『亜人』はアクション主導、スリリングな展開が話題の人気コミック実写映画化!

『亜人』
9月30日(土)より全国東宝系にてロードショー
配給:東宝
©2017映画「亜人」製作委員会 ©桜井画門/講談社
公式サイト:http://ajin-movie.com/

 

近年、人気コミックを実写映画化する傾向は加速するばかり。少女コミックから青年コミックまで、目ぼしい作品は次々と製作され、スクリーンを飾っている。さすがに今では、作品が増えすぎてすべてが大ヒットする状況ではなくなってきた。いかに原作のコミックが視覚的とはいえど、実写化するには映画ならではのアイデアが求められる。単純に原作世界をなぞるだけでは“動く映像”にする意味がない。

ふりかえれば、大ヒットしたコミックの映像化作品はいずれも“動く”ことで原作世界の魅力が倍加されていた。とりわけアクションや殺陣が求められる作品では、いかにダイナミックな趣向が盛り込まれるかがカギになる。たとえば佐藤健が主演を務めた『るろうに剣心』3部作は、ダイナミックなアクションに彩られ、最も成功した例といえるだろう。

『バクマン。』や『カノジョは嘘を愛しすぎてる』などコミックの映像化作品に挑むことが少なくない佐藤は、キャラクターが実写として成立するリアリティに重きを置いて演じるとコメントしている。

人気コミックの映像化である本作もまた佐藤健がキャラクターの魅力を存分に映像に焼きつけている。

原作の『亜人』は桜井画門が2012年から連載をはじめた人気コミックで、これまでに劇場用アニメーション3部作、テレビアニメーションが製作されている。亜人とは人と同じ容姿でありながら死なない新人類のことだ。絶命、蘇生、完全復活を繰り返し、ある特殊な能力IBMを有している亜人は、当然、正体が発覚すると、人類によって隔離・管理され、異常な忌み嫌われる存在として扱われる。

この設定のもとで、交通事故が原因となって亜人であることが知られてしまった研修医、永井圭を主人公に、亜人対人間、亜人対亜人の壮烈なストーリーが繰り広げられる。脚本は劇場用アニメーション3部作、テレビシリーズのシリーズ構成を務めた瀬古浩司と『ハルチカ』の山浦雅大が担当。アクション主導のスリリングな展開を用意すれば、『踊る大捜査線』シリーズを手がけたヒットメーカー、本広克行が問答無用、疾走する語り口を貫く。『るろうに剣心』全3部作のアクション監督を務めた大内貴仁がここでも圧巻の殺陣、スタントを披露して、ハードで息を呑むようにスリリングなアクションの連続。スタイリッシュで予断を許さない展開の作品に仕上がった。

出演は、佐藤健に続いて『新宿スワン』の綾野剛が仇役となって佐藤と身体能力を競い合う。さらにNHKテレビ小説「マッサン」の主演で全国区の人気となった玉山鉄二、『ROOKIES‐卒業‐』の城田優、『帝一の國』の千葉雄大。『デスノート Light up the NEW world』の川栄李奈、『君の膵臓がたべたい』の浜辺美波などなど、新鮮な顔ぶれが選りすぐられている。

 

研修医の永井圭は交通事故によって亜人であることが発覚。厚生労働省亜人管理委員会に捕らえられて、非人道的な実験のモルモットにされていた。死なないことが分かっているのでどんなに残酷な手術や怪我を負わせることも許されていた。亜人は翌日には蘇生するからだ。

筆舌に尽くしがたい痛みに耐えるだけの毎日を送っている永井圭の前に、最凶のテロリスト佐藤が現われる。亜人として幼い頃から人間の実験台にされてきた佐藤は人類に対して恨みしかない。永井圭の囚われていた収容所を襲撃し、永井圭に仲間に入るように声をかけてきた。

テロリストになるのを潔しとしない永井圭は佐藤と別に収容所を脱走。たったひとりの妹・慧理子とともに田舎に潜伏する。

佐藤は日本政府に対して宣戦を布告。闇に隠れている亜人たちに呼びかけ、亜人にしかできない方法で飛行機をビルに追突させ、人類をパニックに陥れる。

田舎でも亜人狩りの動きが起きてきた。永井圭は厚生労働省亜人管理委員会のトップ、戸崎優に交渉を申し出る。佐藤と戦う代わりに、永井圭の自由を保障すること。かくして永井圭と佐藤の知力、体力、闘争力をかけた戦いの幕が切って落とされた――。

 

冒頭に亜人に対する残酷な人体実験がかなり長く描写される。死なないと分かっているから、とことん非道な仕打ちも平然と行う。人類の残酷さをみる者にじっくり知らしめた上で、亜人の能力の行使に繋がっていく展開。異種排除的な扱いを受ける亜人に対して共感が生まれたところで、一気呵成、壮烈なアクション世界に突入していく。

死んだ瞬間に蘇生する相手、死なない相手にどのような攻撃が有効なのか。大内貴仁の考案したアクションは、リアルさとスピードで相手を圧倒する作戦だ。『マトリックス』を想起するようなスタイリッシュな感覚と斬新な殺陣のもとで、これまで映像化されなかったようなユニークな戦いが繰り広げられる。演じる佐藤健、綾野剛の秀でた身体能力を駆使して、アクション、アクションの重ね織り。本広監督も無駄な部分を排し、とことんダイナミックな演出で最後の最後まで全速で走りきる。ひさかたぶりに本広監督の演出力を実感できる。

さらに肉体同士の戦いに加えて、亜人にはIBMという特殊能力が設定されている。IBMとはインビジブル・ブラック・マターの略で、黒い粒子状のアバターを放出して戦わせることができる能力をいう。IBMの姿は亜人にしか見えないところがミソで、クライマックスのバトルシーンでは圧巻の活躍をみせてくれる。

 

なんといっても魅力は佐藤健の抜群のアクションセンスにある。アクションになると肉体が躍動し、流れるような動きを見せてくれる。『るろうに剣心』でも感心したのだが、彼のセンスは日本では貴重だ。対する佐藤役の綾野剛も丁々発止と受けて立つ。ふたりのクライマックスのアクションは見応え十分である。

 

アクション映画の醍醐味を満喫させてくれる仕上がり。最近のコミックの映画化作品のなかでは注目に値する。