日本では知られていないドキュメンタリー(1)

Pink Ribbons, Inc.

2011年・カナダ作品・97分 監督:レア・プール(Léa Pool)  

   日本でも『愛の瞬間(とき)』や『翼をください』、『天国の青い蝶』などが劇場公開されているカナダの女流監督、レア・プールが手がけたドキュメンタリー。2006年に刊行された「Pink Ribbons, Inc: Breast Cancer and the Politics of Philanthropy」に触発された作品で、乳がんの啓蒙キャンペーンとなっているピンク・リボン運動を題材にしている。
 乳がんにかかった女性たちを励まし、その存在を広く知らしめるために生まれた運動が、エイボンやエスティローダ、ケンタッキーフライドチキン、フォードをはじめとする大企業が積極的に参画したために製品の営業活動と化していること、そうした企業の多くが一方で発がん性物質を扱っている事実を浮かび上がらせる。 世界的な規模の広がりをみせた運動に参加している女性たちの善意を紡ぎながら、その運動が乳がんに苦しむ女性たちを傷つけていることを彼女たちの証言によって明らかにしている。
 アニメーションやCFを織り込みながら、レア・プールにしてはストレートに怒りが伝わってくるつくりだ。 2011年のトロント国際映画祭で上映されて存在を知らしめたが、日本で劇場公開される予定は聞こえてこない。既にテレビ局が購入したという噂もある。期待して待ちたい。