『SING/シング:ネクストステージ』は題名そのままに、歌うことの喜びを貫いた大ヒット・アニメーション第2弾!

『SING/シング:ネクストステージ』
3月18日(金)より、TOHOシネマズ日比谷、新宿バルト9、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:東宝東和
© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
公式サイト:http://sing-movie.jp/

『ミニオンズ』や『ペット』などのヒット作で知られるイルミネーション・エンターテインメントは、現在、もっとも注目に値するアニメーションスタジオだ。

 生み出されるキャラクターが可愛いのはもちろんのこと、なによりもアイデア、ギャグが時代の空気に呼応している。決して秀抜なギャグばかりでもない。キャラクターもミニオンをのぞけば、他に例のないほど愛らしいわけでもないが、好感度は高い。ひとえにプレゼンテーションの仕方が上手なのだ。

 2016年に発表された『SING/シング』はその好例といえよう。なにしろ全世界でヒットを重ね、日本でも興行収入51.1億円を記録するほどの人気となった。

 閑古鳥が鳴くほど寂れた劇場を立て直すために、歌唱コンテストを企画した支配人、コアラのバスター・ムーンのもとに、象のミーナ、ハリネズミのアッシュ、ゴリラのジョニー、ブタのロジータなどが結集する展開。人間社会に似た動物世界を舞台にして、歌で人生を変えようと懸命に努力する動物たちを描いている。なにより、歌うことで自分の人生を豊かなものにしたい。自分のアイデンティティを掴みたいと頑張る動物たちの姿は感動的だ。なにより、シンプルに歌うことの魅力を前面に押し出したつくりが好感を覚える。

 キャラクターたちが巷でヒットしている曲の数々をカヴァーする。この構成のもとで声の出演者がなんとも豪華だった。『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー主演男優賞に輝いたマシュー・マコノヒーがバスター・ムーンを演じるのをはじめ、ゴリラのジョニーには『キングスマン』のタロン・エガートン、ブタの専業主婦ロシータには『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』のリース・ウィザースプーンとくる。ヤマアラシのアッシュには『アベンジャーズ』シリーズのスカーレット・ヨハンソン、加えて歌手のトリー・ケリーやジェニファー・ハドソンも参加し、圧巻の歌声と素晴らしいパフォーマンスを披露(日本語の吹き替え版も内村光良、MISIA、長澤まさみなどが参加し、美声を披露してくれた)。

 キラ星のようなスターたちが声の出演をして話題を集め、歌を称えるメッセージと相まって大成功。となれば続編ができるのは自然の理。かくして生まれたのが本作である。

 本作では自分の劇場のショーを成功させたバスター・ムーンがエンターテインメントの本場で成功する夢を叶えるために、レッドショア・シティにあるクリスタル・タワー劇場の出演を画策するストーリーになる。

 バスター・ムーンはミーナ、アッシュ、ロジータ、ジョニー、グンターなどを従えて、ショービジネスのメッカ、クリスタル・タワーに乗り込み、SFミュージカルショーというアイデアと、伝説のロックスター出演を条件に公演の許可を取り付けるが、伝説のロックスターの連絡もままならない。そこからバスター・ムーンと仲間たちの悪戦苦闘が始まる――。

 ストーリーは第1作同様、シンプル。ヒット曲をカヴァーする趣向も変わらない。新たな場所を舞台にしても、登場するキャラクターたちの持ち味、ギャグは存分に発揮される。もちろん、声の出演者も第1作と変わらず、得意の喉を披露してくれる仕掛け。今回はU2のボノが伝説のロックスターに扮していることが最大の話題だ(日本語版はB’zの稲葉浩志に決定。声優初挑戦だ)。

 キャラクターが披露するナンバーも、ショーン・メンデスやアリアナ・グランデ、アリシア・キース、プリンス、エアロスミス、U2、ビリー・アイリッシュなどのヒット曲が用意されている。特筆すべきはU2の2年ぶりの新曲「YOUR SONG SAVED MY LIFE」がラストシーンに流れること。洋楽ファンならずとも感動させられる。

 監督は前作から引き続きガース・ジェニングス。鋭いギャグではないが、みる者が微笑ましく感じるユーモアで作品を包んでいる。楽しい仕上がりである。