『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』は次世代の匠が放つポップでダークなファンタジー快作!

『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』
11 月 17 日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかにて公開
配給:キノフィルムズ
© Institution of Production, LLC
公式サイト:https://monalisa-movie.jp

 アメリカが多民族国家であることは論を俟たない。現在では、その出自を明らかにして“~系アメリカ人”と表記するのが一般的になっている。

 近年、輩出する映画監督たちもその出自が多様化しているが、ここに紹介するアナ・リリー・アミールポアー(アミリプールとも呼ばれる)はアメリカ映画界で極めつけの注目株といわれている。

 アミールポアーは英国で生まれ、幼い頃にアメリカに渡った、出自はイラン人だ。幼い頃に1980年代のアメリカン・ポップ・カルチャーの洗礼を受けた彼女は、父から与えられたビデオカメラに夢中になり、映画の道に進む決心をする。大学で映画を学び、2014年に長編映画デビュー作『ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』を発表。この作品はサンダンス映画祭でプレミア上映されたのをはじめ、世界各国の映画祭で絶賛を浴びた。

 さらに2016年の長編第2作『マッドタウン』はヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞に輝いた。ユニークなセンスを誇る新進監督として大きな注目を浴び、テレビシリーズの監督などに多用されることになる。

 本作は彼女の長編映画第3作目。アメリカに来た当初からの彼女の思いのこもったストーリーとなっている。彼女は“よそ者”という感覚を拭えずにいた。その孤独感を癒してくれたのがファンタジー映画に登場したヒーローたちだったという。そうしたヒーローを自分でもつくりたいという欲求から生み出したのが本作のヒロイン、モナ・リザということになる。

 アミールポアーはモナ・リザのキャラクターを構築するとともに、彼女の活躍する場を訳アリの人々が蠢く街、ニューオルリンズに据えた。毒々しい人工的なネオンが瞬く街並みのなかで、未だかつて例のないヒーロー、モナ・リザが闊歩する。まこと彼女が「次世代のクエンティーン・タランティーノ」と評されたのも頷けるユニークさだ。

 長い間、精神病院に閉じ込められていた少女、モナ・リザが赤い月の夜、突如、他人を操る超能力に目覚める。彼女は看護師を意のままに扱い、難なく病院を脱走する。

 ふらふらとニューオルリンズの街をさまよい、シングルマザーのポールダンサーのボニーと出会う。

 モナ・リザの能力を目の当たりにしたボニーは息子チャーリーと住むアパートに連れ帰り、泊めてやる。それからモナ・リザの能力を悪用して金を儲けようとするボニーの計画が実行に移される。

 モナ・リザは母に批判的なチャーリーと心を通わせるが、ボニーとの行動に警察の捜査が及ぶことになる――。

 社会から隔絶されていた少女が底辺の世界を知り、次第に前向きに生きる術を身につけていくプロセスを、アミールポアーはポップかつ弾けたタッチで映像化していく。ブラックな設定になりかねない設定だが、初々しい成長物語の要素を織り込み、ラストまで走りぬく。彼女なりのヒーローはいっそ痛快である。このヒーロー造形にはイラン系アメリカ人である監督の思いと願いがこもっている。

 ポップな音楽使い、色彩感覚、予断を許さないストーリーまで、アミールポアーのオリジナリティをとことん知らしめてくれる。

 出演者もアミールポアーの意を汲んでまことに新鮮だ。モナ・リザに『バーニング 劇場版』の韓国女優、チョン・ジョンソを抜擢、ヒロインのミステリアスな雰囲気を引き出す。さらにポールダンサーのボニーには『あの頃ペニー・レインと』などで知られるケイト・ハドソンを配して脇を固める。ハドソンは幸せを求めてあがく、すれっからしのシングルマザーを好演。生き抜くためには何でも手を出すキャラクターをみごとに演じている。

 本作でアナ・リリー・アミールポアーという才能を堪能できる。今後が楽しみな存在といえる。注目だ。