『ゴールデンカムイ』は北海道を舞台にした、大ヒットを狙う壮烈アクション!

『ゴールデンカムイ』
1月19日(金)より全国劇場でロードショー
配給:東宝
©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会
公式サイト:https://kamuy-movie.com/

 もはや人気コミックを原作にすることが映画のヒットの前提条件になっているかのようだ。ヒットを重ねている『キングダム』の例を挙げるまでもない。認知度の高さが興行を大きく左右するのは自明のことだ。

 そのセオリーを熟知しているかのように、注目作品を輩出し続けているプロデューサーがCREDEUSの松橋真三だ。『るろうに剣心』のアソシエートプロデューサーに名を連ねて以来、『キングダム』シリーズや『沈黙の艦隊』などを送り出してきた。

 本作は満を持して送り出した、スケールの大きなアクション作品である。「週刊ヤングジャンプ」誌に掲載され、たちまち人気を博した野田サトルによるコミックをもとに、巨額の制作費をかけて実現した企画だ。

 時代が日露戦争終結直後、場所が雪深い未開の地、北海道とあって、映像化は困難と目されていたが、リサーチに時間をかけ、予算と知恵を絞って実現させたという。

 ただ原作が膨大なので、シリーズ化は必須。本作の成功の如何がシリーズに結びつくか否かを制する。どのような形で滑り出し、どこまで語るかの匙加減が大事だ。脚本を任されたのは『キングダム』シリーズの成功が記憶に新しい黒岩勉。冒頭に日露戦争の激戦地二百三高地のバトルであっと言わせ、一気呵成に明治時代に見る者を誘う。ここでのアクションの迫力が見る者を惹きこむ。

 主人公は戦場で「不死身の杉元」の異名を謳われた元陸軍兵、杉元佐一。戦争終結後、彼は流れ流れて北海道の原野を彷徨うところから本編は始まる。

 厳しい気候の雪原のなかで杉元は砂金を求めていたが、アイヌ民族の莫大な金塊が隠されていることを知る。その在処は、網走刑務所を脱獄した24人の囚人の刺青に記されているらしい。彼はアイヌの少女アシリパと出会う。大地で生き抜く知識と狩猟技術に優れたアシリパと無類の戦闘力を誇る杉元は手を組み、北海道征服を目論む帝国陸軍“第七師団”、戦死したはずの新撰組・土方歳三などと戦うことになる――。

 本編に入ってからも、アクション主導の展開はいささかも変わらない。極寒の雪原のバトルに終始し、リアルな殺陣が繰り広げられていく。監督の久保茂昭はMV出身。『HIGH&LOW THE MOVIE』シリーズを手がけ、ダイナミックなアクションには定評がある。ここでもリアルでインパクトのある殺陣を駆使して、迫力を盛り上げてみせる。多少アクションに偏り過ぎたきらいはあるものの、観客を引っ張る力はさすがのインパクトだ。

 話題はなによりも出演者のキャラクター造型ぶりだ。杉元に扮した山崎賢人は顔に傷跡を施した容貌。軍帽をかぶって雪原を疾走する姿は『キングダム』シリーズで確立したアクション技術が十全に活かされている。アイヌ少女に扮した山田杏奈も雪原で懸命にアクションをこなしてみせる。

 凄まじいのは共演陣の扮装ぶりだ。スナイパーに扮した真栄田郷敦や脱獄名人役の矢本悠馬、双子役をひとりで演じた柳俊太郎に加え、第七師団を率いる中尉役の玉木宏、土方歳三役の舘ひろしに至るまで、悪ノリといいたくなるほどの際立ったメイク、扮装で勝負をかけている。一目見たら強烈に焼き付く点では、キャラクターはまことに分かり易い。

 原作は分からないが、本作ではウエスタンのルーティンに踏襲している。アメリカ南北戦争の後に先住民との間に絆が生まれるパターンである。ここでは雪山のはざまに建つアイヌ部落とアイヌの娘が核となる。

 アクション、スタントを含めヴィジュアル・インパクトは申し分がない。ただ本作はまだ滑り出し。これからどのような展開となるのか想像できない。当然、シリーズを念頭に構成しているのだろうが、何とももどかしい。次作を期待するばかりだ。