『キングダム 運命の炎』は、スペクタクルな合戦のアクションが満載.痛快至極なシリーズ第3弾!

『キングダム 運命の炎』
7月28日(金)より全国東宝系にてロードショー
配給:東宝、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©原泰久/集英社 ©2023映画「キングダム」製作委員会
公式サイト:https://kingdom-the-movie.jp/

 2006年1月より「週刊ヤングジャンプ」誌に連載を開始され、現在、単行本68巻。累計発行部数9700万部を数える大人気コミックの映画化第3弾である。

 その壮大なスケール、骨太なドラマ世界は映画化が難しいといわれていたが、2019年に第1作が完成。原作のイメージを継いで圧倒的なアクション世界を映像化してみせた。中国にロケーションを敢行し、CGやVFXを駆使するなど、日本映画としては画期的な規模で映像化した第1作は大ヒット、実写日本映画の第1位を飾った。

 勢いに乗じて2022年7月に公開された第2弾『キングダム 遥かなる大地へ』も前作の劣らぬヒットを飾り、こちらも実写日本映画のトップに輝いた。

 紀元前、中国春秋戦国時代を舞台に、国の統一を目指す若き王・ 嬴政(えいせい) と、天下の大将軍になるべく戦場を駆け巡る信(しん)を軸に壮大なロマンが構築される。第1作ではイントロダクションとして、ふたりのキャラクターが過不足なく紹介されるとともに、痛快な冒険活劇的ストーリーに徹した。

 続く第2弾では、隣国・魏の侵攻を迎えうつ秦軍の歩兵となった信の活躍ぶりを追って、ひたすら合戦の迫力を焼きつける。シミュレーションゲーム的な面白さと、アクションに次ぐアクションで終始してみせた。壮烈なモブシーン、群を抜いたスタント、殺陣にこだわったスピーディな展開が新鮮。見るものは圧倒されるばかりだった。

 シリーズでありながら、アプローチを工夫して歴史劇の醍醐味を満喫させる。この戦略は 本作でもいかんなく発揮されている。基本的に合戦、戦いが見せ場になる流れは変えていないが、信の英雄的活躍の前に、嬴政(えいせい)の過去のエピソードが綴られる。隣国・趙の人質となって闇に落ちていた彼が、王のプライドを取り戻し、中国統一を目指すまでの悲しくも切ないドラマが描かれる展開だ。

 そこから隣国・趙との一大合戦が幕を開ける。伝説的大将軍・王騎の部下となった信は、百人隊“飛信隊”の隊長に選ばれ、2万人の大軍に突進していく。

 それぞれ3作に趣向を凝らして、観客を飽きさせない。すべての脚本に関与した原作者・原泰久と、『劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~』などで知られる脚本家の黒岩勉の成せる業。本作では嬴政(えいせい)のエモーショナルな逸話で変化をつけ、一気呵成の合戦に雪崩れ込む。3作すべての監督を担当した佐藤信介は『アイアムヒーロー』や『いぬやしき』など、エッジの利いた作品で知られていたが本シリーズでは堂々たる演出をみせてくれる。第1作の冒険活劇風から、第2作の堂々たる歴史劇風、そして本作ではドラマ部分で情感を高め、合戦シーンではゲーム感覚。この割り切り方がいっそ心地よい。

 中国ロケを巧みに挿入しながら、あくまで痛快さを前面に押し出す。重苦しくなり過ぎない匙加減がみごとである。

 出演者も日本映画屈指の豪華さだ。信役の山崎賢人がどこまでも全身全霊、アクションとスタントで画面を躍動すれば、嬴政(えいせい)役の吉沢亮が悩めるヒーロー役を熱演。もちろん橋本環奈も顔を出すし、清野菜名は前作同様の殺陣を披露している。

さらに杏や山田裕貴、玉木宏が個性を主張し、王騎役の大沢たかおがビルドアップした肉体の大将軍を快演してみせる。敵の将軍たちも片岡愛之助をはじめ粒揃いの個性派俳優で固めている。第4作が楽しみな俳優がカメオ的な登場をするから、次作がますます楽しみになってくる。

 原作は膨大だし、本作の好調ぶりをみると、シリーズはまだまだ続きそうだ。次作が待ち遠しい限りだ。