『ターミネーター ニュー・フェイト』はシリーズ初期の熱さが堪能できるアクション快作!

『ターミネーター ニュー・フェイト』
11月8日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
配給:20世紀フォックス映画
©2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/terminator/

 

思い起こせば、1984年に登場した『ターミネーター』は衝撃的だった(日本公開は1985年5月)。非人間的な容姿のアーノルド・シュワルツェネッガーを未来から来た殺人マシンに仕立てて、ロサンゼルス市街を背景に追いつ追われつのアクションを構築。圧倒的な面白さで世界を席巻してみせた。

この作品で注目されたジェームズ・キャメロンは『エイリアン2』や『アビス』を手がけ、さらに実力を評価された。そこで満を持して続編となる『ターミネーター2』を世に問うた。第1作は低予算をアイデアでカバーしたが、続編では経費をふんだんに使える立場となった。かくして当時最新の特撮を駆使した続編はキャメロンの熱のこもった演出と相まって、SFアクションの金字塔と呼ばれている。

もちろん、続編が大ヒットしたために『ターミネーター』はシリーズ化され、『ターミネーター3』、『ターミネーター4』、そして2015年の『ターミネーター:新起動/ジェニシス』まで、3本が製作され、テレビシリーズも生まれた。もっとも、ジェームズ・キャメロンは『ターミネーター2』以降、キャラクター創造のクレジットに留まり、作品に参画することはなかった。作品を重ねるごとに、シリーズのパワーも徐々に失われてきた感じがあった。

シリーズが再び力を取り戻すためにはジェームズ・キャメロンの参加が不可欠だ。プロデューサーのデヴィッド・エリソンは本作の製作にあたってキャメロンに直訴し、『ターミネーター2』の続編をつくるという条件で協力を取り付けた。キャメロンは製作とストーリーに参画することになり、監督に『デッドプール』のティム・ミラーを選んだ。

ストーリーづくりには、キャメロン、ミラー、エリソンに加えて、『殺人魚フライング・キラー』のチャールズ・イグリー、『宇宙戦争』のジョシュ・フリードマン、『バットマン・ビギンズ』のデヴィッド・S・ゴイヤー、『コントラクト・キラーズ』のジャスティン・ローズなどなど、優れたアイデアの持ち主を一堂に結集させてプロットを展開していった。最終的にゴイヤーとローズ、そして『ジェミニマン』のビリー・レイの3人で脚本にまとめることになった。

かくして誕生した本作はキャメロン色を全編に取り戻した印象だ。逃げる、追うのサスペンスに特化し、とことんダイナミックにアクションを追求。と同時に、未来からの殺人機械にどのように対処するのかというシンプルな設定を護りぬく。

また、キャメロン作品に付きものの、タフなヒロイン像も蘇った。それもジョン・コナーのために戦いぬいたサラ・コナーが画面に再び登場し大暴れする。まさしく字義通りの続編なのだ。

したがって、サラ・コナー役のリンダ・ハミルトン、T‐800役のアーノルド・シュワルツェネッガーがひさびさの競演となる。加えて『ブレードランナー2049』のマッケンジー・デイヴィスが改造された人間のスーパーソルジャーに扮し、テレビシリーズ「エージェント・オブ・シールズ」で注目されたガブリエル・ルナが最新鋭のターミネーターREV‐9を演じる。さらにターミネーターの標的となるダニー・ラモスにはコロンビアでラテンアメリカを代表する存在となったナタリア・レイエスが起用されている。

 

メキシコシティ、自動車工場で働くダニー・ラモスと家族は平和な朝を迎えたが、未来から来たターミネーターREV‐9に襲われる。それを助けたのが同じく未来から来たスーパーソルジャーのグレースだった。だが、REV‐9は執拗に追いかけてくる。

まさに間一髪のところで救いに来たのがサラ・コナーだった。彼女がジョン・コナーを護って未来が変わったはずなのに、新たなターミネーターによってジョンが殺され、暗い未来となってしまった。怒りに燃えたサラはメールで送られてくる情報をもとに、未来から来るターミネーターと戦い続けていた。

ダニーとグレース、サラはメールの発信元であり、グレースの避難先でもあるテキサスのエルパソに向かうべく国境に向かうが、REV‐9はネットに接続し、すべての情報を入手していた。触れた相手の外見に変身できるREV‐9はじわじわと追及の輪を狭めていく。

かろうじて国境を越えた3人がエルパソで対面したのは、思いもよらない相手だった。彼らの生存をかけた戦いはさらに激しさを増すことになる――。

 

サラたちの活躍でスカイネットの未来はなくなったが、人間は同じような過ちを繰り返し、リージョンというAIが支配する世界をつくりだしたという設定。なるほど、これなら制約に縛られずに自由にストーリーを構築できる。キャメロンがAI依存の世界に危惧を抱いていることも分かる。科学万能、テクノロジー無限の発想に、血沸き肉躍るエンターテインメントというかたちで警鐘を鳴らしたいのだ。

アクションが盛り上がるのは、とてつもなく強い仇役の存在あってこそ。キャメロンの発想する『ターミネーター』の面白さは、ひたすら強い殺人機械がどこまでも襲いかかってくるスリルとサスペンスにある。

本作に現れたREV‐9は変幻自在のT-1000の進化形といえばいいか。どんなものにも変身できるばかりか、肉体を二つに分離することもできる。皮膚は液体金属、内骨格は金属炭素で、分離してもそれぞれが敵に立ち向かう。しかも破壊的ダメージを受けても30秒で元に戻るという、殆ど無敵の恐ろしい相手だ。

この敵に立ち向かうのがサラ・コナー、女性スーパーソルジャー、標的のダニーというタフな女性たち。強い女性はキャメロンのヒロイン像の定番だ。彼女たちが強い助っ人を得て、懸命にREV‐9と戦う。詳細を書くのは鑑賞の楽しさを殺ぐので避けるが、アーノルド・シュワルツェネッガーの出演からご想像いただきたい。

ジェームズ・キャメロンと監督のティム・ミラーの間に意見の相違もあったようだが、編集権を握ったキャメロンが自らのイメージにとことん近づけている。冒頭よりアクションのダイナミズムで貫き、グイグイと最後の最後まで見る者を惹きつける。嬉しくなるような仕上がりである。

 

出演者も、サラ・コナー役のリンダ・ハミルトン、アーノルド・シュアルツェネッガーの年輪を重ねた容貌がタフなイメージを倍加させ、スーパーソルジャー役のマッケンジー・デイヴィスの若さと好対照。デイヴィスの躍動感を引き立てつつ、きっちりと見せ場を作るところで、シリーズのファンを喜ばせてくれる。

 

『ターミネーター2』の正当な続編と銘打ったのも納得できる。ここからシリーズが新たに続くのか。ともあれ次作を楽しみに待ちたい。