『私たちが光と想うすべて』はインド映画の多様性に目を開かされる、優しさに満ちた姉妹の物語。

『私たちが光と想うすべて』
7月25日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開
配給:セテラ・インターナショナル
© PETIT CHAOS – CHALK & CHEESE FILMS – BALDR FILM – LES FILMS FAUVES – ARTE FRANCE CINÉMA – 2024
公式サイト:watahika.com

 近年はインド映画のエンターテイメント性がたびたび話題に上る。アクション、スタントはもちろん、分かりやすいストーリーに、唄も踊りもふんだん。おまけにSFXを駆使するし、人海戦術はお手のもの。最近はSF、社会風刺も盛り込むに及んで、さらなるバラエティの広さをアピールしている。

 世界的にもインド映画は注目されていると同時に、新しい才能にも目が向けられ始めた。本作の監督パヤル・カパーリヤーはとりわけ注目を集める存在である。

 1986年にインド・ムンバイで生を受けた彼女は、インド映画テレビ研究所で映画の演出を学んだという。短編作品で腕を磨き、2021年にドキュメンタリー、『何も知らない夜』を発表。この作品はカンヌ国際映画祭監督週間でゴールデンアイ賞を受賞。2023年の山形国際ドキュメンタリー映画祭では大賞であるロバート&フランシス・フラハティ賞を受賞したのだ。

 最初の長編作品で高い評価を受けた彼女はその勢いのまま本作を発表。第77回カンヌ国際映画祭においてグランプリに輝いた。ドキュメンタリーではなく、劇映画の分野でも豊かな才能を披露したのだ。この目覚ましい受賞はインド映画界にとっても久々の快挙だった。彼女は一躍、世界中から次代を担う映画監督として記憶されることになった。

 本作でパヤル・カパーリヤーが描くのは、現代の都会で生きる女性の姿だ。舞台はムンバイ。南インドのケーララ州出身の看護師ふたりの日々を細やかに描き、現代インド女性の直面している問題を散りばめる。脚本も担当している彼女は大都会ムンバイで生きる女性たちの日常を細やかに綴る。未だ制約の多いインド社会のなかで、誠実に生きる女性たちがくっきりと映像に焼き付けられている。

 出演はカニ・クスルティとディヴィヤ・プラバ。共演にチャヤ・カダム。いずれも日本ではなじみが薄いが、監督の意を汲んで心に残るパフォーマンスを披露している。

 インドのムンバイで看護師として働くプラバと、年下の同僚のアヌはルームメイト。職場と自宅を往復するだけの生真面目なプラバと、楽しみ優先のアヌ。ふたりの間には距離があった。

 プラバは親が決めた相手と結婚し、ドイツに夫がいるが音沙汰がない。アヌには密かに付き合うイスラム教徒の恋人がいるが、親に知られたら、反対されることは明らかだった。

 やがて病院の食堂に勤めるパルヴァティが、高層ビル建築のために立ち退きを迫られ、故郷の村へ帰ることになる。

 ひとりで生きていくというパルヴァティを村まで見送る旅に出る。

 超自然的な森や洞窟のある別世界のような村で、ふたりはそれぞれの生き方を変える決意をするような出来事に遭遇した──。

 懸命に生きていてもままならない日常。それでもふたりは少しずつ絆を育んでいく。決して声高なものではないが、互いに認め合う関係が瑞々しく描かれていく。現代であっても女性にとっては制約の多い社会で、それでも健気に前向きに生きる女性たちが好もしい。パヤル・カパーリヤーは誠実にインドの現実を映像に焼き付けながら女性を称えている。

 題名の示すように、さまざまな光がスクリーンに映し出される。繫華街のネオンやスマートフォンのライト、そして陽光、海の水面までが印象的に使われ、ふたりの人生に彩を与える。この監督のセンスは際立っている。まこと只者ではない。ご一見をお勧めする所以である。