『スノー・ロワイヤル』はオフビートな面白さが売りのリーアム・ニーソン主演復讐アクション!

『スノー・ロワイヤル』
6月7日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
配給:KADOKAWA
©2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:https://snowroyale.jp/

 リーアム・ニーソンはリュック・ベッソンが仕掛けた『96時間』シリーズのヒットで、すっかりアクション俳優のイメージが確立してしまった。かつて『シンドラーのリスト』などで演技派俳優として注目された彼がみごとな変貌ぶりだ。
 当たった役どころはズバリ“戦う父さん”。子供のためにかつて磨いたスキルを縦横に発揮するキャラクターにふさわしい、ニーソンの大柄な容姿が奏功した。決して動作が俊敏とはいえないが、このシリーズ以降も多彩なアクションをこなして、さらに戦うイメージを定着させていった。
 本作も彼の“戦う父さん”イメージを存分に引き出したアクションながら、実はリメイクという点で異彩を放つ。
 本作は2014年に製作されたノルウェー、スウェーデン、デンマークの合作『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』のリメイクなのだ。息子を殺された父親がギャング相手に敢然と復讐に走るストーリー。重い設定ながら状況が拡大していき、収拾のつかない混乱に至る。ユーモアが漂う、ユニークな仕上がりだった。この演出を評価されたノルウェー人監督ハンス・ペテル・モランドがアメリカに招かれ、自身でセルフ・リメイクした一篇である。
 オリジナルの脚本はデンマーク出身で『パーフェクト・センス』で知られるキム・フップス・オーカソンが手がけた。リメイクにあたってはフランク・ボールドウィンがオリジナルのテイストを活かしながら、アメリカに舞台を接しても違和感のない設定に変更。ハンス・ペテル・モランドが存分に腕が振るえるようにサポートした。
 オリジナルの“戦う父さん”はスウェーデンの名優ステラン・スカルスガルドが演じたが、リーアム・ニーソンも負けず劣らず。普通の男のとんでもないキレっぷりを披露してみせる。市の模範市民賞に選ばれるほどの生真面目な男のタガが外れると、どこまでエスカレートするかがひねったユーモアとともに紡がれる。どこまでも拡大する波紋の輪のごとく、ひとつの事件から殺しがどんどんエスカレートしていく。
 リアルなのにどこかシュールさを感じさせる演出はクエンティン・タランティーノ作品やコーエン兄弟の『ファーゴ』を引き合いに出す人もいるほどだ。
 リーアム・ニーソンを盛り立てる共演陣も個性派揃い。『オリエント急行殺人事件』(2017年版)のトム・ベイトマンをはじめ、『ジュラシック・パーク』のローラ・ダーン、『オペラ座の怪人』のエイミー・ロッサム。さらに『スキンウォーカーズ エクリプス』(劇場未公開)のトム・ジャクソン、『ウインド・リバー』のジュリア・ジョーンズなど充実したキャスティングが組まれている。

 真面目に除雪作業員のネルズ・コックスマンの息子が何者かに殺された。警察は麻薬がらみのトラブルとして片づけるべく、ろくに捜査をしない。
 息子が麻薬をやるはずがない。怒りに燃えたコックスマンは独自に調べ上げ、麻薬王バイキングの組織が殺人に関係していることを知る。彼には戦闘経験はなかったが、狩猟の射撃に長じていた。バイキングの組織を皆殺しにする決意を固めたコックスマンはひとりひとりと殺しては、除雪作業員のみが知る廃棄場所に死体を投げ入れていた。
 バイキングは部下が次々と消えたのは、競合する先住民ホワイトブルの麻薬組織の仕業と勘違いし、麻薬組織同士の抗争にエスカレートしていく。コックスマンは警護の堅いバイキングに業を煮やし、暗殺者を雇うが、暗殺者はバイキングに密告。事態は収拾のつかない混乱状態に陥る――。

 これまでのリーソン作品のような単純な復讐劇ではもちろんない。コックスマンの仇討ちを勘違いしてふたつの麻薬組織が戦い、このくだりで警察が介入するものの事態はますます混乱する展開。登場人物たちのほとんどは真面目ながら、滑稽さを禁じ得ない行動の結果、死に至る。つまりはシンプルなヒーロー大活躍ストーリーではなくて、彼の行動に右往左往する間抜けなキャラクターたちの個性を楽しむ映画といえばいいか。
 監督のハンス・ペテル・モランドは手慣れたストーリーを得て、よりアメリカ映画的なエッジの利かせ方で勝負。ドミノ倒しのような展開にメリハリをつけ、格調のあるストーリーテリングを披露する。ベタなギャグに陥ることなく、知的なくすぐりでニヤリとさせる戦略だ。
 それにしても主人公のコックスマンを筆頭に、バイキングやホワイトブル、コックスマンとバイキングの妻たち、子分、警官に至るまで、どことなくオフビートで視点を変えれば間抜けという、秀抜なキャラクターばかり。アメリカ映画に臆することなく、北欧風ユーモア・テイストを貫いたハンス・ペテル・モランドに拍手を送りたくなる。

 出演者はコックスマンのリーアム・ニーソンも楽しんで演じている風情。模範的市民がいかに怒涛のキレ方をみせるかをインパクト十分に演じている。バイキング役のトム・ベイトマンは、テンションは高いがどこか気弱な面もあるキャラクターを怪演。その他のキャラクターもどこか可笑しさの漂う存在ばかりとあって、出演者はそれぞれに入れ込んだ成り切り方を披露している。

 それほど高い注目を浴びないかもしれないが、ニヤリとさせる仕上がり。クエンティン・タランティーノ的世界をお好きならお勧めできる。