、〈モンキーマン〉という名の“殴られ屋”として生計を立てている。

 どん底で苦しみながら生きてきた彼は、全てを奪った権力者のアジトに潜入する方法を見つける。

 押し殺してきた怒りを爆発させたキッドの目的は「殺す」こと。復讐の化神モンキーマンとなった彼の、壮絶なる復讐劇が幕を開ける――。

 男たちの熱狂でムンムンする格闘場のなかで、リアルな殺陣が次々と繰り広げられる。観衆の熱狂に呼応して、いかにも痛そうな戦いから始まって、香港アクションのようなきれいな殺陣ではなく、パテルが好きなインドネシア・アクション『ザ・レイド』をほうふつとするアクション、スタントの連続。クライマックスはまさに圧巻の一語だ。

 パテルはこれまでアクションを得意とする俳優には見えなかったが、長身を活かしつつみごとな殺陣をみせてくれる。本人は子供の頃からアクションが好きだったというが、アジアのアクションの要素を巧みに画面に持ち込んでいる。パテルの語り口は多少乱暴なところはあるが、勢いで押し切ってみせる。映画の進行とともに次第に熱くなるイメージ。インドネシアでロケーションを敢行したそうだが、雑然とした雰囲気が迫力に加味されている。スタントの凄味が映像に焼きついている。

 パテルはストイックに負け犬ヒーローの変貌を演じ切っているし、『第9地区』のシャールト・コプリー、『ミリオンダラー・アーム』のピトバッシュなど、共演陣も曲者が揃っていい味を出している。

 パワフルで見どころいっぱいのアクション。アジアン・テイストを持ち込みながら、仕掛け人はロンドン生まれ。世界は文化が入り混じっていることを実感させられる。快作である。