『ジョン・ウィック:パラベラム』はとにかくアクションで貫く姿勢が潔いヒットシリーズ最新作!

『ジョン・ウィック:パラベラム』
10月4日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
配給:ポニーキャニオン
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公式サイト:http://johnwick.jp/

 

多彩な作品歴を誇るキアヌ・リーブスは、若い頃はどうもイメージの固定化を嫌っていたふしがある。

1994年の『スピード』でアクション・スターとして注目されたのに、あえて続編には出演しなかった。

1999年からはじまった『マトリックス』3部作では主人公のネオ(ト、ーマス・アンダーソン)を快演。カンフーの殺陣やワイヤーワークを駆使したアクションを披露しヒーローとしての輝きを画面に焼きつけたが、固執することなく『サムサッカー』、『地球が静止する日』、『47RONIN』、さらに監督作『ファイティング・タイガー』やドキュメンタリーの『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』まで、興味のおもむくまま、自由気ままに出演作を選択してきた。

あらゆるジャンルで個性を発揮するスキルを持つというのが、キアヌ・リーブスの俳優としての目標でもあるのだろう。私生活では世界中を自由に旅する姿がたびたび話題になるなど、公私にわたって自由さを求めるリーブスの姿勢は好感を持って受け止められている。

 

そんなリーブスが2014年に挑んだアクション・ヒーローが『ジョン・ウィック』である。引退した伝説の殺し屋が、愛犬を殺したロシアン・マフィアに復讐の鉄槌を喰らわすシンプルなストーリーのもと、リーブスが胸のすく活躍をみせる。ガンプレイとカンフーを融合させた“ガン・フー”を披露し、どこまでもシンプルかつスタイリッシュ。あくまでアクションとスタントで押し切ろうとの意図が痛快だった。

脚本は『マキシマム・ブロウ』など、ハードなアクション一筋のデレク・コルスタッドが担当。監督が、『マトリックス』でリーブスのスタント・ダブルを務め、『エクスペンダブルズ』をはじめ、多くの作品でスタント・コーディネーターを引き受けてきたチャド・スタエルスキ。スタエルスキにとって初めての監督作品で、プロデュースにも名を連ねるスタントマンのデヴィッド・リーチがノンクレジットながら共同監督としてサポートしている。このフレッシュな顔ぶれに呼応するかのように、作品も批評もよく、興行的にも善戦した。

となれば続編の話になるのは必定。チャド・スタエルスキが単独監督となり、リーブスも同じ顔ぶれならと了承して、2017年に『ジョン・ウィック:チャプター2』が登場した。ニューヨークからヨーロッパ・イタリアを舞台に、イタリアン・マフィア幹部との戦いを描く。この幹部とかつて交わした血の誓印のために、マフィアの党首の暗殺を引き受ける仕儀になったウィックが、事態を打開するために裏社会が定めたさまざまな禁を破ることになる。

この展開のもと第2弾も第1作以上のヒットを飾り、さらにスケールアップして登場したのが本作である。脚本、監督も同じ陣容。キアヌ・リーブスにとっては『マトリックス』同様、同じキャラクターを3度、演じることになった。

 

前作で裏社会を束ねる組織、共同体・首席連合から粛清の対象となったジョン・ウィックはニューヨークの包囲網を脱し、ロシアンコミュニティのディレクターの手引きによってアフリカ・カサブランカに渡る。そこにはかつて血の誓印を交わしたソフィアがいた。

彼女の伝手で首席連合の酋長に辿り着いたウィックだったが、酋長の出した条件は、裏社会の聖域コンチネンタルホテル・ニューヨークの支配人ウィンストンの暗殺と生涯の忠誠、過去との決別だった。

一方、共同体・連合は最強の暗殺者ゼロ軍団を雇い、ウィックをかばったバワリー・キングとディレクターを血祭りにあげる。

ニューヨークに戻ったウィックはコンチネンタルホテルでウィンストンの暗殺を拒否。ゼロ軍団との戦いにすべてをかける――。

 

映画が始まると、余分な要素は一切なく、ひたすらジョン・ウィックの行動に焦点を定め、一気呵成に走りぬく。

場所が変われども、敵は次々と現れる。ウィックは黙々とどこまでも戦う。難しい理屈はない。敵は倒すだけ。この潔い行動倫理がこのシリーズの魅力だ。

しかも第3弾となると、エキゾチックなアフリカに背景を広げ、アクションも冒険ストーリー的なスタント、趣向を盛り込んでいる。だが、場所は変われども殺陣の凄まじさは変わらない。さまざまな小道具を駆使しながら、徹底したインパクト主義。ひたすらアクションを盛り込んでいく。見る者はキアヌ・リーブス扮するジョン・ウィックの格好の良さ、アクションのキレを堪能できる仕掛けだ。

 

まして本数を重ねるごとに、キャスティングが豪華になっている。本作ではソフィア役に『チョコレート』でアカデミー主演女優賞に輝いたハル・ベリー、ディレクター役に『女と男の名誉』でアカデミー助演女優層を獲得したアンジェリカ・ヒューストンという二大女優が参加したことが最大の話題。ジェームズ・ボンド映画にも出演したハル・ベリーのアクションにも注目である。

アクションの凄味を強調するために『ジェヴォーダンの獣』などで知られるマーク・ダカスコスがゼロ役に起用されているのも注目したい。彼は日本人の血を継ぎ、ヨーロッパのカンフー選手権で優勝したこともある。加えてヤヤン・ルヒアンとセサップ・アリフ・ラフマンというインドネシアのアクションに欠くことのできない武術家俳優も刺客役で出演。半端ない迫力を殺陣にもたらしている。

もはやレギュラーといってもいい、ウィンストン役のイアン・マクシェーン、バワリー・キング役のローレンス・フィッシュバーンも個性全開。彼らのにらみを利かせた演じっぷりには思わずニヤリとさせられる。

 

この幕切れをみると、次作は絶対にありそうだ。アメリカでは興行ランキング初登場第1位を記録している逸品。第4弾を待望したい。