『ゴジラ-1.0』は山崎貴が戦後の日本をみごとに再現した、巨獣一大パニック映画!

『ゴジラ-1.0』
11月3日(金・祝日)より全国東宝系にてロードショー
配給:東宝
©2023 TOHO CO., LTD.
公式サイト: https://godzilla-movie2023.toho.co.jp/

 日本を代表する巨獣といえば、昭和29年に姿を現したゴジラに止めを刺す。日本映画を代表する怪物であり、その雄姿は見る者を魅了した。ゴジラは本多猪四郎の演出、円谷英二の特撮のもと、文字通り世界を震撼させた。以後シリーズ化されて、さまざまな監督が多様なアプローチで映像化してきた。

 誕生70周年を記念して本作の登場となる。メガフォンを取るのは山崎貴。VFX部門から監督になった人で、『三丁目の夕日』シリーズを大ヒットさせたことで、一躍メジャーな存在となった。自分が生まれる前の日本を異世界と捉え、さまざまな資料を駆使して再現する手法で山崎世界の“昭和”をつくりあげた。アプローチはイノセントなSF少年そのものの視点で、似て非なる世界を舞台に人情てんめんたるドラマを繰り広げた。ここに新鮮さがあった。

 同じく大ヒットした『永遠の0』をはじめ、描く世界の時代を遡ってきた山崎監督だが、当りといえるものはあまりなかった気がする。だから、本作に出会ったのは本当に幸運だった。生誕70周年記念作品。監督は映像化するにあたり、敗戦直後の荒廃した日本を再現。ゴジラの巨獣としての底知れぬ恐ろしさをくっきりと映像化してみせる。

 ストーリーは戦争末期に幕を開ける。特攻に出ながら命令を果たせなかった敷島浩一は日本の基地に不時着し、そこで巨獣ゴジラに遭遇。ゴジラは日本兵をなぎ倒し、消えていった。

 終戦となり、敷島は帰国。荒涼とした東京で大石典子と出会い、ふたりでひとりの子供を育てることになる。

 死に場所を求める敷島は機雷除去の仕事に就き、野田健治、秋津淸治たちと知り合い、仕事に没頭する。

 少しずつ、復興を始める東京。しかし、そこにゴジラが現われる。海から上陸した巨獣は次々と建物を破壊し再び銀座の街を瓦礫の山にしていく。

 アメリカは周辺国の影響を恐れて、軍隊を出さない。軍隊をもたない日本は独自の戦略で立ち向かうしかない。

 敷島は残っていた飛行機を使って、巨獣と戦うことになった――。

 再建しようとしている日本に、ゴジラという災忌が襲い掛かる。人間の営みを嘲笑うかのように破壊の限りを尽くす。脚本も書いた山崎貴は、死に損なった特攻兵の悔悟の念を描く一方で、機雷除去の仲間たちによって生きる希望が芽生えるプロセスを紡ぎだす。当時を生きぬいた人間たちのヴァイタリティをくっきりと映像化している。

 もちろん、圧巻はゴジラの破壊力だ。日劇のある銀座をのし歩き、ビルや山手線を破壊し尽くす。ここにはキング・コングのような人間とのコミュニケーションはない。ただ破壊神として力を発揮するのみだ。VFXも担当した山崎貴は、どこまでも兇悪なゴジラを迫力満点に焼きつける。人間の意向など無視して、あくまでも暴虐の限りを尽くす。その姿はいっそ潔い。

 俳優陣も敷島役の神木隆之介、大石紀子役の浜辺美波に加えて、吉岡秀隆、佐々木蔵之介、青木崇高、安藤サクラなど充実の俳優たちが控えている。主役のふたりはシリアスに挑んでいるが、共演者たちは監督と同じように、見知らぬ戦争直後の近過去の世界を楽しみながら演じているようだ。

 どのように排除するかは作品を見てのお楽しみ。ゴジラの暴れぶりを満喫するにはIMAXのような大画面で鑑賞するのがふさわしい。