原泰久による同名コミックの実写映画化『キングダム』は2019年に公開され、57億3千万円の興行収入を挙げて、その年の日本映画ナンバーワンとなった(厳密には『天気の子』と『名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)』のアニメーション2本に次ぐ3位)。「天下の大将軍」を目指す貧しい少年、信(しん)を主人公に、混沌とした古代中国を舞台にした血沸き肉躍る冒険ストーリーが展開していく。中国本土にロケーションを敢行し壮大なスケールと圧倒的なアクションとスタントで勝負して、評価も高かった。
この成功に力を得て、2020年には続編製作が決まるも、折からのコロナ禍で延期。さまざまな変更のすえ、2021年10月にクランクアップした。脚本は前作に続き黒岩勉と原作者の原泰久が担当している。前作は紀元前の春秋戦国時代の秦(しん)で繰り広げられる青春成長物語の側面が強かったが、この続編は、さらに戦いの世界に深く分け入る。
若き王・嬴政(えいせい)の軍隊の一員となった信(しん)が、侵略を開始した隣国・魏(ぎ)の大軍を迎え撃つ歩兵に身を投じる。戦績のない信は同郷の兄弟、頼りない伍長、子供のような風貌の 羌瘣 (きょうかい)とともに、最弱の伍(五人組)を組むことになる。
敵の大軍を指揮するのは戦の天才といわれた将軍・呉慶(ごけい)、受けて立つ秦(しん)を率いるのは猪突猛進の将軍・麃公(ひょうこう)。ふたりの作戦によって、戦略上有利とされる丘をめぐって、双方多くの兵士たちが倒れていく。魏(ぎ)軍に占拠され、劣勢を強いられるうち、部隊を指揮する上官・縛虎申(ばっこしん)は、無謀とも思える突撃命令を下す――。
前作と大きく異なり、本作はバトル・アクションと形容したくなるほど、全編戦いのシーンで繋いでいく。前作に続いて監督となった佐藤信介は『GANTZ』や『アイアムアヒーロー』などのエスカレートするアクションに定評がある。ケレンもたっぷり、ひたすらアクションに特化した疾走感で貫く。戦いを俯瞰した戦略的な面白さにふれながら、綴るのは五人組小隊の肉弾戦だ。
ただただ気力と意志で勝機を見いだす戦いを、佐藤監督は次々と用意する。見る側にとっては息つく暇もない。展開する戦いに目が釘付けとなる。ここまで戦い主導の作品はひさしぶりである。コロナ禍でさまざまな制約があったろうに、ここまでの肉弾戦を映像化したことに素直に脱帽である。
当然、主人公の信を演じた山崎賢人を筆頭に、同郷の兄弟に扮した岡山天音、三浦貴大に加え、伍長役の濱津隆之など、出演者すべてがめまぐるしくいアクションを披露している。
とりわけもっともキレのある殺陣を披露したのは羌瘣(きょうかい)を演じた清野菜名だ。『TOKYO TRIBE』や『東京無国籍少女』などで、アクション、スタントを得意としていることは聞いていたが、ここまで徹底的にバトルシーンをこなせるとは思ってわなかった。
ひとつひとつの殺陣のキレ、力感のある動作、どこをとってもアクションスターとしての輝きが清野菜名にはある。本作でも、作品のほぼ軸となっているが、彼女主演の現代アクションも見てみたいと思わせる。
全編戦闘シーンということで、前作で活躍した嬴政(えいせい)役の吉沢亮、河了貂(かりょうてん)役の橋本環奈は今作では顔出し程度。本作では魏(ぎ)の呉慶(ごけい)に扮した小澤征悦と秦(しん)の麃公(ひょうこう)役の豊川悦司の容姿対決が迫力十分、それぞれ大将軍のイメージに徹して楽しい。
際限なく戦いに惹きこまれていくうちに、本作にも続きがあるような展開となる。シリーズ化されて信の武勇伝がどこまで続くのか。ファンには応えられないところだろう。一見に値する仕上がりである。