作家でもあり映画監督の経験のあるマイケル・クライトンと、ヒットメーカーのスティーヴン・スピルバーグが協力した『ジュラシック・パーク』は1993年に公開されるや、世界的なヒットを挙げた。スピルバーグの演出力とクライトンのアイデアの賜物。クライトンはデヴィッド・コープとともに脚本にも参画して作品を盛り上げた。
スピルバーグは遊園地のアトラクションさながら、単純に怖くて面白い世界を構築して成功に導いた。
当然ながら、『ジュラシック・パーク』はシリーズ化され、1997年に同じくスピルバーグ監督で『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』、2001年にはジョー・ジョンストン監督に変わって『ジュラシック・パークⅢ』が製作された。
それから長い休眠期間に入り、シリーズとして再始動するのは2015年のことだ。
新たな三部作として『ジュラシック・ワールド』が製作され、よりアトラクション的要素を盛り込んだ内容が今まで以上の人気を博すことになる。
原案は『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』三部作のリック・ジャッファとアマンダ・シルヴァーが練り、ふたりと、『彼女はパートタイムトラベラー』のデレク・コノリー、そして監督に抜擢されたコリン・トレヴォロウが脚色。遺伝子操作によって恐竜がつくられたという根幹だけは変えずに、まったく新たなストーリーを展開していった。
コスタリカ沖のイスラ・ヌブラル島に新たな恐竜テーマパークがつくられたという設定のもと、動物行動学の専門家で恐竜たちの世話をしていたオーウェンと、パークの管理官のクレアのふたりを主人公にして、遺伝子操作による新種の恐竜が脱走したことでパークが阿鼻叫喚の大混乱となるストーリーを構築。トレヴォロウのインパクト主義の疾走する語り口によって世界的なヒットを遂げる。
オーウェン役のクリス・プラットは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のヒットで認知度は高かったが本作でさらに人気を博すことになった。そのことはクレアに扮したブライス・ダラス・ハワードにもいえる。監督のロン・ハワードの娘であり、M・ナイト・シャマランの『ヴィレッジ』の主演を務めたが、近年、それほど輝きがなかった彼女にとってはまさに当たり役だった。
この成功により、当然ながら続編の声は高まり、2018年に『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が製作された。
もはやこの時点で三部作にする構想は生まれていたと思われる。トレヴォロウとコノリーが書いた脚本は、安易に恐竜たちを生み出したことの顛末を浮かび上がらせていく。
監督は新たに「インポッシブル」「怪物はささやく」のJ・A・バヨナが起用され、恐竜たちが取り残された島の火山の大爆発をクライマックスにした物語が進行。ここでもオーウェンとクレアを軸に狂言回しとして、欲のメカニズムに踊らされた人間の愚行が明らかにされる。終わり方をみると、誰もが続きのあることを確信しただろう。
2022年、完結編に当たる本作の登場となった。この時期の製作とあって、コロナ禍の影響は免れず、撮影延期のアクシデントも起ったが、なんとか完成にこぎつけたかたちだ。本作ではトレヴォロウが監督に戻り、『パシフィック・リム:アップライジング』の脚本に参画したエミリー・カーマイケルとともにストーリーを練り込み、恐竜創世記とでも呼びたくなる世界を生み出した。
舞台となるのは、前作で恐竜たちが解き放たれて4年後の世界。さまざまな場所で恐竜たちも生きのびる戦いを行なっている。
恐竜のテーマパークを生み出した大企業インジェンに代わって、ライバルのバイオシン社がイタリアのドロミーティ山脈に恐竜たちの保護区を設けた。
オーウェンとクレアは前作で引き取ることになった少女メイジーとともに暮らしていたが、何者かがメイジーとヴェロキラプトルの子供を連れ去る。
一方、巨大なイナゴが各地で大量発生する。古植物学者のエリー・サトラーはバイオシン社製の種だけが被害を受けないことに着目し、古生物学者のアラン・グラントとともに数学者のイアン・マルコムを頼って、バイオシン社の施設を訪ねる。
オーウェンとクレアは恐竜の闇取引が行なわれているマルタ島に辿り着き、凶暴に改良されたアトロキラプトルと死闘を演じた後、メイジーが連れ去られたバイオシン社の施設に向かった――。
トレヴォロウは、スピルバーグたちが手がけた第一期三部作の主演者、サム・ニール演じるアラン・グラント、ローラ・ダーン演じるエリー・サトラー、ジェフ・ゴールドブラム演じるイアン・マルコムを本作に招き、オーウェンとクレアと出会わせることで、シリーズの完結にした。遺伝子操作で恐竜を生んだ技術はさらに進化し、もはや人間の手に負えないところまで進んでいるのに、欲と名声に駆られた人間は容易く踏み出してしまう。科学技術の進歩がもたらす弊害について、トレヴォロウはエンターテインメントのかたちで警鐘を鳴らしたかったのではないか。
5人が一堂に介するまでに、多少、語り口はもたもたするが、さすがの見せ場の連続で飽きさせない。特撮も十分に練れているし、スケールの大きさも流石である。エンターテインメントとして満足できる仕上がりとなっている。
それにしても、これが成功したら、また三部作ができるのかもしれないな。