『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』は1996年大ヒットSFパニック映画、待望の続編!

『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』
7月9日(土)より、TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー
配給:20世紀フォックス映画
©2016 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/idr/

 

 天変地異、地球サイズの災害や大惨事を画面いっぱいに映像化し、それに立ち向かう人々の姿を描いた作品を、昔はパニック映画、現在ではディザスター・ムービーと呼ぶ。

 なかには地球の状況を緻密にシミュレートし、リアルな終末映画に仕立てた作品もあるが、その大半は災害や大惨事を、特撮を駆使して大画面に再現することに注力しつつも、ドラマ部分はシリアスにならない。あくまで、最後は観客が安心できるエンターテインメントに結実させることを本意とする。このジャンルは取り上げる災害、大惨事を、どこまで誇張して描けるかがキイとなる。

 このジャンルの第一人者といえば、まずローランド・エメリッヒを挙げたくなる。

 地球温暖化による異常気象がもたらす大規模自然災害を描いた『デイ・アフター・トゥモロー』、2012年12月21日に地球が滅亡すると記されたマヤ文明歴にヒントを得て、天変地異のつるべうちを綴った『2012』の2作品は日本でも大きな話題を呼び、ヒットを記録した。エメリッヒはどこまでもヴィジュアル・インパクトで勝負しながら、ストーリーに関しては、主人公は決して死なないことをふくめ、観客の期待を裏切らないことを旨としている。どんなに地球が危機的状況にあっても、最後は救いのある結末がもたらされる。テンポ速く、インパクト映像で突き進みつつ、ユーモアを散りばめるなど、怖がらせ、楽しませる。そのさじ加減が抜群なのだ。

 こうしたエメリッヒの作風は1996年に手がけた『インデペンデンス・デイ』から顕著になった。

 この作品は、巨大な未確認飛行物体が世界中の主要都市に飛来し、人類への攻撃を開始。名だたる都市が破壊される阿鼻叫喚のなかで、人類が反撃に転じるというストーリーだ。エメリッヒは、前半部はエイリアンの傍若無人な破壊を迫力いっぱいに描きだし、後半はビル・プルマン演じるホイットモア大統領の名演説を契機に、人類の攻撃を痛快に紡ぐ展開。主役の空軍パイロット、ヒラー中尉を演じたウィル・スミスの人気を世界的なものにしてみせた。全世界で8億1740万ドルという興行収入を挙げたのも、どこまでも楽しめるエンターテインメントに徹したことが要因である。

 それから20年、エメリッヒが本作で勝負をかけてきた。これまで続編をつくったことのない彼にとっては初の試みで、『インデペンデンス・デイ』から20年後の地球に、再びエイリアンが攻撃をかけてくる設定となる。

 エメリッヒにとっても思い入れのある題材とはいえ、『インデペンデンス・デイ』の成功によって同種のエイリアン侵略テーマの作品が増え、生半可のアイデアではアピールしないと踏んだ彼は、とことんグレードアップ。エイリアンの未確認飛行物体の大きさがアメリカ大陸を覆うほど巨大になり、攻撃も都市全体を吸い上げるという荒業を披露する。まさに口をあんぐりさせるヴィジュアル・インパクトのつづれ織りなのだ。

 第1作はエメリッヒとプロデューサーのディーン・デブリンの脚本だったが、本作は『ホワイトハウス・ダウン』に出演したニコラス・ライトと、TV映画『オリンポスの戦い』に出演したジェームズ・A・ウッズという俳優ふたりが原案に参加。脚本には『ゾディアック』のジェームズ・ヴァンダービルトが加わり、まとめあげている。

 出演は『ハンガー・ゲーム』シリーズのリアム・ヘムズワースに『イット・フォローズ』のマイカ・モンローをはじめとする若手俳優たちと、ジェフ・ゴールドブラム、ビル・プルマン、ジャド・ハーシュ、ブレント・スパイナーなどの第1作から引き続きの俳優たち。さらに『アルマゲドン』のウィリアム・フィクナー、『アンチクライスト』のシャルロット・ゲンズブール、中国からアンジェラ・ベイビーなど、多彩な顔ぶれとなっている。

