『イコライザー THE FINAL』は問答無用、痛快極まるアクション快作!

『イコライザー THE FINAL』
10月6日(金)より、TOHOシネマズ日比谷、丸の内ピカデリー新宿バルト9ほか全国の劇場でロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:https://www.equalizer.jp/

 無辜の民を苦しめる悪に対して仮借ない鉄槌を下す。いわゆる痛快アクションの王道なれど、近年はヒーローをキャラクタライズするべく、いろいろな負荷を加味することで差別化を図ろうとしてきた。勢いキャラクターが複雑化し明快でなくなる。悪を駆逐する爽快さを貫き、単純に快哉を叫ぶ作品は少なくなってしまった。

 所詮、エンターテインメントなのだから、細かい理屈など不要なのに、昨今はコンプライアンス順守を謳う製作者も増えて、やたらと理屈をつけたがるようになった。

 そうした風潮に反して、あえてシンプルに面白さを追求しているのが本シリーズである。本作はシリーズとしては第3弾にあたるが、なにより主人公のロバート・マッコールのキャラクターがいい。

 2014年の第1作ではマッコールは孤独なホームセンターの従業員として登場。孤独な日々を送っていたが、少女娼婦を痛めつけるロシアン・マフィアに激高し、瞬時に殲滅する。それもホームセンターの商品を凶器に変えるスキルの高さを披露し、かつて凄腕の特殊工作員であったことが明らかになる。こいつの凄さはアメリカに送り込まれたロシアン・マフィアのみならず、本国の組織も滅亡に追いやる徹底ぶりに表れていた。

 続く第2弾は2018年に発表されたが、ここではマッコールはタクシー運転手になっている。すでに善良な庶民の苦境に助けの手を差し伸べているが、唯一心を許した特殊工作員時代の女性上司が殺されたことで、かつての仲間と死闘を演じることになる。

 そして5年ぶり、待望の本作である。ここではマッコールはイタリアのシチリアでミッションを遂行中、負傷してしまう。行き着いた田舎町で治療を受けた彼は、素朴な人情に触れて暮らすことになる。

 だが、ここにも悪がはびこっていた。町を牛耳るマフィア。マッコールは街の人々を守るため、敢然と牙をむく。

 風光明媚なイタリアの街を背景に、マッコールが桁外れの暴力スキルでマフィアを上回る展開。これまでの作品で彼の実力は判っているのだが、期待を裏切らないアクションを展開してくれる。とにかく強い、安心してみていられる。いかに悪がすごもうと、カンタンに片づけるヒロイズム。このシリーズで抹殺されるのは悪の権化みたいな連中であり、組織なので、抹殺されることにいささかも良心は痛まない。

 脚本にあたったのは『16ブロック』や『メカニック』、『エクスペンダブルズ2』などの脚本を手がけたリチャード・ウェンクだからツボを心得ている。悪党どもの乱暴狼藉を前にふってからヒーローの戦いを正当化する。シンプルだが効果的な作劇である。

 監督のアントワーン・フークアはチョウ・ユンファのアメリカ上陸作『リプレイスメント・キラー』で映画デビュー。とりわけデンゼル・ワシントンとのコラボレーションでメジャーの道をひた走ってきた。本シリーズもワシントンとの共同作業が功を奏している。リアルでハードボイルドなフークアの語り口が、シンプルなストーリーのなかでサスペンスを高め、見る者に痛快な余韻をもたらしている。

 もちろん、本作はマッコールを演じるワシントンの存在が圧倒的に大きい。『グローリー』とトレーニング デイ』でアカデミー賞を手にした彼が、マッコールというキャラクターに真実味を持たせている。アクションに関しても、殺陣に迫力がありキレがある。本シリーズ以外にも『トレーニング デイ』や『七人の侍』のリメイク『マグニフィセント・セブン』でフークア作品で個性を発揮しているので、呼吸もピッタリ。実力を存分に披露している。

 理屈抜きに楽しめるアクション作品。これでファイナルにはなってほしくはない。続編を希望する。