『ルパン三世 THE FIRST』はCGアニメーションで綴る、おとなが楽しい痛快泥棒アクション!

『ルパン三世 THE FIRST』
12月6日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国東宝系にてロードショー
配給:東宝
©モンキー・パンチ/2019映画「ルパン三世」製作委員会
公式サイト:https://lupin-3rd-movie.com/

 

今年、惜しまれつつこの世を去ったモンキー・パンチが生み出した不世出のキャラクター、ルパン三世が3DCGアニメーションで蘇った。

振り返れば1967年、「週刊漫画アクション」誌に連載されたコミックで、コミカルでスタイリッシュなキャラクターを評価されて以来、テレビシリーズ、テレビ・スペシャル・アニメーションや劇場版アニメーションなどに活躍の場を広げ、幅広い世代に認知度が高まった。宮崎駿が手がけた1979年の劇場用アニメーションの名作『ルパン三世 カリオストロの城』の例を挙げるまでもなく、今や日本のコミック、アニメーションを代表する名キャラクターとなっている。

原作者モンキー・パンチは“デジタルマンガ協会”の初代会長に就任するなど、デジタルの導入には前向きなスタンスであり、本作の完成に大きな期待を寄せていたという。完成を待たずに亡くなったのはさぞかし心残りだったろう。

本作の話題は脚本・監督に山崎貴が起用されたことである。山崎監督とCGアニメーションといえば、2014年の『STAND BY ME ドラえもん』や、今年公開された『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』でCGアニメーションの演出を手がけ、実写映画に勝るとも劣らない力量を披露したことも記憶に新しい。

はじまりは『ルパン三世』などの企画・制作を手掛けるトムズ・エンタテインメントと、CG長編アニメーションの企画・制作を業務とするマーザ・アニメーションプラネットが共同でプロット開発を行ない、方向性が見えた時点で山崎監督に打診。少年時代より「ルパン三世」のテレビシリーズや劇場版に入れ込んだ経歴のある山崎監督が脚本も兼ねて参画することになった。

なんと脚本を重ねること12稿。声をつけたストーリーリールを3度つくるなど、とりわけストーリーに注力する方針を採った。その成果は作品にみごとに現れている。

もちろん、声の出演はルパン三世役の栗田貫一、次元大介役の小林清志、石川五ェ門役の浪川大輔、峰不二子役の沢城みゆき、銭形警部役の山寺宏一まで、現時点での「ルパン三世」のオリジナル・キャストが集結。加えて広瀬すず、吉田鋼太郎、藤原竜也といった豪華なメンバーが映像を彩る。

 

かのアルセーヌ・ルパンが盗むことに失敗したといわれ、第2次大戦中にはナチスドイツをその謎を解こうとした伝説の秘宝“ブレッソン・ダイアリー”。そこに記されていることは世界を変貌する力を秘めているといわれていたが、緻密な細工の仕掛けで覆われ、その内容を知ることは叶わなかった。

祖父の失敗を覆そうと、ルパン三世はこの秘宝を狙い、その最中に考古学を愛する娘レティシアと出会う。ルパンとレティシアは協力して秘宝の謎に挑む。だが、レティシアには隠していることがあり、ダイアリーを狙う秘密組織の研究者、組織を操る男の存在があった。

フランス、メキシコ、ブラジルと、めまぐるしく舞台が変わるなか、ルパン三世は危機に陥ると力強い仲間たちに救われつつ、ダイアリーに秘められた真実を明らかにしていく。

ダイアリーに隠された恐るべき力とは何か。ルパン三世は真相に辿り着き、祖父の思いを知ることになる――。

 

まずもって王道の泥棒アクションの醍醐味が堪能できる仕上がりだ。ルパン三世というキャラクターがもつ茶目っ気、軽薄さを存分に活かしながら、伝説の秘宝の謎解きに見る者を惹きつけ、圧巻のクライマックスに誘う。秘宝に隠された謎は、インディアナ・ジョーンズに匹敵するスケールの大きさだ。

山崎監督は実写的な息遣いのなかで、なめらかなストーリーテリングに終始する。多少、説明的なセリフがあるものの、限られた時間内にスケールの大きな秘宝争奪戦を描き切るためには致し方ない。いってみれば1960年代に数多く登場したアクション、例えばジャン=ポール・ベルモンド主演の『リオの男』のような軽やかさで綴っている。

キャラクター造型もコミック、かつてのアニメーションの特徴を緻密に分析し、往年のファンにもまったく違和感を与えない完成度で勝負している。制作にあたったスタッフたちがこだわりぬいてつくりあげた成果。しかも細かな部分で現代風な味付けが成されているのだから大したものだ。

山崎監督の実写映画は近年肩の力が入った作品が多いので、むしろこうしたCGアニメーションの方が監督の個性が活かしやすい気がする。どこまでも爽快、痛快。何も構えることなく、心置きなく楽しむことができる。これまでに構築された「ルパン三世」世界を存分に吟味し、その核となる部分をCGアニメーションという技法でコーティングした印象だ。

おなじみの声の出演者に加え、昔からの「ルパン三世」ファンには音楽の大野雄二の参加も感涙ものだろう。ジャジーで軽快なサウンドが映像の魅力をさらに倍加している。耳でも目でも、往年の気分が蘇り、新たな冒険がさらに思いの深いものとなる。

 

アニメーションとはいえ、むしろおとなが楽しいCGアニメーション。正月にふさわしい作品である。