
2025年1月3日(金)より丸の内TOEI、新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン池袋ほかで全国ロードショー
配給:クロックワークス
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公式サイト:https://klockworx-v.com/bkp/
どのような趣向、ストーリーであっても、ひたすら強い――。
並みいるアクションスターのなかでも、ジェイソン・ステイサムが演じるキャラクターに求められるのは明快さだ。とにかく敵が巨大鮫だろうと、暗黒組織だろうと、秘密組織だろうと、いささかも頓着せずにただ痛快に暴れまわる。目的を遂行するために手段を選ばない。そのシンプルな潔さがステイサムの演じるキャラクターの特徴だ(同じような存在に韓国のマ・ドンソクがいる)。
本作が凄いのはステイサムを輝かせるスタッフが揃っていることだ。まず脚本はカルト作『リベリオン』を監督し、『ソルト』などでツイストしたストーリーとアクションの融合を得意とするカート・ウィマーが担当。監督には『トレーニング デイ』で脚本家として注目され『エンド・オブ・ウォッチ』や『フューリー』などのタイトでハードボイルな語り口が評価されたデヴィッド・エアーが起用された。両者ともアクションに対しては一家言持つ存在だけに、ステイサムの個性を活かしながらストレートにヒロイズムを際立たせてみせる。
ステイサムの脇を支えるべく共演者も豪華な布陣を揃えてある。『ハンガー・ゲーム』3部作で注目され、『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』では主演を務めたジョシュ・ハッチャーソンを筆頭に。『運命の逆転』でアカデミー主演男優賞を獲得したジェレミー・アイアンズ、『ブラックライト』のエミー・レイヴァ―=ランプマン。さらに『スリーパーズ』のミニー・ドライヴァーまで顔を出す。
アメリカの片田舎でクレイは養蜂業を営んでいる。元教師のエロイーズの農場の一隅を借りて、はちみつを採取。世捨て人のようにひっそり暮らしていた。
その生活は突然に終わりを告げる。エロイーズが詐欺にあい、失意のあまり自殺してしまったのだ。
事情を聞かされ、憤怒に燃えたクレイは詐欺を働いた組織を調べ上げる。クレイは世界最強の秘密組織“ビーキーパー”の元エージェントだった。
詐欺集団もアメリカの政界、経済界に食い込んでいた。刃向かう者を殲滅するメンバーを揃えている。だがクレイはいささかも躊躇しない。悪をつぶすために問答無用の行動力で敵のアジトをつぶし、悪の権化を血祭りにあげていく――。
ウィマーのストーリーは一気呵成の疾走感で敵を明らかにし、その上で見せ場の綴れ織りに終始する。詐欺組織がアメリカの特権階級と結びついていることを明らかにしているから、クレイの阿修羅のような行動が効いてくる仕掛けだ。まことクレイの行動は庶民の代弁者。分断されたアメリカ社会の庶民側の恨みを一気に晴らしてくれるわけだ。
エアーの演出は、あくまでもアクションを際立たせるために明快そのもの。ステイサムの強さをアピールし、痛快さを焼き付ける。どんなしがらみもはねのけて、悪を成敗する清々しさを前面に押し出していく。往年の東映時代劇(昭和30年代)のごとく、悪い奴らをバッタバッタと打ち倒すヒーローは見ていてスカッとする。
散りばめられたアクションの趣向はいかにもウィマー、エアーらしく手が込んでいて、なによりステイサムのハードボイルドな無表情にマッチしている。ここまで強いヒーローを演じ続けるのだから、最後の最後まで痛快さを極めてもらいたいと思う。
正月、何も考えずに見るのに最適の1本と断言しよう。