『スタントマン 武替道』は往年の香港アクションの魂を称えた感涙必至の熱いヒューマンドラマ!

『スタントマン 武替道』
7月25日(金)より、新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国ロードショー
配給:ツイン
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公式サイト:https://stuntman-movie.com/

 1997年に中国本土に返還されて以降、香港はたちまちのうちに自由な個性を失い、中国の画一主義に組み込まれていった。自由闊達な空気はどこに行ってしまったのか。民主化運動も抑え込まれ、本土の許可がなければ何もできない状態に追い込まれている。

 中国政府の意向に従うことは全産業に浸透している。かつてあれほどのパワーを誇っていた香港映画も例外ではない。毒を秘めた香港ノワールやアクションは影を潜め、能天気な勧善懲悪、空疎な歴史大作、愛国アクションにとって替わられつつある。製作費を握っているのが本土に近い存在とあっては、作り手は手も足も出ない。

 ただ、過去の香港の栄光を顧みた作品は大目に見られるようだ。とりわけ昨年、大ヒットした『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』はかつての香港の魔窟、九龍城砦をセットでつくりあげ、往年の香港アクション、スタントをくっきりと再現した。全世界で絶賛され、大ヒットを記録したのは記憶に新しい。全編、肉体を駆使したアクション、スタントで彩り、ひさしぶりにスリリングな殺陣を満喫することができた。

 本作は過去の香港映画、とりわけアクション映画にオマージュをささげるべく製作された。着目したのはスタントマン。アクション、スタントを際立たせるべく危険を顧みなかった男たちに捧げた香港映画讃歌だ。

 原作、監督、編集を手掛けるのは、幼い頃から香港アクションのファンで、2007年の『ツインズ・ミッション』で映画デビューを果たし、スタントマンと俳優の傍ら、短編映画で演出の腕を磨いたアルバート・レオン&ハーバート・レオンの双子の兄弟。本作で長編監督デビューを果たした。

 脚本は『燈火(ネオン)は消えず』(2024)の監督、脚本を手掛けたアナスタシア・ツァンと『正義迴廊』(22)のオリヴァー・イップ。1980年代に隆盛を極めた香港アクションの逸話を取り込みながら、撮影現場の熱をしっかりと画面に焼き付けている。

出演は『燃えよドラゴン』をはじめ『ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌』(1992)などに出演した香港映画界のレジェンド、トン・ワイ。1980 年代中盤以降はアクション監督、武術指導家として知られ、『男たちの挽歌』や『ブレイド/刀』(95)、『アクシデンタル・スパイ』などなど、数多くの作品に才能を披露している。その彼がかつて活躍したアクション監督を演じるというのだから興味は尽きない。

 共演はテレンス・ラウにフィリップ・ン。『燈火(ネオン)は消えず』のセシリア・チョイなど実力派俳優が結集している。

 1980 年代に活動したアクション監督サム・リーは、撮影中にスタントマンが半身不随の大事故を起こしたことから業界を追われて、今は整骨院で生計を立てている。

そんな彼に馴染みの老監督から、新作のアクション監督の依頼が入る。

サムは渋々それを承諾し、最近知り合った若く熱意のあるスタントマン、レイ・サイロンを助手に起用するが、撮影は開始直後からトラブル続き。

 主演はサムの元弟子で、今や人気を誇るリョン・チーワイだったが、ワイはリアルを追及するサムのスタイルを認めず、自分のチームで現代風のアクションを設計しようと衝突を繰り返す。

 サムは銀行強盗シーンで無許可のゲリラ撮影を強行し、通行人に怪我をさせてしまう。果たして、映画は無事完成できるのか――。

 リアルさを追求する一徹なアクション監督の仕事ぶりを再現しながら。映画にかける情熱をくっきり浮かび上がらせる。レオン兄弟がいかに香港映画に魅せられていたかが伺えると同時に、職人気質を称えていく。真剣になるとやりすぎてしまうが、それでも完成した作品は素晴らしい。かつての香港映画にはそうした魅力に溢れていたと語りかける。

 何より嬉しいのは往年の香港アクションの名シーンが再現されていることだ。『ポリス・ストーリー/香港国際警察』のエスカレーターを活かしたモールでの格闘、『省港旗兵・ 九龍の獅子/クーロンズ・ソルジャー』のゲリラ撮影、『ファースト・ミッション』の廃ビルからの落下スタントなど、香港映画ファンには応えられない。

 かつての香港映画ファンは胸が熱くなるはず。ジャッキー・チェンやサモ・ハンが輝いていたあの頃、せめて映画のなかだけでも戻ってきてほしいものだ。