アメリカ映画界が日本の怪獣映画を最新の特撮技術を駆使してアメリカ映画としてスクリーンに蘇らせる。理屈抜きのアクション、破壊しつくす凄まじいスペクタクル。息つく暇もないまま最後まで疾走する。
世界市場をリードするアメリカ映画界ならではの剛腕である。まして生み出された作品は、観客を満足させるパワーに満ちているのだから、脱帽して鑑賞するしかない。
本作は、ワーナー・ブラザースとレジェンダリー・ピクチャーズ製作の怪獣映画を同一の世界観に仕立て、クロスオーバーさせる“モンスターバース”シリーズの最新作である。
2014年の『GODZILLA ゴジラ』からはじまり、『キングコング: 髑髏島の巨神』(2017年)、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)と連なり、本作で第4弾となる。本作の魅力はタイトルそのまま、なんと言ってもゴジラとキングコングという二大巨獣が相まみえるという、怪獣ファンでなくとも食指を伸ばしたくなる趣向にある。まったくキャラクターの異なる二大怪獣がどのように出会い、なぜ戦うのか。残念ながら、コロナ禍によって公開が伸びたが、作品のパワーはいささかも衰えていなかった。問答無用のスピードで見せ場の綴れ織り。ただただ画面に釘付けとなるばかりだ。
今や地球は怪獣たちの戦いによって壊滅的な被害を受けてしまった。特務機関モナークは、巨大怪獣たちの故郷「ルーツ」の手がかりを探していた。
そうしたなかでゴジラが深海の暗闇から姿を現し、フロリダにあるハイテク企業エイペックス社を襲撃、世界を再び危機へと陥れる。
モナークとエイペックスは対抗措置として、ネイサン・リンド博士やアイリーン・アンドリュース博士のチームで、コングを髑髏島から連れ出し、怪獣のルーツとなる場所を探ろうとする。チームには故郷を求めるコングと唯一心を通わせる少女ジアも参加していた。
一方で、ゴジラを信じて真意を探ろうとするマディソンと級友のジョシュ、エイペックスの陰謀説を唱えるバーニーはゴジラの痕跡を追った。
怪獣を取り巻く人間たちの思惑が錯綜していく。ゴジラとコング、彼らは人類の味方か、人類の脅威か。自然界最強の力の衝突する、地球の存亡を委ねた壮大な戦いが始まった――。
いかに効果的な見せ場を生み出すかに知恵を絞るべく、原案段階から『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』などで知られるテリー・ロッシオ、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の監督マイケル・ドハティと脚本のザック・シールズが参加して、アイデアを出し合ったという。最終的に脚本に仕上げたのは『マイティ・ソー バトルロイヤル』のエリック・ピアソンと『キングコング:髑髏島の巨神』のマックス・ボレンスタイン。シリーズとしてのつながりを持たせつつ、見せ場を散りばめつつ、一気呵成のクライマックスに転じていく。
監督のアダム・ウィンガードは『サプライズ』や『ブレア・ウィッチ』などのホラー、スリラーで注目を集めてきた。本作ではとにかくインパクト主義。ゴジラとコングそれぞれの個性を明確に打ち出しつつ、人間の思惑を散りばめていく。怪獣たちの破壊力よりも恐ろしいのが人間というメッセージは、最後に現れるあっと驚く破壊のキャラクターに結実する。ここまでサービス満点でいいのかという盛りだくさんの趣向だが、詳細を書けば興を殺ぐ。見てのお楽しみとしておこう。
出演者は『ターザン:REBORN』のアレクサンダー・スカルスガルドに『それでも恋するバルセロナ』のレベッカ・ホール。さらにNetflixのテレビシリーズ「ストレンジャー・シングス」のミリー・ボビー・ブラウンも加わるフレッシュな顔合わせ。日本から小栗旬も参加しているが、もう少し魅力的なキャラクターを演じさせたかったかな。
もっとも主役はあくまでもゴジラとコング。何を行動原理にしているのか不明のゴジラに、少女とコミュニケーションが図れるコング。両者の対照の妙が本作のいちばんのみどころである。
これから夏に向かって、派手に暴れまくるスペクタクルが最適。アメリカ映画らしく壮大にぶち壊してくれる本作をまずはお勧めだ。