『ドミノ』は、ロバート・ロドリゲスが長年温めてきたアイデアに彩られた異色サスペンス!

『ドミノ』
10月27日(金)より、全国ロードショー
配給:ギャガ、ワーナー・ブラザース映画
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公式サイト:gaga.ne.jp/domino_movie/

 ロバート・ロドリゲスは、クエンティーン・タランティーノと並び、インディペンデント映画の星として1990年代に華々しく登場した。

 1992年に手がけた『エル・マリアッチ』がサンダンス映画祭の観客賞に輝いたのが始まり。わずか7000ドルの製作費で生み出した作品はメジャー映画会社コロンビアが配給し、一躍、映画界に知られる存在となった。以降、『エル・マリアッチ』の続編『デスペラード』(95)やら、タランティーノと組んだ『フォー・ルームス』(95)や、タランティーノが脚本にも絡んだハチャメチャ・ホラー・アクション『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(96)を発表。

 2001年には『スパイ・キッズ』を監督し大ヒットを記録、シリーズ化して成功を収めた。さらにタランティーノと再び組んだ『グラインドハウス』(07)やジェームズ・キャメロンのプロジェクトを引き継いだ『アリータ:バトル・エンジェル』(19)など、多彩に活動を繰り広げてきた。問答無用のアクションと下世話なユーモア、陽気な作風はロドリゲスならではのもの。テキサスを本拠に独自の世界を構築し続けている。

 本作はそんなロドリゲスが20年間、温めてきた企画だという。当初は自分で監督するのではなく、脚本を書いて他人に任せるつもりだったらしい。ただ、練り込んでいくうちに、自身で手がけるのが自然だと思うようになったのだという。脚本として完成させるために、『キングコング:髑髏島の巨神』などで知られるマックス・ボレンスタインも参画。先が読めずに見る者を翻弄するサスペンスが生まれることになった。

 出演者には名のある俳優を起用したいとの、ロドリゲスの希望でベン・アフレックがピックアップされた。自ら監督の経験もあり、脚本も書くアフレックは独特の世界観を誇る内容に惹かれて出演を快諾した。共演は2002年の『シティ・オブ・ゴッド』で注目され、アメリカ映画に招かれたブラジル女優アリシー・ブラガに『コンタクト』や『アルマゲドン』などで個性を発揮する性格俳優、ウィリアム・フィクナー。さらに『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』のJ・D・バルトに加え『ウォッチメン』のジャッキー・アール・ヘイリーも顔を出している。

 一人娘の行方不明に精神のバランスを崩した刑事ロークは、仕事に専念することで正常を保とうとしていた。匿名の電話で銀行強盗が計画されていると告げられたロークとチームは警戒に当たる。

 ロークはひとりの怪しげな男に目をつける。男より先に金庫を開けたロークだったが、そこには驚くべき写真とメモが残されていた。男を追いつめるロークだったが、男は屋上から飛び降り、忽然と姿を消した。

 この事件を契機に、ロークは不条理の世界に足を踏み入れていく――。

 冒頭から油断ならない設定の下、主人公ロークの体験する世界がスピーディに紡がれる。“ドミノ”とは邦題ながら、幾分にネタ晴らしの気味があるか。ドミノ倒しのようにドンデン返しが続き、驚愕のラストが待ち受けている。ロドリゲスが自ら手掛けたくなった理由も分かる。とにかく手早くストーリーを構築し、ひっくり返す楽しさ。躊躇しないで疾走するロドリゲスの語り口は軽やかで、最後には痛快さももたらしてくれる。何でもこなせる匠が最後のオチに嬉々としている様子が伺える。

 悩める刑事を神妙に演じつつ、最後に吹っ切れえるベン・アフレックの生真面目な表情も後になると得心がいく。

 見る者を翻弄し、最後に痛快さを感じさせる作品。それにしても“ドミノ”とはよくつけたものだ。