『ジョン・ウィック:コンセクエンス』はただただアクションの迫力でつなぐ、キアヌ・リーヴスの当たり役!

『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
9月22日(金)より、TOHOシネマズ日比谷、新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国ロードショー
配給:ポニーキャニオン
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公式サイト:http://johnwick.jp/ Keanu Reeves as John Wick in John Wick 4. Photo Credit: Murray Close

『スピード』や『マトリックス』シリーズに主演したことが幸いして、キアヌ・リーヴスにはアクション・ヒーローのイメージが定着してしまった。アジアの血が入ったエキゾチックな風貌ながら、大柄でキビキビした体躯ではない。決して動作にキレがあるようにはみえないが、懸命に殺陣をこなす姿には好感を覚え、応援したくなる。健気に敵と戦うリアルさがいいのだ。

 そしてキアヌの近年の当たり役といえば、このジョン・ウィックに止めを刺す。

 愛犬の仇討ちから幕を開けて、作品を重ねるごとに主人公がかつて所属していた裏社会を支配する犯罪組織との戦いに広がっていく。シリーズは予想を超える展開、毎回、織り込まれている問答無用のアクションの綴れ織りが売りだ。

 この最新作ではアクション、スタントのこだわりにさらに磨きがかかる。世界各国で銃撃戦、肉弾戦が繰り広げられ、クライマックスに疾走する展開なのだが、一つ一つの戦いがディテールも細かく描かれる。シリーズをすべて手掛けた監督チャド・スタエルスキがアクション/スタントコーディネーター出身であることも影響している。それぞれの殺陣に半端なく力がこもっている。

 シリーズがヒットして自信をつけたか、前作ではアクション俳優として名高いマーク・ダカスコスに加えて『ザ・レイド』などで知られるインドネシア武道の達人ヤヤン・ルヒアンとチェチェップ・アリフ・ラフマンとの凄まじい殺陣を用意した。

 そして本作では香港アクションのレジェンド、ドニー・イェン、日本からは真田広之を迎えてアクションをさらに際立たせる。上映時間が169分と長くなったのも、ひとえにアクション、スタントの細部まで描きたかったから。キアヌとスタエルスキはよほど気が合うのか、ともに製作にも絡んでアクション主導を貫いている。

 裏社会の全てを支配する組織:主席連合の粛清を逃れたジョン・ウィックは組織に対して敢然と戦いを始める。主席連合よりウィック粛清の命を受けたグラモン侯爵は、盲目の武術の達人、ケインを雇い、ウィック殺害を命じる。

 古い友人同士のケインとウィックながら、組織の命令には従うしかない。ケインはウィックを追って大阪に向かい、旧友シマヅのもとに身を寄せていたウィックに襲い掛かる。

 なんとか脱出したウィックはグラモンを標的に策を講じ、彼に決闘を申し込むべく、ヨーロッパ中を戦いの場に変えていく――。

 ケインに扮したドニー・イェンを向こうに回して戦うわけだが、盲目のハンデを与えられていても、まるで動きが違う。イェンの殺陣のみごとさには脱帽するばかり。スタエルスキはひたすらアクションのディテールを追い、アクションシーンの長さなどまったく頓着していない。ただドニー・イェンが参加したこと、本物の殺陣を映像化できたことに喜びを募らせている感じだ。そののめり込んだような監督の演出ぶりに好感を覚える。これもヒットシリーズになったおかげだ。

 もちろんキアヌもほぼ全編、アクションとスタントに挑みっぱなし。ほれぼれするような戦いぶりではないが、懸命に戦い抜く姿に拍手を贈りたくなる。キアヌのヒロイズムは泥臭いが、見る者を惹きつけずにはおかない。

 ダークでぶっ飛んだアクション・シリーズ。これで幕を引くことなく、まだまだ続けてもらいたいものだが。まずは一見をお勧めしたい。