
TOHOシネマズ日比谷、新宿バルト9 グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国劇場にて大ヒット上映中
配給:東和ピクチャーズ
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公式サイト:https://blue-movie.jp/
音に反応して人間を襲う生命体の恐怖を描いた『クワイエット・プレイス』シリーズの世界的なヒットによって、監督、製作総指揮、脚本のみならず、出演も果たしたジョン・クラシンスキーは一躍メジャーな存在となった。それまでは地味な俳優として活動してきたが、一気に作家としての資質も脚光を浴びることになった(最新作の『クワイエット・プレイス:DAY 1』はマイケル・サルノスキが監督、原案、脚本。クラシンスキーは原案と製作に名を連ねている)。
それまでは渋い俳優として活動してきた彼にとっては、本質は人間を演じることにあり、『クワイエット・プレイス』シリーズも極限状態に陥った家族の姿をみつめることに、力点が置かれていた。単なるホラーサスペンスでヒットを狙う意識はなかったのだという。
本作はそうした家族思いのクラシンスキーならではの発想で生まれた。世界中がコロナ禍で出歩けなくなったときに、8歳と6歳の娘の想像力を取り戻すために考えたことが、作品のアイデアに繋がっていった。2020年から21年にかけて脚本を執筆し、無垢な子供たちが育む“想像の友だち(イマジナリーフレンド)”を題材にした。
“イマジナリーフレンド”というと、日本のアニメーション制作会社スタジオボノックの2023年作品『屋根裏のラジャー』が頭に浮かぶ。イギリスの詩人A・F・ハロルドの「ぼくが消えないうちに」を原作に、子供の“想像の友だち”を魅力的に登場させたのは記憶に新しい。本作は実写とCG、アニメーション、VFXを駆使して、“イマジナリーフレンド”を具現化。実写と合成することで素晴らしいファンタジーに仕上げている。クラシンスキーは製作、脚本、監督、出演もこなす。文字通り彼の思いを貫いた作品といいたくなる。
ヒロインは13歳の少女、ビー。母親を亡くしたばかりで心に傷を負ったビーは祖母のアパートで不思議な生き物、ブルーに出会う。
ブルーと彼の仲間たちは、子供たちの“空想の友だち”だった。彼らは子どもが大人になって彼らを忘れると消滅する運命にあった。もうすぐ消えてしまうというブルーを救うため、ブルーのことが見える隣人の男の助けを借りながら、ビーはブルーの新たなパートナーを見つけるべく走り回る――。
『トイ・ストーリー』と同じく、子供が成長するにつれて忘れ去られる“想像の友だち”をこの上なく華やかでカラフルに描いた点でも特筆に値する。存在の儚さ、切なさを散りばめながら、ポップに謳いあげる。クラシンスキーの演出は情の機微を描きこんでいて、大人にも十分に見応えがある。“想像の友だち”それぞれに見せ場を用意しながら、成長物語としてもきっちりと仕上げている。
出演者がいい。ビーにはテレビシリーズ「ウォーキング・デッド」で注目されたケイリー・フレミング。ビーに付き添う隣の男には『デッドプール』シリーズのヒーローとしておなじみのライアン・レイノルズ。聞けばレイノルズは脚本段階で、クラシンスキーとともにアイデアを出し合ったのだとか。“想像の友だち”の派手なパフォーマンスをサポートしながら個性を発揮するあたりはさすがにうまい。隠された趣向も再議に効いてくる仕掛けだ。
なによりの仕掛けは“想像の友だち”の声に参加した豪華な顔ぶれだ。スティーヴ・カレル、マット・デイモン、ブラッドリー・クーパー、ジョージ・クルーニー、オークワフィナ、エミリー・ブラント、サム・ロックウェル、ブレイク・ライブリーなどなど、錚々たる俳優たちが馳せ参じている。これもクラシンスキーの意図に賛同したことから実現したものだ。
最後の趣向も含めて心に触れるファンタジー、この手の作品はじっくりと準備して公開しないと注目されない。声を大にしてエールを送りたい。