『イコライザー2』はきびきびしたクールなアクションが売りの、大ヒット作品続編!

『イコライザー2』
10月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:http://www.equalizer2.jp/

 1985年から1989年にかけてアメリカで放映されたテレビシリーズ「イコライザー」(日本では「ザ・シークレット・ハンター」という題名で1990年代に紹介された)をもとにした同名映画版は2014年に製作され、大きな注目を集めた。
 2度のアカデミー賞受賞を誇るデンゼル・ワシントンがアクション・ヒーローに挑んだこと、そしてメガフォンを取るのが、ワシントンにアカデミー主演男優賞をもたらした『トレイニング デイ』の監督アントワーン・フークアであったことも話題となった理由だった。
 CIAのトップ・エージェントであった過去を持ち、どんなものでも凶器に変えてわずか19秒で敵を倒す殺人マシンながら、今は孤高を保ち、ひっそりと街に溶け込む男、ロバート・マッコール。彼は無力な庶民をみかねて、自らのスキルの封印を解く。
 いわばテレビシリーズの前日譚の趣のこの作品は成功を収め、4年後に続編が誕生することとなった。デンゼル・ワシントンにとってもアントワーン・フークアにとっても、これまで続編というものに挑んだことがなかった。それだけこの題材が彼らの琴線に触れたのか。続編ではさらなるスケールアップが図られている。脚本は第1作から引き続き『マグニフィセント・セブン』のリチャード・ウェンクが担当。続編ではロバート・マッコールの過去をひもとき、新たなる弱点が設定されている。
 出演はワシントンを囲んで、前作にも顔を出した、『フローズン・リバー』のメリッサ・レオに『インデペンデンス・デイ』のビル・プルマン。加えて『キングスマン:ゴールデン・サークル』のペドロ・パスカル、『ムーンライト』のアシュトン・サンダースが介する。充実した顔ぶれである。

 庶民のトラブルシュータ―の貌を持つロバート・マッコールはトルコ鉄道で娘を誘拐した父親に鉄槌を喰らわし、娘を連れ帰るなど、その行動も広がっているが、普段は運輸ネットワークLyft(タクシーのようなもの)の運転手をしている。
 孤独な老人や出征する父親などを優しく見守る一方で、乱暴された女性を乗せたときには加害者を瞬殺する“仕置き人”に変貌する。淡々と日々を送るマッコールだったが、ふとしたことで十代の少年マイルズと知り合いになる。父もなく兄も殺されたマイルズは悪の道に染まろうとしていた。マッコールはマイルズの画家としての感性を伸ばすように、日常の生活を改めさせる。
 そんな折にマッコールのCIA時代の上司にして唯一、心を許したスーザン・プラマーがベルギーの地で襲撃される。マッコールは単なる物取りの犯罪でないことを確信すると、かつての相棒デイブ・ヨークに協力を求める。
 やがて事件の裏の真相に近づくにつれ、マッコールの安全を脅かす刺客の姿が目立つようになる。さらにはマイルズまでが敵の手に落ちてしまう。
 ことここに至って、真相を掴んだマッコールは犯人との対決を決意する。巨大ハリケーン襲来のなか、熾烈な銃撃戦が幕を開けた――。

 冒頭のイスタンブールに向かうトルコ鉄道内のアクションからみる者の心を掴み、クライマックスの巨大ハリケーン最中の銃撃戦までテンポよく走りぬく。マッコールの静かな日常と、豹変してダイナミックな戦いに身を投じる姿を、アントワーン・フークアはとことんメリハリつけて活写してみせる。ハードボイルドを貫き、ちょっぴりセンチメンタリズムを添えて、ヒロイズムを浮き彫りにするあたりは達者なものだ。
 フークワの圧倒的なアクション演出を軸に、アメリカ庶民の多様な貌をドキュメンタルに浮かび上がらせる映像が随所に織り込まれる。これが、ワシントンが続編に参加した大きな理由なのだろう。
 とりわけ本作ではマッコールとマイルズの父・息子的絆が作品の魅力をさらに深めている。マッコールがマイルズに読むように勧める本「世界と僕のあいだに」(タナハシ・コーツ著)は実生活でデンゼル・ワシントンが愛読していた本だというが、アメリカ社会にあってアフリカ系アメリカ人であることについて手紙形式で記した2015年のベストセラー歴史書。アフリカ系男性が遭遇する危険と希望を綴った内容が、マイルズの未来に期待するマッコールの思いを代弁しているわけだ。余談ながら、タナハシ・コーツはコミック版「ブラックパンサー」の脚本も書いたそうな。本作でも、この本をさりげなく紹介することでアメリカのアフリカ系の人々の状況をリアルに浮かび上がらせることとなった。

 もちろん、最大の魅力はデンゼル・ワシントンの存在である。控えめで誠実にふるまっているが、いったん牙をむくと阿修羅のごとく。勤勉で節度をもった闇のヒーローというのも新鮮だし、演技力に定評のあるワシントンの凄味がキャラクターに横溢している。このヒーローは今後も続けてほしいものだ。
 またマイルズに扮したアシュトン・サンダースがみごとな存在感をみせている。『ムーンライト』の少年時代の主人公役も印象的だったが、ここでは少し成長したアフリカ系アメリカ人の置かれた状況を体現している。哀し気な表情がキャラクターにマッチしている。

 痛快無比なアクション・エンターテインメントであることは折り紙付き。シリーズ継続を切に祈る次第だ。