『フォールガイ』は映画の裏方スタントマンを称えた、痛快アクション・エンターテインメント!

『フォールガイ』
8月16日(金)より、TOHOシネマズ日比谷、109シネマズプレミアム新宿、新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:東宝東和
©2023 UNIVERSAL STUDIOS
公式サイト:https://fallguy-movie.jp/

 映画の迫力を盛り上げるために、文字通り身体をはってアクションに賭けるスタントマンたち。映像に焼き付いた彼らの活躍がなければ、間違いなくエンターテインメントの魅力は半減してしまう。縁の下の力持ち、スタントマンを称えた作品が近年、目につく。

 昨年公開された、香港映画全盛期に活躍したスタントマンをクローズアップしたドキュメンタリー『カンフースタントマン』では、今さらながらに技の凄さに舌を巻かされた。さらに今年に入って、ジャッキー・チェンが老いたスタントマンに扮した『ライド・オン』も公開された。こちらはジャッキーがスタントにもっとも力を入れていた1980年代から1990年代の名スタントシーンを挿入していて、今さらながらにジャッキーのチャレンジ精神に脱帽したくなる。

 本作はアメリカ版のスタントマン礼賛映画である。思い起こせば、1978年にスタントマン出身のハル・ニーダムが監督した『グレートスタントマン』というアクションコメディがあった。それから、ピーター・オトゥールの演技が光る1980年作『スタントマン』も頭に浮かぶ(アカデミー賞の主演男優、監督、脚色賞にノミネートされながら、日本公開は1983年1月と冷遇されたが)。

 だが、本作にはメジャーな輝きがある。今やアメリカ映画界でもっとも勢いのあるライアン・ゴスリングにスタントマンを演じさせ、派手なアクションの綴れ織りで貫く趣向。『ラ・ラ・ランド』から『ブレードランナー 2049』、『バービー』など、常に話題作の主役を飾っているゴスリングに華麗なスタントを演じさせるとあれば、成功は約束されたようなものだ。

 監督を務めるのはスタントマン出身で『ジョン・ウィック』シリーズのスタッフで売り出し、『アトミック・ブロンド』や『デッドプール2』、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』、さらには『ブレット・トレイン』で驀進するデヴィッド・リーチ。アクション映画に特化した「87ノース・プロダクションズ」を設立し、ひたすら驚きの映像を追求しまくっている。

 本作は当初、テレビシリーズ「俺たち賞金稼ぎ!!フォールガイ」をもとにしていたが、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』で組んだ脚本家ドリュー・ピアースが参加したことで、ユニークなヒネリをもったストーリーに錬金された。『アイアンマン3』の脚本や『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』の原案などを手がけてきたピアースは痛快アクション味とラブストーリー要素を盛り込んで、さらにゴスリングの個性が際立つ仕掛けにした。リーチのアクション主導が疾走感とともに映像に焼き付く。

 腕利きスタントマンのシーバースはアクションスター、トム・ライダーのダブルとして数々のスタントをこなしてきた。スタッフのジョディと恋仲でもあったが、落下のスタントに失敗。肉体的にも精神的にもダメージを負って、業界から姿を消した。

 18か月後、シーバースはトム・ライダーの超大作『メタストーム』に参加するように依頼される。断っていたシーバースだったが、監督がジョディであることを知り、オーストラリア・ロケで復帰を決意する。

 だが、この撮影はシーバースのスタント技術ばかりでなく、生命を脅かす事態に転じていく。恐るべき事件に巻き込まれた彼には、スタント技術と頭脳で危機を乗り越えるしかない――。

 ゴスリングに見合うようにジョディ役には『オッペンハイマー』でアカデミー助演女優層にノミネートされたエミリー・ブラント、さらにトム・ライダー役には007の抜擢も噂されているアーロン・テイラー=ジョンソンとくるから華やかだ。とはいえ、真の見どころは随所に網羅されたスタントシーンの数々。リーチがとことん力を入れた圧巻のアクションシーンが息つく間もなく披露される。

 基本的にはアクション満載。全編、明るくコミカルなストーリーで彩られている。能天気に楽しむには最適のエンターテインメントだ。