『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』はトム・クルーズの本気を実感できるアクション大作!

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
7月21日(金)より全国ロードショー
配給:東和ピクチャーズ
©2023 PARAMOUNT PICTURES.
公式サイト:https://missionimpossible.jp/

 米国映画俳優組合のストライキの余波を受けて、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』のトム・クルーズの来日キャンペーンが中止になった。親日家でキャンペーンは欠かさなかったクルーズにとっては予期せぬ事態となったが、本作の勢いがいささかも減じることはない。

 この超人気シリーズ最新作は2億9千万ドルという破格の予算を費やして、超ド級のアクションとスタントの綴れ織り。そこには、未だかつてないアクション映画を生み出さんという、製作者トム・クルーズの意志が貫かれている。シリーズは1作ごとに呼び物のシーンが散りばめられていたが、作品を重ねるごとにさらなる高みを映像に収めている。

 本作では、クルーズ自身が切り立った崖からバイクごとジャンプするスタントをはじめ、ローマの名所の数々を阿鼻叫喚のカーチェイスの場に変貌させるエピソード、水の都ヴェニスを活かしたアクション、さらにはオリエント急行上のクライマックスまで息もつかせずに疾走する。見る者をとことん翻弄する映像で終始する姿勢と形容すればいいか。

 もはや決して若くはないクルーズが、ここまで肉体を酷使してアクションやスタントに挑み続けるのは、自分がアメリカ映画界を牽引しているという自負があるからだろう。2022年には『トップガン マーヴェリック』が世界的ヒットを飾り、アカデミー賞では作品賞と脚色賞にノミネートされた。プロデューサーモ兼ねるクルーズとしては「我が意を得たり」といったところだろう。

 勢いに乗ってクルーズは、本作をこれまでのような一話完結のかたちにしなかった。アクション、スタントの迫力シーンをさらに織り込むためには尺が足りなくなる。過不足なくストーリーを語るためには、無理やり1本に収めることがすべてじゃないと発想したのか、よりインパクトの強い映像を網羅することに終始している(奇しくも先日公開された『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』も同じ選択をしている)。昔、映画黄金期に流行った連続活劇のように、クライマックスの興奮を「続く」で続編に繋げる作戦だ。こうなると、観客がいつまで楽しみ続編を待つかにかかるが、クルーズをはじめとする製作陣は自信をもって選択した。

 監督は2008年の『ワルキューレ』の脚本と製作を担当し、2012年の『アウトロー』の監督を経て、シリーズに参加したクリストファー・マッカリー。2014年の『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』、2017年の『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』に続き、本作の登板となる(もちろん続編も同様に担当する)。

 クルーズとよほど気が合うのだろう。全幅の信頼を得て、本作でシリーズは新たな段階に入る。マッカリーは『サブライム -白衣に潜む狂気-』のエリック・ジェンドレセンとともに脚本を練り上げ、時代にふさわしい最悪の敵を設定した。

 イントロダクションは北極で、最悪の敵の存在が明示される。得体の知れない、どう反撃するかも分からぬまま事件が起きる。

 主人公イーサン・ハントは例によって古色蒼然たるテープレコー-ダーからIMFの指令を受ける。最悪の兵器と、その兵器を自在に操る鍵の存在を告げられ、彼がIMFに所属する前に対立した男ガブリエルが絡んでいることが告げられる。

 ハントはルーサー、ベンジー、そしてイルサといういつものメンバーとともに、アフリカ、ヨーロッパ各都市を大混乱に陥れつつ、鍵を追う。彼らの前にハントの邪魔をするかのように、謎の女性グレースが登場。事態をますます複雑にするなかで、オリエント急行のクライマックスに導かれていく――。

 映画が始まると同時にトム・クルーズが扮するイーサン・ハントのアクションで押し通す。そのアクション、スタントの数々がいずれもクライマックス級の迫力なので、見ていて呼吸を継ぐこともままならない。ただひたすら繰り広げられる映像に釘付けとなる。聞けば、アクション、スタントを撮影して、ストーリーに収斂していくスタイルとか。なるほど、香港アクションの手法をクルーズは踏襲していたのか。

 出演者もルーサー役のヴィング・レイムス、ベンジー役のサイモン・ペッグ、イルサ役のレベッカ・ファーガソンは変わらぬ個性を発揮し、グレース役には『プーと大人になった僕』のヘイリー・アトウェルが抜擢された。彼女はマッカリーが2013年に舞台を見て以来、起用を考えていたのだという。

 画面に惹きこまれ。気がつくと2時間43分が終わっている。今後どのような展開になるのか期待が高まる。ただ心配なのは、米国俳優組合のストライキがいつまで続くか。撮影分が残っているというから、公開が遅れるのではないか。心配な限りである。