『ゴーストバスターズ』は1984年の大ヒット作をリブートした、女性主導の痛快ホラー・コメディ!

『ゴーストバスターズ』
8月19日(金)より、全国3D/2Dロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:http://www.ghostbusters.jp/

 

 ふりかえってみれば、1980年代のアメリカ映画界は数多くの人気コメディアンが輩出し、彼らの個性を掬いとる映画監督が活躍した時代だった。

 ひとつにはシカゴとトロントに拠点をもつ即興コメディ劇団“セカンド・シティ”に逸材が集まり、1975年にNBCでコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」が始まったことが大きい。現在も続くこの番組に集められた顔ぶれが、ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、チェビー・チェイス、ジョン・ベルーシを創成期メンバーに、以後、エディ・マーフィ、ロバート・ダウニー・Jr.、マイク・マイヤーズ、ウィル・フェレル、ティナ・フェイなどなど、活きのいい才能ばかり。映画界が黙っているはずもなく、彼らを迎え入れ、ここにコメディ映画大きな勢いを持つようになった。彼らの持ち味を十分に引き出した監督が『アニマル・ハウス』や『ブルース・ブラザース』のジョン・ランディスであり、1984年版『ゴーストバスターズ』を手がけたアイヴァン・ライトマンだった。

 1984年版『ゴーストバスターズ』は、〝セカンド・シティ“出身のハロルド・ライミスとエイクロイドが脚本を書き、マーレイ、エイクロイド、ライミスの3人に加えて、アフリカ系男優のアーニー・ハドソン、“セカンド・シティ”出身のリック・モラニス、さらには『エイリアン』のシガーニー・ウィーヴァ―まで加わる豪華版で、なによりも特撮満載のスペクタクルでありながら、細かいギャグとくすぐりが随所に散りばめられたコメディとしての仕上がりが評価された。ライトマンは地位を不動のものにして、以後『ツインズ』や『デーヴ』などのヒット作を生むことになる。

 幽霊を科学で退治するというアイデアはライトマンにとって捨てがたく、1989年に『ゴーストバスターズ2』を送り出すが、第1作ほどのインパクトはなかった。シリーズ化という声も立ち消えになったが、ライトマンは諦めていなかったという。メインキャストが同意すれば製作するつもりだったというが、ライミスが2014年に病死したことで叶わぬ企画となってしまった。

 この企画に新たな趣向で名乗りを上げたのが『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』などで知られる監督、ポール・フェイグ。オリジナルをこよなく愛していた彼は、主要キャラクターを女性にするというアイデアを持ち込み、ライトマンをプロデューサー、エイクロイドを製作総指揮に据えることで実現にこぎつけた。

 フェイグは脚本に『デンジャラス・バディ』のケイティ・ディポルドを起用し、女性主導のストーリーに仕上げるとともに、それぞれのキャラクターに対してもオリジナルにこだわらない自由な発想で設定していった。また、あえて幽霊退治の武器にローテクな玩具っぽい形状にするなど、オリジナルに対するオマージュも忘れていない。

 出演は、テレビシリーズ「ギルモア・ガールズ」で人気を博し、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』ではアカデミー助演女優賞にノミネートされたメリッサ・マッカーシーに、「サタデー・ナイト・ライブ」出身者で『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』や『オデッセイ』など多彩なジャンルで活躍するクリステン・ウィグ。さらに現在も「サタデー・ナイト・ライブ」のメインキャストで『テッド2』にも顔を出したケイト・マッキノン、同じく「サタデー・ナイト・ライブ」で活躍中のレスリー・ジョーンズがメイン・キャラクターに挑んでいる。

 加えて『マイティ・ソー』でタイトルロールを演じたクリス・ヘムズワースがおバカな秘書を熱演すれば、マーレイ、エイクロイド、ハドソン、ウィーヴァーなど、オリジナルゆかりの俳優にロックシンガーのオジー・オズボーンまで顔を出す。まさに豪華なキャスティングである。

 

 コロンビア大学で教鞭をとる物理学者エリン・ギルバートには、旧友のアビー・イェーツと共同で幽霊本を発表した過去があった。そのためにオルドリッジ家の幽霊騒動の調査依頼が舞い込む。物理学者として大学の終身在職権を審査されている現在、怪しげな過去を払拭したいエリンは、ヒギンズ科学大学にいるアビーに幽霊本販売をやめるように談判に行く。だが、かえって丸め込まれ、アビーの相棒のジリアン・ホルツマンとオルドリッジ家に赴く破目になる。

 オルドリッジ家に確かに幽霊はいた。ビデオカメラにその姿を撮影した3人だが、映像がネットで評判になったために、エリンは大学をクビになり、アビーとジリアンも研究室を追い出される。

 幽霊をこの目で見た3人は中華料理屋の2階に幽霊退治専門会社“ゴーストバスターズ”を設立。頭はボンクラだが容姿のいいケヴィンを秘書に雇い、ニューヨークの街を知り尽くす最初の依頼人パティを仲間に入れて本格的に船出する。

 ジリアンが開発したゴースト捕獲装置を駆使して、オジー・オズボーン主催のロック・フェスティヴァルに出現したゴーストを捕獲したことで、4人は一躍、有名になる。だがニューヨーク市はパニックになることを恐れ、あえてインチキだと発表する。

 それにしても幽霊の出現が多すぎる。この一連の騒動は裏でローワンという男が糸を引いていた。彼は間違いだらけのこの世界を、幽霊たちを結集させた天変地異で浄化しようと考えていた。“ゴーストバスターズ”は人類の未来を担い、ファイナルバトルに挑む――。

 

 フェイグは理屈抜き、ひたすらインパクト主義の演出を貫く。幽霊たちとのバトル、クライマックスのスペクタクルはグイグイと迫力で押し切り、4人の会話、ドラマ部分では俳優たちの個性を活かした軽快な演出で勝負している。リブートするプレッシャーをものともせず、フェイグは女性の本音ギャグを前面に、笑いと痛快さをきっちり映像に焼きつけてみせた。楽しければ、何でもありの姿勢である。

 オマージュを捧げるべく、オリジナル作品のギャグを存分に再現しているのに加えて、『ゴースト ニューヨークの幻』から『エクソシスト』、『ターミネーター2』など、名作のパロディもふんだんに織り込んでみせる。オリジナルで人気だったスライマーやマシュマロマンがさりげなく登場するのも楽しいし、オリジナル・メンバーもちょっとした役柄で顔を出すのもおかしい。

 音楽面でも洒落っ気はたっぷりだ。オリジナル作品で評判になったレイ・パーカー・Jr.の主題歌を巧みに取り込んで、同曲をウォーク・ザ・ムーン、ペンタトニックス、フォール・アウト・ボーイfeat.ミッシー・エリオットがさまざまなスタイルで演奏しているのも楽しい。

 

 出演者はいずれも魅力に満ちている。マッカーシーがタフでめげないアビーを迫力たっぷりに体現し、ウィグは女性としての本音を隠そうとしてさらけだすエリンを好演。しかも、クレイジーな発明狂のジリアン役のマッキノン、パティ役のジョーンズと、それぞれ個性が異なっているのが成功。4人4様のコメディエンヌぶりを発揮している。

 おまけに楽しいのがヘムズワースのおバカぶりだ。他作品のヒーローぶりをかなぐりすてて、フェロモン炸裂のダンスまでみせてくれる。

 

 女優たちの頑張りと特撮の迫力で、楽しめる作品。オリジナルと見比べるのも一興である。