『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』は世界中で愛されるウサギが弾けた、痛快武勇伝!

『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』
6月25日(金)より、TOHOシネマズ日比谷、新宿バルト9、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:https://www.peterrabbit-movie.jp/


 ウサギのキャラクターといえば、カートゥーンではバックスバニー、童話のなかではモフモフ感に満ちてキュートなピーターラビットがまず頭に浮かぶ。ピーターラビットは、1902年にビアトリクス・ポターが生み出した「ピーターラビットのおはなし」に登場して以来、現在に至るまで人気は衰えることなく、誰もが知っている“愛され”キャラクターとなっている。

 ピーターをはじめ、愛らしい動物たちが湖水地方の自然のなかで躍動するお話は世界中で読み継がれてきたが、イメージを損なうことを恐れて映画化が躊躇されてきた。その難事に挑んだのがANNIE/アニー』の監督として知られるウィル・グラックだった。

 彼は原作を出版するフレデリック・ウォーン社と協力し、脚本家のロブ・ライバーとともに原案を練りこみ、原作のエッセンスを盛り込みながら、現代を舞台にした脚本に仕上げた。肝心の映像に関しては、CGIの技術の高さで知られるアニマル・ロジック社が最先端の技術で、ポターのお話に登場するキャラクターが総出演する世界を構築してみせた。

 この作品は公開されるや、英国を中心にスマッシュヒット。ファミリーピクチャーとして好意的な評価がなされた。こうなると続編が生まれるのは必定。第1作よりもアクション要素を盛り込んでスケールアップした本作が生まれることになった。

 前作と同じくウィル・グラックが再びストーリーから挑み、『アントマン&ワスプ』のストーリー・コンサルタントとしての働きが注目されたパトリック・バーリーと組んで、アクション趣向満点の脚本に仕上げた。第1作の湖水地方の農場中心の展開から、舞台を広げ、いうなればピーターのアイデンティティ探しの成長物語に仕立てている。

 出演者は『ANNIE/アニー』のローズ・バーンに『ブルックリン』や『レヴェナント:蘇えりし者』のドーナル・グリーソン。ふたりとも前作に引き続き弾けた演技を繰り広げる。さらに『大統領の執事の涙』のデヴィッド・オイェロウォが加わって、動物たちの暴れっぷりに右往左往する趣向。

 声の出演も、テレビショーの司会で知られるジェームズ・コーデンが起用されたのをはじめ、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』のマーゴット・ロビー、『TENET テネット』のエリザベス・デビッキ、テレビシリーズ「ウォーキング・デッド」のレニー・ジェームズなど、気になる顔ぶれが結集している。

 ピーターラビットの大好きな画家のビアが隣の農園に越してきたトーマスとめでたく結婚となった。仲間たちと笑顔で祝いながらピーターの内心は複雑だった。

 トーマスは保護者面して口うるささを増し、居心地がますますよくない。しかもビアの絵本をベストセラーにしたいと金儲け主義の出版業者まで現れる。ビアもすっかりその気になって、農園などそっちのけ。

 嫌気がさしたピーターは、湖水地方を離れて都会に向かって自分探しをはじめる。そこで出会ったのが父の仲間だったというバーナバス。彼と行動をともにし、ワルの修業を始める。バーナバスの狙いはファーマーズ・マーケットの大規模なドライフルーツ強奪計画。ピーターは農園の仲間たちにも声をかけるが、事態は思わぬ展開をみせていく――。

 ぬいぐるみ然としたピーターたちが画面狭しと躍動する。可愛いだけではなく、悪態もつくし、悪戯もし放題。それでも可愛さが画面に横溢する。本作の魅力もここに尽きる。前作ほどミュージカル趣向はないが、それでもピーターの行動にポップな曲がかぶさる。とことんキャラクターの魅力で貫いた潔さを評価したくなるのだ。

 本作もまたコロナ禍によって公開が延期され、ようやくのお目見えとなった。ただ本作は時期で色褪せることはない。躍動感に溢れたピーターや動物たちの暴れっぷりは文句なしに痛快だし、嬉しくなる。

 ウィル・グラックはピーターを農園から他の世界に広げて冒険することで、成長を促す。農園での生活の幸せを骨身に沁みて実感させるのだ。そこには口うるさいトーマスとの和解が含まれ、成功を勘違いしたビアの姿も描かれる。予定調和といえばそれまでだが、間違いなく幸せになる結末が待ち受けている。

 ファミリーピクチャーはこうでなくてはいけない。楽しく見終わって、余韻も爽やか。こういう先の見えない時期なればこそ、本作の存在は貴重だ。