『マーベルズ』はキャプテン・マーベルがチームを組んで新たなシリーズの幕開きを告げる痛快編!

『マーベルズ』
11月10日(金)より、TOHOシネマズ日比谷、丸の内ピカデリー、109シネマズプレミアム新宿ほか、ほか全国ロードショー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2023 Marvel
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/marvels

 ひさびさにマーベル・スタジオの作品を紹介する。

 あまた多くのスーパーヒーローを輩出してきたこのスタジオはヒット作を連発し、世界の映画市場をリードしてきた。

 ふりかえれば、数多くのヒット作の中でも、一番の盛り上がりをみせたのが2019年に発表された『アベンジャーズ/エンドゲーム』だった。アイアンマン、キャプテン・アメリカをはじめとするアベンジャーズが人類を救うことができるのかという展開のもと、壮大にしてスリリングな映像が繰り広げられた。世界中を熱狂させたのだ。この作品がもたらした喪失感は大きなものだった。

 以降、マーベルのヒーロー作品は健闘しつつも、ブームになるほどの動きはみせなかった。

 そうして本作の登場となる。題名がズバリ“マーベルズ”となれば、自信度の高さも伺えるというものだ。

 本作ではアベンジャーズのなかでも最強の力を誇った孤高の戦士、キャプテン・マーベルに焦点を当てる。彼女は宇宙各地の問題を解決すべく、悪と戦う日々を送っている。

 一方、彼女を殺戮者と呼び、激しい憎悪をたぎらせているダー・ベンは、着ける人に凄まじい能力を与えるバングル(腕輪)を手に入れ、キャプテン・マーベルを滅ぼすべく行動を開始した。

 キャプテン・マーベルはそれどころではなかった。彼女に憧れている高校生ミズ・マーベル、彼女を慕うモニカ・ランボーと、居場所が瞬時に入れ替わる現象が発生していたのだ。戦っている最中でも、次の瞬間まったく違う環境に置かれてしまう。

 次々に訪れるピンチの連続にキャプテン・マーベルはモニカ、ミズ・マーベルとともにチームを組むことになる。

 ダー・ベンは着々とキャプテン・マーベルの愛する者を破壊すべく迫ってくる。キャプテン・マーベルはこの戦いを通して、チームの大切さ、友情を学ぶことになる――。

 とにかくテンポの速さに圧倒される。めまぐるしいスピードでキャプテン・マーベルとふたりが入れ替わる状況が紡がれ、チームとなる過程が紡がれる。と同時にダー・ベンがなぜキャプテン・マーベルを恨むのかも織り込まれる。

 モニカ・ランボーはテレビミニシリーズ「ワンダヴィジョン」に登場するし、ミズ・マーベルはテレビシリーズ「ミズ・マーベル」のヒロインでもある。いわばスクリーンの本家本元を軸に一堂に介したかたちだ。マーベルのキャラクターたちの新たなチーム化の第1弾だろう。

 本作では仇役も女性、すべて女性で構築されている。監督が『キャンディマン』のニア・ダコスタ、脚本もダコスタとメーガン・マクドネル、エリッサ・カラシクと女性陣で固めている。しかもランボーはアフリカ系、ミズ・マーベルはパキスタン系と血統も巧みに分散。ふたりが金髪碧眼のキャプテン・マーベルとチームを組めば鬼に金棒だ。

 ダコスタの語り口はとにかく詰め込めるものは詰め込みたい主義。最初は面食らうが、ユーモアを散りばめた手法がクセになる。もちろんラストには次の作品へのブリッジも用意され、さらにチームのメンバーが増えることも暗示される。

 出演者もキャプテン・マーベル役のブリー・ラーソンも健在だし、ランボー役テヨナ・パリス、ミズ・マーブル役のイマン・ヴェラーニは新鮮な魅力がある。加えてサミュエル・L・ジャクソンがおなじみニック・フューリー役を軽妙に演じれば、テレビシリーズ「梨泰院クラス」で世界的な注目を浴びたパク・ソジュンも顔を出す。

 女性たちに彩られた新ヒーロー・シリーズ。本国のみならず、世界的にどのように受け入れられるか、注目である。