『CATS キャッツ』は豪華なキャストが楽しい、大ヒット・ミュージカルの完全映画化!

『CATS キャッツ』
1月24日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、新宿バルト9、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:東宝東和
© 2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.
公式サイト:https://cats-movie.jp/

 

1981年にロンドンで初演されて以来、全世界でステージを重ね、7300万人を超える動員を記録したというミュージカルがついに映像化された。日本でも劇団四季の公演で知られるこのミュージカルは、ミュージカルの巨匠アンドルー・ロイド・ウェバーが、T・S・エリオットの詩集「キャッツ – ポッサムおじさんの猫とつき合う法」に曲をつけて誕生したもので、人間が一切出てこない展開となっている。

猫のキャラクターを人間が演じる趣向はステージでは成立しても、映像ではどうなのか。監督を務めることになった『英国王のスピーチ』や『レ・ミゼラブル』で知られるトム・フーパーはCGで製作する、あるいはCGと実写との融合などの選択肢のなかから、演者が技量を最も披露しやすい、実写で貫くことを決定した。

ロイド・ウェバーと演出家トレヴァー・ナンがつくりあげたステージ台本をもとに、『リトルダンサー』や『ロケットマン』を生み出したリー・ホールがフーパーとともに脚本を執筆。よりストレートに猫たちの一夜の競演を映像に焼きつけた。

なによりの話題は豪華な出演陣だ。自分のヴァラエティショーで人気を博するジェームズ・コーデンに『ヴィクトリア女王 最期の秘密』をはじめ数々の作品を誇る名女優ジュディ・デンチ。さらにシンガーソングライターで俳優、ダンサーでもあるジェイソン・デルーロと、『ダークタワー』などの強面俳優イドリス・エルバ。加えて『ドリームガールズ』のジェニファー・ハドソンや『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの名優イアン・マッケラン、数々のヒット曲を誇るテイラー・スウィフトに『ジョジョ・ラビット』のレベル・ウィルソン。そして本作に抜擢され、魅力を存分に発揮した英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルダンサー、フランチェスカ・ヘイワードまで、個性に富んだ顔ぶれがしのぎを削る。映画、音楽、ダンスと、多彩なジャンルから選び抜かれた実力者揃い。一見、ミュージカルに縁のなさそうな人までもが朗々と歌い、ステップを踏む楽しさ。まさに出演者たちの抜きんでた技量を心ゆくまで堪能できる仕掛けだ。

 

満月の夜、臆病な白猫ヴィクトリアがロンドンの片隅に迷い込んだ。そこには自らの人生を謳歌する個性と行動力を持つ猫たち“ジェリクルキャッツ”がいた。

ぐうたらな猫、ワイルドな猫、勇敢な猫、グルメな猫、邪悪な猫、落ちぶれた猫、そして不思議な力を持つ長老猫。

今宵は新しい生き方が許される猫が選ばれる特別な日でもあった。

ヴィクトリアはさまざまな出会いを通して、自分らしい生き方を見つけ出していく。そして、長老猫の導きで、とある猫が新たな生き方を許された――。

 

猫といいながら、人間的な生々しさのある容姿とコスチュームのギャップが気にならなくなるまで、確かに多少の時間はかかる。アメリカで今ひとつ盛り上がらない理由は、この異世界に馴染めないことだろう。だが、トム・フーパーはいささかの躊躇もなく、素晴らしき歌唱と脱帽したくなるダンスでストーリーを彩っていく。臆病なヴィクトリアが誘う不思議で胸弾む猫の世界。ここに浸れるかどうかで大きく評価は変わることだろう。演者たちの圧倒的なパフォーマンスの連続に違和感は消え去り、画面に釘付けとなる。ここにあるのは奥行きのある楽曲を、それぞれの持ち味で歌う演者たちの素晴らしさだ。

ジュディ・デンチはステージの初演時に出演を予定されていながら叶わなかった経緯がある。本作では長老猫を貫禄十分に演じ、歌唱力をみせつける。またイアン・マッケランも老いた猫のペーソスを軽やかに表現するなど、今さらながらに英国俳優の素養の豊かさを知らしめる。もちろん、ジェイソン・デルーロ、ジェニファー・ハドソン、テイラー・スウィフトといった歌手の存在感に溢れた歌声もグイグイ映像に惹きこむ。デルーロやスウィフトの躍動感に対して、ハドソンは名曲「メモリー」を絶唱。深い感動を与えてくれる。

同様に、ジェームズ・コーデン、レベル・ウィリアムズは個性を活かしてコミカルに歌い上げれば、なんとイドリス・エルバが歌うのだ。

歌だけではない。ヴィクトリアに扮したフランチェスカ・ヘイワードの圧倒的なダンスに魅せられる。エレガントで力強く美しい。ボブ・フォッシーとグウェン・ヴァードンの絆を描いたテレビドラマ「Fosse/Verdon」で話題を集めたアンディ・ブランケンビューラーの振付のもと、表現力豊かにヴィクトリアの成長をみせている。彼女が今後もスクリーンに出ることを期待したい。

 

ミュージカルの醍醐味を満喫できる作品。アメリカ人よりも日本人の琴線に触れる仕上がりだ。一見に値する。