『プロジェクト・へイル・メアリー』はひさびさのSFの醍醐味に浸れる、大画面向きの逸品!

『プロジェクト・へイル・メアリー』
3月20日(金・祝)より、TOHOシネマズ日比谷、丸の内ピカデリー、109シネマズプレミアム新宿、グランドシネマサンシャイン池袋ほか、全国の映画館で公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:https://projecthm.movie/

 果てしない宇宙を大画面で堪能するのはSF映画の醍醐味の一つだ。かつてテアトル東京のシネラマ画面に『2001年宇宙の旅』を堪能した記憶が蘇ってくる。無限にきらめく星の間を飛翔する宇宙船の姿は、これだけSF映画がつくられるようになっても、見る者の心を惹きつける魅力に溢れている。

 本作はとりわけ宇宙の広大さを知らしめている点で、特筆に値する。できるだけIMAXスクリーンのような大画面で鑑賞することをお勧めしたい。筆者はグランドシネマサンシャイン池袋のIMAX画面で体験した。

 2021年に絶大な人気を集め、ベストセラーとなったアンディ・ウィアーの同名小説をもとに映画化された本作は、なにより主演を務めたライアン・ゴズリングが熱狂的に支持したことが原動力となったという。ゴズリングはコロナのパンデミックの頃に原稿段階で読み上げ、ただちに『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』などで知られるプロデューサ―、エイミー・パスカルを巻き込み、自ら主演と製作を担って、映画化の核となった。

 さらに脚色には『オデッセイ』で原作者の世界を手がけたことのあるドリュー・ゴダード。『ワールド・ウォー Z』でもスケールの大きな世界を脚本化したことのある彼は、原作の壮大さ、SFのさまざまな要素を併せ持った原作の味わいを軽快に浮かび上がらせている。

 この脚本を手にみごとな演出を披露するのがフィル・ロードとクリストファー・ミラーのコンビだ。ふたりは2009年のアニメーションの『くもりときどきミートボール』で長編デビューを果たし、2012年には実写の『21ジャンプストリート』でヒットを飛ばす。加えて『LEGOⓇムービー』、『スパイダーマン:スパイダーバース』などが高く評価され、アメリカ映画界期待の存在と目されていた。ふたりに白羽の矢を立てたエイミー・パスカルの眼力の確かさに驚きを隠せない。

 たったひとりでグレースは目覚めた。AIに促され、ほかの乗組員は死亡したことが告げられる。

 次第に記憶が蘇ってくると、グレースは全人類の唯一の希望であることが分かってくる。

 太陽のエネルギーが奪われている。この現象は太陽だけではなく、無数の恒星に及んでいたが、唯一無事な恒星があった。グレースの目的はその恒星のエネルギーが無事な理由を解き明かすことだった。

 徒手空拳に近い準備だったが、滅亡を待つわけにはいかない。グレースの宇宙船がその恒星に向かうと思いもよらぬ事態が待ち受けていた。

 この広大な宇宙のなかで危機に立ち向かおうとするのは彼だけではなかった。この危機にどのように対処すればいいのだろうか――。

 古今東西のSF作品の素晴らしい部分を巧みに抽出して映像化したといいたくなる。冒頭から宇宙空間の壮大なスケールをとことん知らしめて、グレースの孤独感を極めつつ。いかにして宇宙飛行をする羽目になったかが軽妙に綴られる。フィル・ロードとクリストファー・ミラーの平易な語り口に加えて、グレース役のライアン・ゴズリングのひょうひょうとした演技が際立つ。ユーモアと切なさ、孤独感をそこかしこに散りばめながら、初めての宇宙旅行のおののき、冒険をみごとに表現。見る者のハートをわしづかみにしてくれる。

 これまでの出演作のなかでもキャラクターに対する入れ込み方は半端ではない。ゴズリングの演技はさらに脂がのっているよう。映画の3分の1ほどから、孤独ではないことが分かる仕掛けだが、どんな相手でもゴズリングが感情の機微を盛り上げるあたりはなんともうまい。脱帽ものだ。

 たったひとりだけで収束しそうだが、回想シーンに『落下の解剖学』や『関心領域』で絶賛されたザンドラ・ヒュラーが登場。ゴズリングの演技に呼応するかのような存在感を披露している。

シンプルな構成なのに、2時間37分、いささかも飽きることはない。『未知との遭遇』やら『E.T.』やら、『インターステラー』やら、さまざまな記憶が蘇ってくる。

これは必見だが、IMAXなどの大画面でぜひご覧あれ。