『るろうに剣心 最終章 The Final』はダイナミックな殺陣と怒涛のアクションに彩られた痛快時代劇!

『るろうに剣心 最終章 The Final』
4月23日(金)より、TOHOシネマズ日比谷、丸の内ピカデリー、新宿バルト9ほか、全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会
公式サイト:http://rurouni-kenshin.jp

 圧巻のアクションとスピーディな殺陣に彩られた『るろうに剣心』は2012年に登場するや、日本のみならず海外でも大きな反響を呼んだ。旧来の時代劇とは一線を画すダイナミズムと痛快さをとことん推し進めた姿勢が歓迎されたのだ。

 確かに第1作は、和月伸宏の人気コミック「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」の実写映画版だけでは終わらない、映画ならではのパワーがあった。香港映画界で活躍し、近年は『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』の監督も務めた谷垣健治をアクション監督に起用したことが大きかった。ワイヤーワークをはじめ多様な技術を駆使して、ひたすら力感と疾走感に溢れたアクションが映画に焼きつけられた。

 このヒットによって2014年には『るろうに剣心 京都大火編』と『るろうに剣心 伝説の最期編』が立て続けに公開され、いずれもがヒットを記録した。福山雅治や藤原竜也などの豪華な出演者も話題となり、シリーズのさらなる新作が待望された。

 それから5年余の準備期間を経て、本作の登場となる。これまで以上に趣向を凝らし、ストーリーを練り込み、アクションに新味をもたらすこと。シリーズの常として、求められるハードルは高くなる。本作はその要求に見事に応えている。

 題名を見れば作り手の覚悟がみえる。なにせ最終章でThe Finalというのだ。しかも来る6月4日には『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が待機している。ここにきてシリーズの始まりと終わりを描く算段。まさにこの2作でシリーズを完結させようとの意気込みだろう。

 本作の時代設定は明治12年(西暦1879年)、平和な日々が訪れた東京に突如、阿鼻叫喚の砲撃が襲い掛かる。多くの無辜の人々が傷つくなか、緋村剣心はその行為が自分に向けられたことを知り、犯人の名を聞いて愕然とする。

 その敵こそ雪代縁。

志々雄真実に鋼鉄艦を売った中国裏社会を牛耳る武器商人で、剣心に対してたぎる様な恨みを抱く男。武術に秀でながら、策略を行使することも厭わない。これだけの強敵に対して、緋村剣心はいかに立ち向かっていくのか――。

 まさに“人斬り抜刀斎”の異名をとっていた剣心の過去が牙をむいて襲い掛かってくる。かつて多くの生命を殺めてきたことの因縁が剣心だけではなく多くの仲間たちにも降りかかってくる展開だ。なるほど脚本・監督の大友啓史が新たに最終章を設けた意味も頷ける。ここで過去と向き合うことで、剣心が真のヒーローとして成立することを示したかったのだろう。そのために本作ではっきりと結末をつけたわけだ。

 東京の町を火の海にするスペクタクルで緊張感を生み、雪代縁の率いる一団との戦いが壮絶無比に綴られる。もちろん上谷薫(武井咲)、藤田五郎(江口洋介)、相楽左之助(青木崇高)、高荷恵(蒼井優)、四乃森蒼紫(伊勢谷友介)、巻町操(土屋太鳳)といった仲間たちが剣心とともに敵を迎え撃つことになるのだが、敵の強さは半端ではない(もうひとり剣心側に強い味方が現われるが、それは本作を見てのお楽しみだ)。剣心側はぎりぎりの戦いを迫られることになる。

 これだけ豪華な顔ぶれを敵にしながら、雪代縁を演じる新田真剣佑のオーラが凄まじい。アクションが堪能なことは知っていたが、ここまで身体のキレがいいとは思わなかった。ビルドアップされた肉体が跳躍し、激しい殺陣をみごとにこなしている。剣心の仲間たちをあざ笑い、剣心の住む東京を地獄に変える。しかも彼の心の中は共感できる動機に占められているのだから、まさに最強の敵といわねばならない。

 大友啓史の演出は見せ場を出し惜しみせずに、とことん疾走する。次々とケレンに満ちた趣向が用意され、ストーリーを盛り上げていく。制作費は莫大な数字になったというが、ヒットを確信して押し切ったという。膨大なセット、日本全国のロケーションを敢行して、完成にこぎつけた製作陣のふつふつたる思いが、なるほど画面から熱く感じられる。

 詳細はご自身の目でお確かめいただきたい。本作を見ると必ずや『るろうに剣心 最終章 The Beginning』がみたくなる。なるほど日本映画のなかでも傑出したシリーズであることが得心できた。まさに痛快エンターテインメントだ。