『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』はスーパーヒーロー総出演で無条件に楽しいアクション巨編!

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『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』
7月4日(土)より、TOHOシネマズ日劇ほか、 全国ロードショー
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
©Marvel2015 All Rights Reserved.
公式サイト:http://marvel.disney.co.jp/movie/avengers.html

 

 今や日本でもアメリカでも、コミックを原作にした作品が興行チャートを牽引している。とりわけアメリカではマーベルのコミックを映画化した作品が次々とヒットを飛ばしている。
 なかでも、マーベルのヒーローたちを結集させた『アベンジャーズ』は凄い。2012年に公開されるやメガヒットを記録。全世界の興行収入15億1860万ドルを稼ぎ出し、『アバター』や『タイタニック』に続く歴代3位に躍り出ている。なにせアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソーなど、それぞれメインで活躍したキャラクターが一堂に介し、宇宙規模の危機に立ち向かう展開なのだから、ヒットしない方がおかしい。日本でも“日本よ、これが映画だ。”というファナチックなコピーで話題を集め、多くの観客を集めた。この世界的な熱狂に応えるべく登場したのが、本作である。
 すでに全米・カナダ、韓国、中国、ヨーロッパで公開され、現時点で13億6918万ドル超の興行収入をたたき出して、まさに破竹の勢い。今度は“愛を知る――全人類に捧ぐ。”というコピーのもとで、日本での大ヒットを狙っている。
 すべてのキャラクターの魅力、見せ場をきっちりと押さえながら、手に汗を握るストーリーとして成立させる難事を本作でもみごとにクリアしてみせる。なによりも、ヒーローたちの人間的な弱さも描きこむことでドラマとしての深みを持たせ、各ヒーローがそれぞれ戦うことの意味を見いだす過程を綴っていく。まして、本作の敵は人間が生み出した愛のない人工知能。内心の葛藤に打ち勝ち、友情と愛のために立ち上がる過程はヒットも頷けるほど共感度が高い。前作に引き続き脚本・監督を担当したジョス・ウェドンの能力と、彼を支えたプロデューサー、ケヴィン・ファイギに素直に拍手を送りたくなる。
 出演は、アイアンマン役のロバート・ダウニーJr.をはじめ、キャプテン・アメリカに扮したクリス・エヴァンス、ソー役のクリス・ヘムズワース、ブラック・ウィドウを演じたスカーレット・ヨハンセン、ハル役のクのマーク・ラファロ、ホークアイ役のジェレミー・レナー、さらにニック・フューリーのサミュエル・L・ジャクソンまで、レギュラー陣は健在。ここにウルトロン役にジェームズ・スペイダー、スカーレット・ウィッチ(ワンダ)役のエリザベス・オルセン、クィックシルバー(ピエトロ)役のアーロン・テイラー=ジョンソン、ファルコン役のアンソニー・マッキー、ウォーマシンのドン・チードル。さらにはポール・ベタニーまでが名を連ねる豪華版である。
 アベンジャーズが、今回、戦うのはなんとアベンジャーズのメンバー、アイアンマンが平和を生み出すべくつくりだした人工知能ウルトロン。論理的に人類をみすえ、地球に害をなす人類の最大の敵となって襲いかかる。
 個性豊かな俳優陣をこれだけ集めたら、交通整理だけでも大変だが、ウェドンの語り口はまことに過不足がない。南アフリカ・ヨハネスブルグ、イタリアの特別自治州ヴァッレ・ダオスタ、韓国のソウルにロケーションを敢行し、凄まじいスケールのスペクタクルを映像に焼き付けている。

 ヒーローが結集したアベンジャーズは悪の秘密組織ヒドラの研究施設を急襲した。研究所には彼らに対抗すべく育まれた超能力の双子、ワンダとピエトロがいて、彼らを苦しめる。特に人の心に入り込む能力を有するワンダは、アベンジャーズが全滅する未来の幻影をアイアンマンことトニー・スタークの心に刷り込む。
 双子は逃亡したものの、アベンジャーズはかつて彼らを苦しめた“ロキの杖”の先端の石を奪取する。
 スタークは幻影を拭い去れず、自分たちが倒れた後でも脅威に立ち向かえる状況を生み出すべく、人工知能による平和維持システム“ウルトロン計画”を秘密裏に実行に移す。 
 杖の石を使い、ヒドラの技術とスタークのテクノロジーを駆使した計画は予想を超える結果をもたらす。知能を発達させたウルトロンは地球の平和を維持するためには人類を抹殺するという結論に達し、肉体をつくりあげ、スタークのもとを去る。
 ウルトロンはヒドラの技術を使って自分の肉体を強化。さらにワンダとピエトロを仲間に引き入れる。
 一方、アベンジャーズのメンバーたちは、ワンダの能力によって封印していた過去や恐ろしい幻影に苦しめられることになる。科学者ブルース・バナーは幻影に錯乱し、制御不能の超人ハルクとなる。冷静なブラック・ウィドウはおぞましい過去に囚われ、ソーは自らが招く惨劇の幻影に苦しむ。
 それでもアベンジャーズはウルトロンが仕掛ける人類抹殺計画を阻止するべく、立ち上がる。自分たちの危険をものともせずにひたすら行動する。そしてグループに新たなメンバーが加わることにもなった――。

 未来の平和と安全のために開発した人工知能が牙をむく設定は、“人間の至らなさを自覚しないと想定外の事態が起こりうる”という、現実にも起こっている事実をきっちり知らしめてくれる。マーベルの映画作品はエンターテインメントの体裁のなかで、おとなの鑑賞に堪えるテーマを常に内包しているが、この作品も例外ではない。この姿勢はマーベル作品の映画化を推進するプロデューサー・ファイギの、ストーリー性と確固たるテーマを構築するポリシーのなせる技だ。
 次から次へと圧巻の見せ場を散りばめつつ、本作ではむしろドラマ部分にいっそう注力している。ヒーロー、ヒロインたちが封印している弱点に否応もなく向き合う設定のもとで、それぞれが人間的な感情を浮き彫りにしていく。ヒーローは単に強いだけでなく、人間的な欠点があるからこそ共感度も高まる寸法だ。ダウニーJr.をはじめ、ヒーローを演じる俳優たちがいずれも芸達者で、ウェドンの意を汲んでヒーローたちの心の揺らぎがみごとに表現している。
 まして本作ではコピーが語るごとく愛が核となる。アベンジャーズのヒーローたちのなかで愛が芽生える展開。メンバーのひとりの思わぬ家庭生活も披露されるなど、みる者は予想を超えたストーリーに惹きこまれるばかりだ。
 しかも、最後には次につながるブリッジもちゃんと用意されている。なるほど新たなメンバーがどのように活躍するか、次作が楽しみになるし、爆発的にヒットする理由も分かる。シリーズはヒットを重ねる限り、つくられていくだろう。新作はさらなるアイデア、趣向が求められるわけで、描かれる世界はどんどんエスカレートしていく。ファンにとっては楽しみな限りである。

 スケールの大きさ、アクションの迫力、痛快さにおいて群を抜いた仕上がり。個性に溢れたヒーローたちの競演を眺めているだけも楽しい。今夏にふさわしい作品である。