『プロセキューター』はドニー・イェン監督・主演の、アクションも網羅した法廷サスペンス。

9月26日(金)より、新宿ピカデリー 、グランドシネマサンシャイン 池袋、109シネマズ木場ほか全国ロードショー
配給:ツイン
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公式サイト:prosecutor-movie.com

 いつみても香港映画のアクションはやはり群を抜いている。現在、最も活躍しているスターはドニー・イェンということになろうか。1963年生まれの唯一無二の武術を極めたスターである。

 生まれたのは広東州広州、2歳の時に香港に渡るものの、11歳でアメリカ・ボストンに移住。母が武術家だったことから手ほどきを受ける。ブルース・リーをアイドルとしていたが、素行が問題となり北京の北京市業余体育学校に送り込まれる。

 就学後に香港でユエン・ウーピンと知己を得て、スタントマンから香港映画界入り。じわじわと存在が知られるようになるが、香港映画界が衰退するにしたがい、アクションスターとしての地位を確立したのは2000年代。『イップマン』シリーズの大ヒット、その存在は欧米にも知られ、『ジョン・ウィック コンセクエンス』、『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』などでアクションの切れを広く知らしめた。

 そのドニー・イェンが監督・主演・製作を引き受け、巨大な陰謀に立ち向かう検事の姿を描いた法廷アクションが本作である。

 2016年に実際に起きた麻薬密売事件を下敷きに、『イップマン』シリーズの脚本家として知られるエドモンド・ウォンがチャン・チュンホとともにストーリー化。アクションもさることながら、サスペンスたっぷりの本格的な法廷劇に仕上げた。

 さらに『はたらく細胞』の大内貴仁をアクション監督に抜擢し、オープニングからスタイリッシュなアクションを披露するなど、ドニー・イェンの魅力を炸裂させている。香港で4週連続の興行収入No.1のヒットを記録したのも頷ける。

 共演も『異邦人たち』のジュリアン・チェンに加え、『ミスター・ブー』で一世を風靡した名コメディアン、マイケル・ホイ、さらに『ザ・ミッション 非情の掟』のフランシス・ン、『イップマン』シリーズのケント・チョン、キン・フーの『忠烈図』にも顔を出していたベテラン、ラウ・コン、そして若手の注目株メイソン・フォンまで、ドニー・イェンの眼鏡にかなった多彩な顔ぶれである。

 壮絶な銃撃戦の果て、苦労して捕えた武装集団の首謀者を、証拠不十分で有罪にできない。警部のフォクは業を煮やして警察を辞職した。

 7年後、検事となったフォクは裁判で正義を貫こうとする。手がけた事件で貧しい青年がコカイン密輸で有罪を認めたことに違和感を抱く。

 調査を進めるうちに弁護側に黒社会との癒着があり、証言の誘導があったことが判明する。フォクは検察内部の圧力と対抗しながら陰謀を暴こうとするが――。

 冒頭に凄まじいアクション、スタントを用意して、アクション・ファンを満足させておいて、メインのストーリーはどこまでも正攻法の法廷サスペンスで勝負する。

 主人公が検察内部の軋轢に負けることなく、どこまでも正義を貫こうとする姿勢に好感を覚える。ドニー・イェンはアクションに逃げることなく、理詰めでサスペンスを盛り上げる。なるほど、この姿勢が評価されて香港で大ヒットを記録したのか。アメリカをふくめ、各国の撮影に参加した経験が平易で無駄のないストーリーテリングに結実している。

 ドニー・イェンはむしろ控えめで、キャラクターになり切っているし、共演陣の巧みなサポートも見事の一語だ。

 香港映画らしい情もこめて、エンターテインメントにひた走る。ドニー・イェンにひたすらエールを送りたい。