 

 20年前、30億人の犠牲のもとでエイリアンとの戦いに勝利した人類は、エイリアンの技術を吸収して科学が飛躍的に進歩するとともに、国家間の紛争がなくなっていた。

 アメリカで初の女性大統領が国を治めていた2016年7月、アフリカに残したエイリアンの飛行物体が突然に覚醒。20年前にエイリアン撃退の功労者で、今やESD(地球宇宙防衛)部長となったレヴィンソンの眼前で、宇宙に向かってSOS信号を放つ。

 まもなく、人類の月面基地は粉砕され、巨大なエイリアンの軍団は地球を覆い尽くす。レヴィンソンたちが構築した防衛システムは無力化されてしまった。

 こうしたエイリアンの行動を事前に感応していた人々がいた。ホイットモア元大統領をはじめとする一握りの人々は訳の分からない悪夢に苦しめられていた。

 月面基地で勤務していた戦闘機パイロットのジェイクたちがエイリアン攻撃の先頭に立つが、エイリアンの攻撃は想像をはるかに超える、凄まじいものだった――。

 

 描かれる2016年の映像はエイリアン襲来を経験した世界だから、私たちの住む世界とは当然、異なる。人類はエイリアンたちの未確認飛行物体や武器の残骸から最新科学を吸収し、自分たちの技術に反映させているという設定だ。飛行体、武器、防衛システムなど、現実の2016年世界では未だ実現していない技術が次々と登場する。さらにエイリアンという強力な敵に対して人類は生存のために協調せねばならず、紛争が過去20年間、起こらなかったという状況も、いささか性善説、理想主義的ながらありえないことではない。

 エメリッヒ、デブリン、ライト、A・ウッズの4人は、なによりもエイリアン襲来後の人類の20年間の歩みに思いを巡らした。現実とは似て非なる世界。科学が飛躍的に進化した世界が映像化される仕組みだ。ここが見る者を納得させるように造り込んであれば、あとは一気呵成。巨大な飛行物体を駆使するエイリアンの怒涛の波状攻撃をどこまでも派手に映像化していくのみだ。

 これまでになかった迫力映像を追い求め、どこまでもインパクト主義。シンガポールやドバイといったアジアの都市を根こそぎ吸い上げ、ヨーロッパに落とすという荒業など、突っ込みどころ満載ながら、確かに見た目の派手さは申し分ない。エメリッヒの演出はどこまでも派手なスペクタクルと、ユーモアを交えたドラマ部分を織りこむことで、悲惨なイメージを一切排除する。都市の破壊で多くの犠牲者が出るシーンを入れ込みながら、深く立ち入らないのがミソ。あくまでも絵空事の面白さを体験できるエンターテインメントとして、その演出は一貫している。

 

 出演者もヘムズワースが大活躍をするのだが、やはり第1作からのゴールドブラム、プルマンの貫録が勝る。ウィル・スミスは登場しないが、息子がパイロットに設定されているのもご愛嬌。ヘムズワース扮するジェイクと対立関係にある設定となっているのもおかしい。

 以前、映画のなかでインド系に対する配慮がなされた時期があったが、中国に対する目配せには驚かされる。最近のアメリカ映画はキャスティングで必ず中華系俳優が入るが、本作もアンジェラ・ベイビーの起用など、きっちりと中国対策がなされている。アメリカ映画のこうした傾向は、多くの人口を抱え、映画製作に積極的な中国であり続ける限り、ますます顕著なものとなるだろう。

 

 夏にふさわしく、どこまでも破壊の迫力と痛快さで押し切るエメリッヒ世界。映像のパワーでヒットは間違いないか。